真葵を守る為に(2)
今回は真葵の叔父である狩野が主役です。
「狩野ちゃん? 大丈夫か?」
フラフラする俺を勇真さんがソファーに座らせてくれる。
「……はい。ありがとうございます……勇真さん……真葵がまだ四歳だった頃の話を聞いてください」
「四歳? 何かあったのか?」
「……覚醒……だったのか……それすら分かりません……いや……覚醒だったはずです」
「……覚醒? だが真葵ちゃんには覚醒時の暴走はなかったと聞いているが……」
「夜……いつも通り俺の隣で気持ち良さそうに寝ていて……でも……朝起きると瞳が変わっていたんです」
「……瞳……真葵ちゃんのあの瞳……それで……どんな風に変わったんだ?」
……?
勇真さんの様子がおかしいような……
でも、勇真さんは常に心を聞かれないようにしているから何も聞こえてこない……
「前日までのキラキラと輝く瞳とは違い……殺意に満ちていました」
「殺意? たった四歳の女の子が?」
「……今まで出会ったどんな者よりも恐ろしかった……あの瞳を見ると身体が震え、立つ事も息をする事もできないほどでした」
「……嘘は……なさそうだ……だが信じられない……たった四歳の女の子だぞ?」
俺の瞳を見つめながら勇真さんが話している。
心を聞いているのか……
「……初めは覚醒に失敗したと思いました。家の外から真葵を見守る駿河に絶対に知られないようになんとか力で押さえつけました」
「なんとか押さえつけた? ……狩野ちゃんは、かなり強い。それなのになんとか押さえつけた……?」
「四歳の真葵でさえやっと押さえつけたんです……今の真葵はあの頃よりも強いはずです」
「だが真葵ちゃんからはそんな殺意は感じられないが……」
「俺は……騙されていたんです……」
「騙されていた?」
「真葵は……覚醒前の真葵はよく笑う女の子でした」
「今の真葵ちゃんもそうだが……?」
「俺もそう思っていました……二十分前までは……」
「二十分前?」
「真葵に言われました……願いを叶えて欲しいと……」
「願い?」
「毎日暴れ……人を殺したがる幼い真葵に……言ったんです。『普通の人間の振りができたらご褒美をあげる』と」
「……人を……殺し……たがる?」
「……信じられないでしょう? 今の真葵からは想像もつかないですよね……見てください……俺の身体には……真葵につけられた大量の傷が残っています」
上着を捲ると勇真さんに傷跡を見せる。
十年以上経つのに、まだしっかりと残る傷跡……
この傷を四歳の真葵がつけたなんて……
成長した今の真葵があの頃のように暴れたら確実に暗殺部隊が出動する……
そうなれば俺が率いる『覚醒に失敗した者を消す暗殺部隊』が動く事になる。
……俺が真葵を消す?
ダメだ。
真葵には幸せに暮らして欲しい。
絶対に真葵の暴走を阻止しなければ……




