叔父さんから聞いた真実? ~後編~
駿河を崇拝するあまりやり過ぎてしまう人?
「それが、今までママを保護していた施設長?」
そんな人がママを保護していたなんて怖いよ……
「なんとしてでもこれから産まれてくる子を『駿河様』って奴にしたかったんだろう。あいつはバカだ。その『駿河様』を殺そうとしたんだからな」
叔父さんが険しい表情で話しているけど……
「……私の事?」
「あいつは真葵を直接見た事がないからそれを知らない」
「直接見る?」
「さっきも話したが……真葵の瞳……」
「私の瞳?」
「遠くからだとそうでもないが近くで見ると……妙な気持ちになる」
「妙な気持ち?」
「……今すぐにでも殺されるかもしれない恐怖……それから……カリスマ性? 上手く言えないが、そんな感じだ」
「私が……? そんなに怖いの?」
「いや、真葵はバカだからそうでもないな」
「……え?」
「……今は……な」
「今は?」
「まだ覚醒してないからだろう」
「覚醒していないの? 完全体の駿河なのに?」
「死にたくなるような絶望を味わうと覚醒するらしいが……真葵は育ててくれた駿河が拐われた時、覚醒しなかった」
「……え? あ……うん」
「もし真葵が覚醒に失敗したら……誰にも止められないはずだ」
「……私が駿河の完全体だから?」
「……駿河の完全体だったらどうなるのか……何が起こるのか……俺には何も分からない。俺だけじゃない。たぶん駿河の里の忍びも分かってないはずだ」
「そうなの?」
「だから真葵は保護されず、この家で暮らしてるんだろうな」
「……ずっと待ち望んでいた駿河の完全体……だけど……実際現れたらどうしたらいいのか分からなかった……?」
「繋ぐ者がどう考えてるかは分からないが……狩野も親父も、ここにいる真理を見守る繋ぐ者も真葵に何かさせようとは考えてないようだ。むしろ守りたいと思ってるのか? 他人の心を聞く力がある奴らは自分の心を聞かれないようにするのが上手いから真実は分からない」
「何かさせたい事があるから、その時の為に今は守っている……とか?」
「……何が真実かは分からない。だが……駿河の里の四十代より上の奴らが覚醒者に執着してるのは事実なんだろ?」
叔父さんがおじさんに尋ねている。
「そうだね。俺は、里が都会に移動したから若い世代が執着しなくなったと思っていたんだけど……違うのかな?」
「……ツクツク駿河は二十代だよな。真葵の瞳を見ても何も感じないか?」
「え? 俺? ……俺は……うーん……」
叔父さんに尋ねられたお兄ちゃんが真剣に考え込んでいる?
「背中がゾクゾクするような感覚にならないか?」
「背中がゾクゾク? うーん……綺麗だとは思うけど……ゾクゾクはしない……あ! いや……こんなバカにゾクゾクなんかしない!」
今、私をバカって言った!?
「はあ!? バカ!? お兄ちゃんまでそんな事を……」
「あ……いや……これは……いや……だから……て言うより……真葵が完全体の駿河様ってどういう事だよ」
バカって言ったのをごまかしている?
でも……
今は怒っている場合じゃないか……




