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私……変だよ(3)

「……パパ?」


 やっと『約束』の話ができる……


「うん?」


 パパが優しく微笑みながら私を見つめている。


「パパ……覚えている?」


「ん? 何かな?」


「私が普通の人間として暮らしたらご褒美をくれるって」


「……え?」


 さっきまでの穏やかな表情が固まったね……


「まだ私が小さい時……言ったよね?」


「……真葵?」


 パパの表情が険しくなっていくのが見て分かる。


「私……普通の人間に見えたでしょ?」


「……何を……言って……」


「私……何も変わらないんだよ」


「……変わらない?」


「何の感情もないし、疲れないし痛くもないの」


「真葵……」


「普通の人間に見えたでしょ?」


「……真葵……どうしたの? どうして急にそんな……」


「パパだって分かっていたでしょ? 私は変われないって」


「……真葵」


「後悔した? 赤ちゃんの時に殺しておけばよかったって……私の為に団体を消さなければよかったって」


「そんな事は思わないよ」


「パパ……じゃあ約束を守ってよ……」


「……真葵……瞳の力を抜くんだ……」


 瞳の力?

 あぁ……

 そうか。

 駿河の殺意が瞳から溢れているんだね。


「……嫌だって言ったら?」


「真葵!」


「……私はあの頃みたいな子供じゃないよ?」


「……真葵はいくつになってもパパの大切な家族だよ。何も変わらない。早く瞳の力を抜くんだ」


 パパの真剣な瞳から私を大切に想う気持ちが伝わってくる。

 瞳の力を抜くと話を続ける。


「……はぁ。分かった……ねぇパパ」


「……うん?」


「私の願いを叶える手助けをしてよ」


「願い?」


「この世界から人間を消し去るの」


「……え?」


「だって……人間は世界を汚して傷つける悪い生き物なんだよ? いらないでしょ?」


「真葵……本気で言っているの?」


「叔父さんは言ってくれたよ? 『普通の人間になんかならなくていい』って」


「……小田ちゃんが?」


「パパ……パパが教えてくれたんだよ? 約束は守らないといけないって。それが普通の人間だって。パパは普通の人間だから約束を守ってくれるよね?」


「……真葵」


「それだけ言いたかったの。じゃあ行くね」


「真葵……いいかい? 多くの人に完全体の駿河だと知られても力を使ってはいけない。分かるね?」


「……普通の人間の振りを続けたら約束を守ってくれるんだよね?」


「……ずっと……普通の人間の振りをしていたの? 一緒に目玉焼きを作った時も……小学校に入学した時も……心から笑っていたんじゃなかったの?」


「心から……? 心って何?」


「真葵……色々あって混乱しているんだね。大丈夫。大丈夫だよ。パパが……そうだ。これからは、パパと暮らそう。また落ち着いてから小田ちゃんと暮らしたければそうすればいいし、パパと一緒にいたければ……どこか田舎に行って二人で暮らそう」


「……二人で?」


「そうだよ。あの頃みたいに二人で……」


 あの頃みたいに二人で?

 駿河の殺意を抑えるのに必死なパパと、パパを殺したい私……

 パパには地獄の日々だっただろうね。

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