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真葵を守る為に(7)

今回は真葵の実の叔父である狩野が主役です。

「機密事項? 暴れた理由を隠される事を本人は望んでいるのかな?」 


 真顔の真葵が勇真さんに尋ねている。


「……え?」


 勇真さんが驚いたような声を出した?


「ヒントは終わりだよ」


「……真葵ちゃん?」


「まだ二時だし、夕飯の焼き肉まで時間があるよね。おでんを温めたから食べよう? 普通の人間はお昼ご飯を食べないとお腹が空くんでしょう?」


「……真葵ちゃんはお腹が空かないのかな?」  


「うん。お腹も空かないし味もしないから別に食べなくてもいいんだけど、普通の人間はご飯を食べるでしょう? だから食べるの。それに栄養を摂らないと死んじゃうしね」


「……何の感覚もないの?」


「暑いとか寒いとかそういうのは分かるよ。温かいとか冷たいとかもね」


「……そうか……いつもおいしそうに食べていたから分からなかったよ。じゃあ高級焼き肉とか高いアイスが好きなのは……」


「だって普通の人間は高級な物がおいしいんでしょう?」


「……真葵ちゃん。ずっとそうやって生きてきたんだね」


「パパと約束したから。普通の人間の振りをするって」


「……食べた時……何も感じないの?」


「味は分からないよ。分かるのは熱いとか冷たいとかだけかな?」


「だから真葵ちゃんは、熱いおでんとかもつ煮とかをよく作るんだね」


「私には味覚がないけど、熱いと食道から胃に温度が伝わるからね。食べているんだなって実感するの」


「……駿河様の殺意を抑える事ができれば味がするようになるかもしれない。今の真葵ちゃんは全ての感覚や感情をなくして殺意を抑えているんだろう? 賢い真葵ちゃんにならそれが分かっているはずだよ」


「……おじいちゃんは駿河の殺意を甘く見過ぎているよ。十八年前、人を殺したくて暴れる私をパパが力で押さえつける事ができたのはまだ四歳だったから。十八年経った今、駿河の殺意と力は私の成長と共に大きくなった。あの頃とは比べ物にならないくらいにね」


 あの頃よりも駿河の殺意が大きくなっていたなんて……

 それをずっと独りで抑え込んできたのか……


「……真葵……パパは……どうしたらいいのか分からない。でも……これだけは言える。パパは真葵に生きて欲しい。誰からも命を奪われないで欲しい。その気持ちは伝わっているよね?」


 俺は真葵の『パパ』なのに……

 最低だ……

 独りで駿河の殺意を抑えてきた真葵に『どうしたらいいのか分からない』なんて……

 父親失格だ……


「……うん。分かるよ。パパが本当のパパじゃない事も知っていたの。心を聞いたから」


「……いつから?」


「完全体の駿河になった時だよ。パパと約束してからは他人の心を聞かなかったから」


「ずっとパパとの約束を守っていたんだね」


「普通の人間は約束を守るってパパが教えてくれたから。私がどんなに暴れても見捨てなかったパパに……うーん……私には感情がなくて分からないけど……『感謝』しているよ。駿河の殺意を抑えるのがどれだけ大変か私にはよく分かるから」


「……真葵。だったら……まだ約束を守ってくれるよね? ずっと駿河の殺意を抑え込んで辛かった真葵にこんな事は言いたくないけど……」


「うん。今はまだ普通の人間の振りを続けるよ。健気で純粋でかわいい真葵を演じればいいんだよね?」


 健気で純粋でかわいい真葵を演じる?

 真葵……

 そんな風に思いながら暮らしていたんだね。

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