わたしは……… 13歳
これは………?
わたしの体が……
雨の中で血だらけで……
そう、そうだよね、わたしはやはり死んだの?
だってもう痛くなかったもの。死んだと思ったもの……
ーーーーー
みんなが泣いている。
嘘だ。
お母様もお父様もお姉様も泣いている。
絶対嘘だ。
だってわたしのことあんなに無視してたじゃない。
今更泣いてもわたしには伝わらないのに……
「カトリーヌ、ごめんなさい。貴女を失うなんて思ってもいなかった。仕事が忙しくて貴女をジャルマ達に任せっぱなしでみようともしなかった。
ううん、言い訳よね。貴女を見ていると夫のことを思い出すから避けていたの」
ーーやっぱり、避けられていたんだ。
「でも本当は貴女が心配でいつもこっそり会いに行ってた。こんなことになるならカトリーヌと向き合っていればよかった、ごめんなさい」
ーー会いにきていた?そんなこと知らない。わたしが受けた体罰のこと少しも知らなかったくせに。
「すまなかったカトリーヌ。わたしが弱かったせいで罪もない君が悪者になった。領地から帰ってこなかったのはどんな顔をして会いにくればいいかわからなかったからなんだ」
ーーふうん、そうだったんだ。
わたしが悪者になったこと知っていたのに放っていたんだ。
「カトリーヌごめんなさい。わたしは貴女を妬んでいたの。周りから可愛いと言われて愛されていた貴女に。まさかお母様達から冷遇されているなんて知らなくて……わたしは意地悪ばかりしていたわ」
ーーやっぱりあの優しさは意地悪だったのね。
そして、呆然と立ち尽くすイーサン殿下がいた。
流石にわたしが死んだこと少しは悲しんでくれたのかしら?
ーーうん?泣いてもいないのね。
さすがわたしを嫌っていただけあるわ。
陛下と王妃様が泣いていた。
ーーいつも優しくしてくれた二人には感謝しかない。
わたしにとっては本当のお父様とお母様のような人だった。
「な、何このあざ?」
お母様がわたしの体を震えながら見ていた。
ベッドで寝かされているわたしの体をお医者様がお母様に見せたのだ。
「カトリーヌ様には虐待の痕が残っております」
お母様はジャルマを呼んだ。
「ジャルマ、貴女は何か知っているの?」
「わ、わたしは知りません、体罰をしたのは家庭教師です。わたしは厳しくするように言っただけです。わたしは一度も手を出していません」
ジャルマは慌てて言い訳をし始めた。
ーーうん、確かに一度もジャルマに手を出されたことはなかったわ。
ジャルマは常に人にさせていたからね。
「お嬢様の食事をいつも素直に言うことを聞かないからと抜いていたじゃないですか?」
近くにいた料理長がジャルマを睨んだ。
「そ、それは……カトリーヌ様が素直に謝らないからですよ」
「何を謝るのですか?カトリーヌ様はいつも一生懸命に勉強をしていました」
ーーうん、わたし頑張ったもの!
「だ、だって、旦那様を領地へ追いやった原因はお嬢様が…」
「あれは旦那様が浮気をしたのがいけないのでしょう?」
ーー料理長、そんな大きな声で言わなくても……
「どうしてあんな気持ち悪いところを幼い子供に見られてその幼い子供が悪いと責められないといけないのですか?」
ーーうん、わたしも幼心に気持ち悪くて吐きそうだった。あれはトラウマだよね。
「わたし達は何度もこの屋敷を辞めようと思いました。でもお嬢様を放って辞められなかった。
奥様は誰の言葉も聞こうとしない、見ようともしない。我々はお嬢様を見守る以外出来なかった」
ーーお母様は誰の声も耳に入れようとしなかったもの。仕事に夢中になってお父様のことを忘れたかったのだろうけど。
でもわたしも意地っ張りだった。
お母様に振り向いて欲しくていい子でいようとした。確かに体罰は辛かったけどお陰で勉強は出来るようになった。
お姉さまに比べれば全然ダメだけど、人並み以上の成績は取れる。それは厳しすぎるジャルマのおかげかも。
まあ、食事抜きは毎度辛かったけど料理長達のおかげで飢えなくて済んだし。
あー、このままわたしは消えてなくなるのか……
次生まれてくる時はもう少し幸せな生活をしてみたいな。
みんなに愛されたら幸せなのに……
わたしはそして静かに眠りについた。




