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叔父さんがソワソワするなんて珍しいよね

 今日は珍しく朝早くから叔父さんが起きている。

 いつもなら十時過ぎに起きてこたつでゴロゴロしているのに。


「少し出かけてくる」


 居間のこたつで繋ぐ者のおじさんとみかんを食べていると、叔父さんが話しかけてきた。


「え? こんなに早く? まだ九時だし、モモちゃんのおやつを売っているお店は開いていないんじゃない?」


 あれ?

 普段よりちょっと良い服を着ているような……

 あぁ、ママに会いに行くのかな。

 居間に繋ぐ者のおじさんもいるから話せないのかも。


「俺の方がいっぱい集めた!」 


「は? 真理より俺の方が多いだろ!?」


「まったく……あの二人は朝からうるさいな」


 叔父さんが庭を見て呆れている。

 お兄ちゃんと真理ちゃんは焼きいもを作るって言っていたけど……

 外を見ると大きい袋に落ち葉を詰めているのが見える。

 どっちが多く落ち葉を集めるか競争しているみたいだ。

 そういえば朝から姿が見えないけど、おじいちゃんはお出かけかな?


「昼飯までには帰る」


 そう言うと叔父さんが高そうなコートを羽織った。

 いつものヨレヨレのトレンチコート以外にも持っていたんだね。

 うーん……

 きちんとした服を着るとかっこいいかも……


「そんなに早く帰ってくるの?」


「近所に行くだけだからな」


「ふぅん……でもちょうどよかった。今日のお昼は叔父さんが好きなおでんだから」


「おでんか……」


「あはは! 『熱燗も』でしょ?」


「親父が大事に隠してるやつを出してくれ」


「もう……お給料をいっぱいもらっているんでしょ? 自分で買いなよ。あ、もしかしておじいちゃんはお酒を買いに行っているのかも。叔父さんが勝手に飲んじゃうからだよ?」


「親父は金持ちだからいいんだ。じゃあ行くからな」


「おじいちゃんは年金と畳屋の稼ぎで細々と暮らしているって言っていたよ? 当てにしないの!」


「まったく……はぁ。真葵は家から出るなよ。駿河との町内三周は俺が帰ってからだ」


「え? うん。分かった。……ん? ちょっと待って!? 今、町内三周って言った!?」


「体力が有り余ってるみたいだからな。今日から三周だ」


「ちょっと待って! 昨日の今日だよ!? 絶対近所の子供達に『ティッシュ女王』って笑われるよ!」


「安心しろ。笑うのは子供だけじゃない。大人もだ。そして俺は昨日から『ティッシュ大王』になった……最悪だ」


「……私達くじ運悪過ぎでしょ」


「じゃあ行ってくる。ちゃんと戸締まりしろよ」


「うん。大丈夫。もうすぐおじさんも来る時間だし」


「……そうだな」


 叔父さんが出かけると繋ぐ者のおじさんが笑い出した。


「あはは! 一真さんは葵様に会えるからソワソワしていたね。隠しているつもりかもしれないけどバレバレだったよ」


「やっぱりそうだよね? いつもは斜に構えてつまらなそうにしているのに……分かりやすいよね」


「それだけ葵様を大切に想っているんだよ……あはは!」


「娘としては嬉しいような恥ずかしいような……複雑だよ」


「おじゃましまーす!」


 おじさんが玄関を開けて入ってきた声が聞こえる。

 今日もおいしい物をいっぱい持ってきているのかな?


「ぴよたん、おはよう」


 居間の襖を開けたおじさんの笑顔が今日もかわいいっ!

 

「おじさん、おはよう。途中で叔父さんに会わなかった?」


「ん? 一真? 会ったよ。近所の人にティッシュ大王って呼ばれていたけど……」


「……うわ。やっぱり……」


「ぴよたんは毎年この時期に『ティッシュ女王』って呼ばれているけど一真は大王だったんだね」

 

「今年からそうなったんだよ……しかも今日から町内三周に……あれ? 叔父さんはお昼くらいに帰ってくるけど町内三周はそれからだよね。でもお兄ちゃんは施設に帰っている時間……」


「どうかした?」


「……あ、うん。叔父さんが帰ってきてから町内を走れって言われたの。でもその時間はおじさんが私を見守っている時間だから……まさか今日はおじさんと一緒に町内を走るんじゃ……」


「……え? そんな……無理だよ。しかも一周増えているよ?」


「でも……叔父さんが帰ってきてから走れっていう事は……うーん。叔父さんが一緒に走るとか?」


「……あり得ないよ。あの一真だよ?」


「……そうだよね。あの叔父さんが走るはずないよね」


 叔父さんは何を考えているんだろう。

 早く帰ってこないかな。


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