叔父さんにはママと一緒にいて欲しいんだよ
お昼前___
こたつの中で寝ていたモモちゃんが玄関にトコトコ歩いて行った?
もしかして叔父さんが帰ってきたのかな?
モモちゃんがお出迎えするのは叔父さんだけなんだよね。
玄関が開くとモモちゃんの甘えた声が聞こえてくる。
「モモ……身体がホカホカだな……」
叔父さんの声だ。
叔父さんが、ゴロゴロ喉を鳴らしているモモちゃんを抱っこして居間に来たけど……
深刻な表情をしている?
出かける時は嬉しそうにソワソワしていたのに……
「真葵……」
「叔父さん? 何かあったの?」
「あ……いや……」
かなり気まずそうにしている?
「話しにくい事?」
「あぁ……いや……」
「……叔父さん?」
まさかママに何かあったんじゃ……
「あぁ……いや……いずれ分かる事だから……話すが……」
「……うん?」
「葵が妊娠した」
「……え?」
「だから……葵が妊娠したんだ」
ママが妊娠?
でも叔父さんは喜んでいないよね?
まさか……
叔父さんが父親じゃないとか?
「えっと……」
「……なんだ?」
「父親は……叔父さん……なんだよね?」
「……? そうだ」
「じゃあどうして深刻な表情をしているの?」
「……それは……葵と俺の子だから……苦労するのは目に見えている」
「もう! ママの前でもそんな顔をしたの!?」
「……え?」
「ママの前でもそんな顔をしたのかって言ったの!」
「それは……」
「今すぐママの所に行って!」
「今すぐ……?」
「本当はすごく嬉しいのに将来を考えて喜ばないなんて絶対にダメだよ!」
「真葵……」
「ママに『妊娠してくれてありがとう』って言うまでご飯をあげないからね!」
「……は? 俺は小さい子供じゃないぞ……」
「バカ! 叔父さんのバカ! これから産まれてくる赤ちゃんは私の弟か妹で、叔父さんの子供なんだよ! ママが命がけで産んでくれる大切な大切な家族なんだよ!」
「……それは……はぁ。真葵に言われるまで素直に喜べないなんて……俺は本物のバカだな」
「叔父さん……」
「葵に会ってくる」
「うん! あ、じゃあタッパーにおでんを入れるから持って行って」
「おでんを?」
「もしかして持ち込み不可?」
「いや、それはないが……」
「私が作ったおでんをママにも食べて欲しいの。今日のおでんは過去最高のできなんだよ。大根なんて中までしみしみなんだから」
「そうか……」
「叔父さん……嬉しい時は嬉しいって言わないと。私はずっと叔父さんと一緒にいるから不器用だって知っているけど、ママは悲しくなったはずだよ」
「……俺は……葵を悲しませたのか……」
「後の事なんて後で考えればいいんだよ。今はママの身体を大切にしないと」
「……そうだな。葵は三十九歳だ。身体に気をつけないと」
「叔父さん……ずっとママと一緒にいる事はできないの?」
「……え?」
「私は大丈夫。おじさんもお兄ちゃんもおじいちゃんもいてくれるから。でも……ママは寂しいんじゃないかな?」
「……真葵」
「モモちゃんの事は私に任せて、安心してママの所に行って」
ママは施設でひとりぼっちだから寂しいはずだよ。