番外編 商店街の福引きで二等を当てるぞ! (1)
今回は真葵の父親である一真が主役です。
真葵が毎年恒例のティッシュ女王になった日の夕方___
猫のモモのおやつを買いに商店街に来た。
外は肌寒いな。
ずっとこたつにいたかったが……
モモの為だから仕方ないか。
ペット用品の店に入ると……
……暖房はついてないのか。
「あった。モモが気に入ってるおやつ」
最近はこれしか食べないからな……
真葵に任せたら違う味を買ってくるに決まってる。
はぁ……
それにしても真葵のやつ、冷えきった夫婦関係の妻みたいになってきたな。
口うるさい真葵と違って、モモは文句を言わないからいい。
鳴き声もかわいいし、人と違って嫌な事を考えない。
横になると腕に入り込んできてゴロゴロ喉を鳴らす姿はずっと見ていられる。
店から出ると家までゆっくり歩く。
はぁ……
寒いな。
疲れる……
歩きたくない……
そういえばおやつを買った時に福引き券をもらったな。
真葵は今年もティッシュ女王か。
やれやれ……
小さい頃からくじ運が悪いんだ。
……米とご飯のお供セットを欲しがっていたな。
まだ残っていればいいが。
まぁ、あっても当たらないだろうがな。
良い景品はだいたい最終日に入れるんだ。
真葵はバカだからそれを知らないのか……
本当に手がかかる。
だが……
俺を『お父さん』と呼んだり、ずっと一緒にいたいと考えたり……
娘はいいな。
真葵はバカだから大変だが……
娘はかわいい。
口に出すと調子に乗るから絶対に言わないが……
「あれ? 小田ちゃんが買い物袋を持ち歩くなんて珍しいな」
商店街の会長か。
相変わらず無駄に元気だな。
おいしい棒とポケットティッシュの箱を忙しそうに運んでいる。
「まだ米とご飯のお供セットはあるか?」
どうせ入ってないだろうがな。
「……真葵ちゃんは今年もティッシュ女王になったよ。ははは!」
「あいつは、くじ運が悪いんだ」
「ははは! 回していくんだろう? あれ? 猫のおやつを買ったのか? そういえば鈴木さんの猫を飼い始めたって聞いたな」
「そうなんだ。鈴木夫妻は田舎暮らしがしたいから引っ越しする事になってな。脱走癖がある猫のモモが山にでも入り込んだら大変だから譲り受けたんだ。孫の真理とその遠縁の親戚も親父の家で暮らす事になったから毎日賑やかだ」
偽鈴木夫妻はもう消された頃か?
「それにしても小田ちゃんが畳屋の息子だったとは驚いたよ。言われてみれば佐藤畳店の店主は『佐藤』じゃなくて『小田』だったしな。しかも真葵ちゃんが姪じゃなくて娘だったなんて。まぁ二人はよく似ているから納得だ。ははは!」
「俺も真葵もバカだから親子だと気づかなかったんだ」
「ははは! 小田ちゃんと真葵ちゃんならそんな事もあるかもな」
……俺も真葵もかなりのバカだと思われてるんだな。