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真葵を守る為に(1)

今回は真葵の実の叔父である狩野が主役です。

『これからは、ずっとずっとパパが一緒にいるからね』


 そう真葵に告げると、その足で勇真さんの畳屋に入る。

 真葵は畳屋の前で待っていた駿河達に任せた。

 今からする話を真葵に聞かれるわけにはいかない……

 

 あ……

 勇真さんがパソコンで注文確認をしている。


 真葵の事を話しても大丈夫なんだろうか……

 でも……

 四歳の真葵を力で押さえ込んだ時でさえギリギリだった……

 成長した今の真葵を俺一人で止められる自信なんて微塵もない。


 それだけじゃない……

 葵と真葵が会えるようになるなんて……

 二人を会わせる事はできない。

 絶対に悪い方へ向かってしまう……

 それと……

 小田ちゃん……

 落ち着いていた真葵を混乱させたのは小田ちゃんだ。

 これ以上二人が会えないように引き離さないと……

 それには協力者が必要だ。

 真葵を大切に想う協力者が……

 それ以外に真葵を助ける方法はない。


「勇真さん……」


「ん? 狩野ちゃんか。どうかしたか?」


 老眼鏡を外した勇真さんが振り向いた。

『繋ぐ者』の時とは違って優しい表情だ。


「……話があります」


「……大切な話……か。狩野ちゃん……もうすぐ一真も帰ってくる。それからでもいいか?」


「……はい。小田ちゃんにも話すつもりでしたから……ですがその前に……勇真さんに話しておきたい事があります」


「一真には聞かれたくない話か?」


「いいえ。話します。ただ……小田ちゃんが最後まで冷静に話を聞けるか分からないので」


「……真葵ちゃんの事……か?」


「……はい。……何から話したらいいのか」


「……ゆっくり話したらいい」


「……勇真さん。ありがとうございます……」


「……顔色が悪い。真葵ちゃんの為に無理をしたからか……」


 勇真さんが真葵を大切に想う心を信じてもいいのか?

 忍びの里で産まれ育った者は異常なほどに駿河『様』を崇拝していた……

 でも、さっき若い駿河の心を聞いたら……

『おっさんは里から出た忍びは執着がなくなったように見えたって言ってたけど狩野さんはどうなんだ?』

 と考えていた。

 真葵をずっと見守っていた駿河がそう話していたのなら、勇真さんも駿河『様』に執着していないのか?

 ……それならどうして駿河『様』の子孫を保護する?

 ……分からない事ばかりだ。

  

 今は時間がない。

 真葵がいつ暴走してもおかしくないこの状況で、頼れるのは勇真さんだけ……

 話して協力してもらうしかない……


「あ……あの……勇真さん……実は……葵は……真葵の母親は……俺の双子の姉なんです」


「……双子の姉? 葵様が?」


 勇真さんの表情が険しくなった……

 当然だ。

 葵は覚醒者の中でも『特別な存在』だからな。


「……俺と葵の母親は出産直前に連れ去られました。そして葵を産むとすぐ、ある男に救い出されました。その時……俺は母親のお腹にいて……」


「……待ってくれ。本当に葵様と狩野ちゃんが双子なのか? まったく似ていないが……ああ……そうか。狩野になる為に整形したのか」


 勇真さんは『狩野の秘密』を知っていたのか。

 さすが暗殺部隊を率いる繋ぐ者だな。


「……元の姿も葵とは似ていませんでしたよ」


「真葵ちゃんは『育ててくれたパパはラグビーをしていたからがっしりしていた』と言っていたような……葵様は小柄だから正直……信じられない……」


「命がけで守ってきたかわいい姪の真葵……葵は俺を双子の弟だと知っていました。葵には隠し事はできません。勇真さんにも分かるでしょう?」


「葵様の心を聞く力は他とは違う……作られた心など通用しない」


「信じられない気持ちは分かります。葵に確かめてください。俺の血液検査をしても構いません」


「……そうか。すまないな。信じてやれなくて……」


「突然こんな話をされたら当然です。あの……勇真さん……実は……真葵を葵に会わせないで欲しいんです」


「……え?」


「……こんな事……できれば話したくはなかった……ですが……このまま二人が会えば真葵も葵も傷ついてしまいます」


「……何か……あるのか?」


「……真葵は……今の真葵の姿は……作られたものです」

 

「……? 真葵ちゃんも整形したのか?」


「いいえ……そうではなくて……あぁ……」


 目が回る……

 フラフラする俺を勇真さんが支えてくれた。


 本当に話してもいいのか?

 どうすれば真葵を守れるんだ……

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