パパとおじいちゃんとの秘密の話? (1)
「……私……どうしちゃったの?」
ママの柔らかい手の感覚に立っていられずその場に座り込む。
これが『柔らかい』……
久し振りの感覚……
ダメだ……
目を閉じて心を落ち着かせないと……
「真葵? 大丈夫?」
パパが私を呼んでいる声が聞こえる……
「パパ……私……ダメかも……暴走しちゃうかも……」
「……え?」
パパの声から動揺が伝わってくる。
「あぁ……真葵……大丈夫よ。突然ママが現れて驚いたのね。これからは毎日会えるわ」
ママの優しい声がさらに心をざわつかせる。
ダメ……
落ち着いて……
このまま暴走したらママが……
赤ちゃんも巻き込んじゃう……
「葵……ごめん。真葵を落ち着かせてくるよ」
パパが私を抱き上げた?
ずっと育ててくれたパパ……
この匂い……
目を閉じていてもパパだと分かる。
「狩野!? 真葵を落ち着かせる!? どこに連れていくつもりだ!?」
叔父さんの怒っている声が聞こえる。
「カズちゃん。大丈夫よ」
ママの声……
『カズちゃん』?
小田 一真の『カズ』?
叔父さんの事?
「葵! 狩野を信用し過ぎたらダメだ!」
「大丈夫よ。落ち着いて。興奮したらダメ……」
「葵……狩野は真葵の偽者を……」
「大丈夫。カズちゃん……全て話すから……落ち着いて? 竜ちゃん、真葵をお願い」
竜ちゃん?
駿河 竜真……
パパの名前だよね?
「真葵……バーに行くよ。ここだと心が落ち着かないよね」
パパの声から焦る気持ちが漏れている。
「おじいちゃんも一緒に行くよ。大丈夫。真葵ちゃんは絶対に暴走しない。大丈夫だよ。そうだ。頑張っている真葵ちゃんに、おじいちゃんからもご褒美をあげようね」
私を抱いて走っているパパの隣からおじいちゃんの声が聞こえる。
……ご褒美?
今はそんな事は……
「そうだなぁ……かわいいお人形はどうかな?」
……お人形?
「ケチな一真が買ってくれなかった日本人形はどうかな?」
……日本人形?
「おじいちゃんの人形はすごいんだよ。生きているみたいに動くんだ」
生きているみたいに?
「少し落ち着いたかな? 大丈夫だよ。おじいちゃんは強いんだ。かわいい真葵ちゃんが暴れたって止められる力があるんだよ?」
「……本当?」
カランコロン
あ……
狩野さんのバーの扉を開ける音……
「もちろん。ほら、目を開けてごらん」
「……嫌だよ。暴走しそうなの……」
「大丈夫。ほら、目を開けてごらん。かわいいお友達がいるよ?」
「……かわいいお友達?」
「大丈夫……ほら、誰かがかわいい真葵ちゃんの手を握っているよ?」
「……冷たくて……これは……『硬い』……?」
「冷たくて硬い……確かにそうだね」
「誰が私の手を握っているの?」
「目を開けてごらん」
少しだけ目を開けると真っ白い手が見える。




