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真葵を守る為に(3)

今回は真葵の実の叔父である狩野が主役です。

「狩野ちゃん……本当に……その傷を……真葵ちゃんが?」


 勇真さんが険しい表情で尋ねてきた。


「……初めは覚醒に失敗したと思っていましたが……日に日に強くなる殺意、そしてあの恐ろしい瞳……俺は……確信したんです。真葵が『完全体の駿河』だと……」


「……どうやって押さえつけたんだ? 完全体の駿河様を……」


 駿河『様』か……

 やはり勇真さんも駿河を崇拝しているのか。


「命がけでしたよ……四歳だったからなんとか止められたんです。俺に、真葵との約束を守らせる為に普通の人間の振りをしていたなんて……俺と離れ離れに暮らしていたこの十一年間もずっと……」


「……約束……確か『普通の人間の振りができたらご褒美をあげる』だったか?」

 

「……はい。覚醒前の真葵は、普通の女の子でした。どこにでもいる普通の四歳の女の子……ですが……覚醒を境にすっかり変わってしまって……一度見聞きした事は絶対に忘れず、知能も高い。心を聞き、人を憎み殺したがる……覚醒前の真葵なら、ご褒美といえば『かわいいシールが欲しい』くらいのものでした。だから……まさか……あんな事を考えていたなんて……」


「あんな事?」


「真葵の願いは……」


「願いは?」


「……この世界の人間を……皆殺しにする……それを俺にも手伝って欲しい……と……」


「皆殺し……? 本当に真葵ちゃんがそんな事を?」


「……信じられなかった……殺意を抑えるのが上手くなり……普通の女の子に見えたから……ですが……賢い真葵になら周囲の人を欺くくらい簡単だったはずです……」


「信じられない……あの真葵ちゃんが……人を殺したい……?」


「葵に隠し事はできません。身重の葵が真葵の心の奥深くを聞いてしまったら……どうなるか……」


「出産後まで会わせるのを待ちたいと?」


「……俺は……間違っていたんでしょうか?」


「……え?」


「見守る者に『覚醒に失敗した』と知られたら殺されてしまう。だから……無理矢理普通の人間の振りを押しつけて……苦しめて……四歳までは味も痛みも悲しみも喜びも分かっていたのに……それを全て失った真葵に『味が分かる振りをしろ』『楽しい振りをしろ』と……」


「……全ては真葵ちゃんに生きて欲しかったから……か。その気持ちはよく分かる。俺にとっては初孫だ……かわいくて堪らない……」


 勇真さんの声が震えている。

 これは心からの言葉だと信じていいのか?

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