番外編 商店街の福引きで二等を当てるぞ! (2)
今回は真葵の父親である一真が主役です。
「じゃあ……回すか。本当に米とご飯のお供セットは入ってるんだろうな」
「ははは。どうかな?」
商店街の会長が忙しそうに動きながら笑っている。
福引きなんて何年振りだ?
そうだ。
あれはまだ真葵を引き取ったばかりの頃……
あの頃から福引きをするたびにポケットティッシュしか当たらなくて。
……いや、待て。
真葵のやつ十年以上この福引きをしてるのに毎回ティッシュなんて……
普通はおいしい棒くらいは当たるよな?
どれだけ、くじ運がないんだ……
「お!?」
出てきた玉を見て商店街の会長が驚いている?
まさか……
米とご飯のお供セットが当たったのか!?
それとも一等の温泉宿泊券!?
「ははは! さすが親子だ!」
え?
まさか……
「これは……ティッシュ……?」
普通こういう時は米が当たるよな……
……真葵のくじ運の悪さは俺似だったのか。
「真葵ちゃんがティッシュ女王だから、小田ちゃんは……そうだ! ティッシュ大王だな! あはは!」
俺がティッシュ大王?
あぁ……
近所の子供とすれ違うたびに『ティッシュ大王』って指を差して笑われるんだろうな……
買い物袋にティッシュを入れて家まで歩く。
この話をしたら真葵にも親父にも笑われるな。
だが、隠していて商店街の会長からバラされたら……
仕方ない。
話すか……
家に着くと、モモが甘えた声を出しながら擦り寄ってくる。
あぁ……
かわいいな。
頭を擦りつけてきた時の頭蓋骨の硬さまでかわいい……
「あ! 叔父さんおかえり。夕飯ができているよ。今日は叔父さんが好きなもつ煮だよ。えへへ。朝から煮込んでいたんだ」
……もつ煮か。
悪くないな。
確か親父の日本酒があったはず。
「……真葵」
「ん?」
「……お前のくじ運の悪さは俺似らしい」
「……え? 何が?」
「今商店街の福引きをしてきた。モモのおやつを買ったら券をもらったんだ」
「……まさか……ティッシュだったの?」
「……俺は『ティッシュ大王』でお前は『ティッシュ女王』らしい」
「……叔父さんが……ティッシュ大王? ぷっ……あはははは! さすが親子だよっ! あはは!」
真葵が面白そうに笑っている。
……こいつはよく笑うんだ。
すぐ腹を空かせて、俺がゴロゴロしていると文句を言って。
……だが、心にはいつも育ての父親が連れ去られた時の恐怖と絶望がある。
俺もいなくなるかもしれないと思って……
またひとりぼっちになるかもしれないと思って苦しんでいる。