八話
「もっと冒険者ってロマンがあるモンだと思ってた・・・」と俺が愚痴を言いながら薬草を摘む。
「あ、それはただの雑草よ」とベガ。
「見分けなんてつかないよ!
みんなペンペン草に見えるし!」
「ペンペン草!?
あの幻の薬草の!?
古代龍の巣の中にしかはえないと言われている!?
ど、どこにあるの!?」
「どこって、俺のいた世界ではどこででも生えてるよ?」
「ペンペン草があればエリクサーが!
エリクサーを大量生産出来れば薬学の復権のチャンスが!」
「た、多分俺の知ってる『ペンペン草』じゃないよ」
「『ペンペン草』は元々こちらの世界の植物じゃないのよ。
異世界から転移してきた『勇者』の洋服についてた種で当時の『勇者』の宿敵、古代龍の巣の近辺だけに生えてると言われている幻の植物なのよ」
「でもペンペン草って凄い生命力で・・・」
「あぁ、だから『何も生きて行けない』と言われている古代龍の巣の周りで繁殖できるのね」
「だったら日本でペンペン草を大量に刈ってきて、エリクサーを沢山売って依頼代にすれば・・・」
「言ったでしょう?
この世界では薬は『二束三文』なのよ。
それは『エリクサー』だって例外じゃないわ。
『薬学』が復権した後ならエリクサーはそこそこのお金になるかも知れない。
でもその前に売っても大したお金にはならないわよ。
その上、大量に売ったら更に値崩れする。
売るタイミングとしては最低ね」
「そんな事言ったらこの『薬草採取』だってお金にならないんじゃない?」
「そうよ。
だから言ったじゃない。
『子供の小遣い稼ぎ』だって」
「そんなのがどうして『冒険者ギルド』の依頼になってるのさ?」
「子供が集められる量なんて、たかが知れてるからよ。
『ドブさらい』だって自分たちでも出来るわ。
でも力仕事で人手が必要な時は『冒険者ギルド』に依頼を出すの。
今回は"子供には集められないくらいの大量の薬草"を集めて来い、って依頼を受けたのよ」
「なるほど。
つまり今摘んだ薬草で必要な量の何分の一くらいになるの?」
「そうね。
大体、十分の一くらいかしら?
大体一回の依頼に3日くらいかかるわね」
「・・・で、何回この依頼を受ければ『ネクロマンサーの教師募集』って依頼を出せる金額が貯まるの?」
「20回くらいかしら?
でもその依頼を受ける間の宿代と食費も必要ね。
大体上手くいけば半年くらいで目標のお金が貯まる計算、かしら?」
「無理だ!
そんな気の長い作業やってられない!」
「そんなの私だって無理よ。
だから『薬草採取』中に現れた野良のモンスターを倒すのよ。
その討伐報酬こそ本命よ」
「だったら依頼なんて受ける必要ないじゃん」
「バカね。
依頼なしで街の外に出られると思う?
依頼てお金を稼ぐつもりなら『ドブさらい』とか、土木作業の依頼を受けるわよ」
「そりゃそうか。
・・・で、ベガはモンスターを倒せるの?」
「倒せるくらい強いなら、森の中でこそこそしてると思う?
モンスターを倒すのは貴女よ」
「俺がモンスターを倒す!?
無理無理無理無理!
闘うどころか最後に喧嘩したのだって小学校低学年の頃だよ!」
「ショウガッコウ?
時々貴女の言う事はわからないわね」
異世界にその概念がない言葉は翻訳されないらしい。
しかし異世界に『小学校』の概念がないのは意外だな。
「大丈夫よ。
この街の周りには強いモンスターは出ないから。
言わなかったかしら?
『薬草採取は子供の小遣い稼ぎだ』って。
そんなに危険なら子供がこっそり街の外に出たりしないわよ」
「そう言えば『冒険者じゃないと街の外の出られない』って言ってたよね?
何で子供が街の外に出られるのさ?」
「子供はこっそり抜け穴から出たりするのよ」
そういや、俺も『立ち入り禁止』のフェンスを乗り越えて溜め池でザリガニ釣りしてたな。
子供に「危険だから入っちゃダメ」って言うのは逆効果かも知れないな。
「子供でも逃げれるモンスターしかいないし、それに『私は人のステータスが詳しく見れる』って言ったわよね?
貴女のステータスならこの街の周りに現れるモンスターなんて敵じゃないわよ。
それに『ステータスオープン』のスキルを覚えるならある程度、レベルは上げないとね。
・・・そんな事を言ってる間にモンスターが現れたわよ!
ホラ、私とナオミを守ってね!」
「あ、ちょっと!」
俺の静止も聞かないで、ベガがナオミの背中を押しながら草むらに隠れる。
俺はモンスターの前に取り残される。
モンスターは大きいネズミ、たとえるならアルパカだ。
でもアルパカより、ネズミ寄りだし、ネズミのクセにツノと牙がはえている。
俺は落ちている棒っ切れを拾う。
だって素手で生き物殴りたくないじゃん。
ツノのはえた大ネズミは勢いをつけて俺に向かって突撃してくる。
アレ?全然動き速くないぞ?
俺は半身で大ネズミの突撃を躱す。
躱した俺の脇をチョコチョコと大ネズミが走って行く。
俺は棒っ切れを思い切り大ネズミに叩きつける。
大ネズミは地面に叩きつけられて絶命する。
うわ、力一杯殴り過ぎた。
かなりスプラッターな光景だ。
「大した事なかてでしょ?
でもこんなに景気よくモンスターの血を流させて良かったの?
血の臭いで更にモンスターが集まって来るわよ?」
そんなん最初に言っておいてくれ!
俺は必死でモンスターを殴っただけなのに!




