本当に家族皆で暮らせるの?
「葵は安全な場所にいる。だが真葵は……」
叔父さんが辛そうに話している。
でも……
「もう! 分かっていないんだから!」
「分かってない?」
「ママは施設の人に大切にされていても、その人達は家族じゃないんだよ。本当は叔父さんと一緒にいたいに決まっているでしょ?」
「……だが」
「ママに伝えて。『叔父さんは……お父さんは私に気を遣い過ぎて、本当はママと一緒にいたいのに我慢している』って……」
「真葵……」
「叔父さんはずっと私を守ってくれたよ? だから……施設に出入りできるならママを守って欲しいな……」
「……それはできない。今一番危険なのは真葵だ」
「叔父さんは出産が簡単な事だと思っているの?」
「そんな事はない。出産は命がけだ。しかも葵は覚醒者……普通の出産よりも危険なはずだ」
「……ママは私を産んだ時、寂しかったはずだよ」
「……え?」
「ママが私を産んだ時……叔父さんにそばにいて欲しいと思ったはずだから。今度はきちんと隣にいてあげて」
「……真葵」
「……私は大丈夫。でも……産まれた赤ちゃんはママと一緒に施設には、いられないんだよね?」
「……いや。初めからある五つの施設長が話し合って乳離れするまでは葵の施設にいられるようにしたらしい」
「……ママは赤ちゃんを奪われて、また寂しくなっちゃうんだね」
「……真葵……その事だが……」
「ん?」
「真葵の存在を……真葵が覚醒者の娘だという事を隠すのが難しくなってきた」
「……うん」
「今まで覚醒者に子は授からなかった。子が産まれてから覚醒する奴ばかりだったからな。だが葵は覚醒後に二人も授かった。今の施設にいなければ子を産む道具として扱われていたはずだ。……いや、違うな」
「……叔父さん?」
「今回俺が葵に会えたのは二十三年振りだった。施設長とは直接やり取りしていなくて、給料の振り込み以外の繋がりはなかったんだ。連絡は駿河を通して行っていた」
「駿河って、おじさんの事?」
「ああ。今回葵に会って欲しいと施設長に言われたのは……もしかしたら二人目の子を授からせる為だったのかもな」
「……え?」
「今日、施設長に言われた」
「……何を?」
「家族四人で施設で暮らさないかと」
「家族四人?」
「俺と葵とこれから産まれてくる子……それから真葵だ。もし真葵がそれを望むなら皆で暮らせるように他の施設長と繋ぐ者にも話してくれるらしい」
本当に家族皆で暮らせるの?
「でも……それってダメな事なんじゃ……」
「今まで覚醒者の女性は子を授かる事がなかったからな」
「……うん」
「優しい提案に聞こえるだろうが……それは違う。そうなれば真葵は二度と外には出られない」
「……うん」
「断った。……覚醒していない真葵を……閉じ込めるなんてダメだ」
「……叔父さん」
「真理や商店街の奴らに二度と会えなくなる。モデルの仕事もできなくなる。まるで最初からここに真葵がいなかったかのように……そんなのはダメだ」
「……ママは……なんて?」
「……葵は一年ほど外の世界で暮らしていた。それに駿河達から外の世界で暮らす真葵の楽しそうな姿を聞いて……閉じ込めるのはかわいそうだと言った」
「……そう」
「真葵の言う通りだ」
「……え?」
「葵は大切にされていても……ひとりぼっちだ」
「……うん」
「産まれてくる子供は葵と暮らし……真葵は外で暮らせ」
それって……
私は赤ちゃんにもママにも会えないっていう事?