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リクルーター  作者: 海星
77/94

七十七話

 「尚美、今日は泊まっていけるのよね?」と理事長。

 「え?

 泊まって行くの?

 初耳・・・」ナオミが俺の方を向く。

 『俺も今、初めて聞いた』と首を横に振る。

 「諦めなさい。

 お母様が言い出したら聞かないから」と綾美。

 まぁ、家族で募る話もあるだろう。

 「それじゃあ、俺らはここら辺で・・・」

 俺が退散しようとした時に後ろから理事長に声をかけられた。

 「どこへ行くの?

 ここはもう貴女の家よ?

 杏奈さんはウチの娘でしょう?」

 「それはあくまでも建前じゃないの?」

 ナオミが『彼女は私の妹だ』と言い張ってくれるから仕方なく俺は岡田家の養女扱いなんじゃないか?

 一応、俺はナオミの命の恩人って事になってるみたいだし。

 理事長としても俺を邪険には出来ないだろうし。

 だからこそ俺はアホなのに特待生扱いなんだろうし。

 俺はわかるけどここには無関係の人間が沢山いる。

 しかもその内何人かは国籍もわからない外国人だ。

 さっき『何者だ?』と聞かれた時、『友人だ』で押し通している。

 使用人が家人の友人を『怪しい』なんて失礼な事を言える訳がない。

 それを見越してナオミには彼女達を『友人だ』と言ってもらった。

 その作戦は理事長には通用しないだろう。

 しかし彼女らをここで解散させる訳にはいかない。

 だって、どこに行けば良いかもわからんだろうし。

 もしここで解散ならせめて異世界の俺の家まで連れて行きたい。


 「泊まっていきたいのはやまやまなんだけど、この女の子らを家に泊める事になってるから。

 俺がここに泊まったら、この女の子ら泊まるはずだったところまで辿り着けずに路頭に迷っちゃうから・・・」

 我ながら中々、良く考えられた言い訳だ。

 ぶっちゃけ、この屋敷には長い事いたくない。

 セキュリティが堅すぎるのだ。

 ワープする場面も、テイムビーストを呼び出す場面も、アイテムボックスからアイテムを取り出す場面も監視カメラにおさめられたくはない。


 だが、理事長はどうあっても俺を屋敷に泊まらせたいらしい。

 「『家』って尚美が住んでるあのボロアパートの事よね?」

 「そう、あのウサギ小屋みたいなあばら家」

 「人の家を容赦なくボロカスに言うわね!?」とナオミ。

 「岡田家の娘をあんなところに泊まらせる訳には・・・」

 「"住めば都"って言うじゃん?

 あんな事故物件で悪霊だらけ、ゴキブリだらけ、隙間だらけでセキュリティも最悪の、ここの犬山小屋より狭いアパートでも・・・」俺が言い終わる前に理事長が口を挟んできた。

 「彼女達を客間に案内なさい。

 山神さんも今夜は泊まっていきなさいな。

 学院の寮には私から外泊の連絡を入れておくから」理事長がナオミを睨み付けながら言う。

 「尚美、貴女なんてところに住んでるの!?

 貴女が入院した、って報告を受けた時は本当に肝が冷えたわよ!?

 入院した理由も、病名も不明って話だったけれど、そんなところに住んでたら病気にもなるわよ!」

 「未成年で一文無しの家出少女が借りれるアパートなんて選択の余地がなかったんです・・・。

 敷金、礼金なしで家賃が二万円だったから即決したんですよ」

 「貴女、学院の卒業式の後、家から制服のまま家出したものね」

 だから、クローゼットの中に学院の制服があったのか。

 その時に学院のジャージも持ってきたのかな?

 おかげで助かったけど、他に私服とか持って出ろよ。

 私服とか無さすぎだろ?

 おかげでジャージと制服で過ごしたじゃんか。

 確かにサイズは違うけど、俺より身体のサイズ大きいんだから、ジーンズとかあれば裾折って、ベルト締めれば履けただろうに。

 「まぁ良いわ。

 アパートの解約は明日って事で・・・」

 「ち、ちょっと待って下さい!

 あのー、えっとー、そうだ!

 職場から近いんです!」

 「そうなの?

 尚美、貴女、今どこで働いてるのよ?

 前の職場は入院しててクビになったのよね?

 因みに、岡田家の長女を入院するほどコキ使った挙げ句、退院したらクビにするような会社には然るべき制裁を受けてもらってますけど・・・」

 「何をしたんですか!?」

 「別に大した事はしていません。

 岡田家やその関連企業、取引企業、取引銀行に『取引禁止』を言い渡しただけで。

 あの会社はこの日本じゃ、やっていけないでしょうね」

 「これよ・・・。

 これが私が家出した理由の一つよ。

 『一端決め付けたら意見は絶対に曲げない』『一端"敵"と決め付けたら一切容赦がない』

 家にいる限り、お母様には逆らえない。

 逆らった者の末路を私は子供の頃から何度も見ている。

 自由に生きるためには私はここから逃げるしかなかったのよ」

 「逃げられる訳ないじゃない。

 家出後の貴女の行動なんて筒抜けだったのよ?

 貴女が六人部屋に入院しているのを知った時の私の怒りと言ったら・・・。

 あの病院を潰す手立てを練っていた時、貴女が意識を取り戻した話を聞いたのよ。

 まぁ、娘を回復させた功績に免じて、潰すのは許してやったけど。

 ・・・でもその岡田家の情報網を持ってしても、今の貴女の職場は掴めてないのよね」

 「そ、それは、最先端医療と最先端リハビリをしながらの仕事なのよ!

 かなり厳しい守秘義務ってモノがあるのよ!」とナオミは出任せを言った。

 「なら、しょうがないわね。

 貴女の身体の無事が最優先、その為なら多少の守秘義務には目をつぶりましょう。

 その代わり、帰れる時には必ず帰って来なさい」

 「ふぅ・・・」ナオミは何とか乗り切って安堵のため息をついた。

 「返事は?」と理事長。

 「は、はい!」背筋を伸ばしてナオミは大声で返事した。


 長い事家出していたナオミの部屋は一度掃除しないと使えないらしい。

 俺の部屋も今日いきなり準備は出来ないらしい。

 俺とナオミとベガとケイとカナと有末は客間に案内された。

 さすがに金持ち、別に六人一緒のタコ部屋というわけじゃない。

 俺とナオミと有末、ベガとケイとカナの二部屋に分けて二部屋の客間に案内された。

 一応、日本人と外国人で分けたんだろうな。

 言葉がわからなくてコミニュケーション取れなかったら気まずくなるし。

 実際にはケイは翻訳スキル持ってるから日本人とコミニュケーション取れるんだけどね。

 むしろベガは何故かそこそこレベル高いのに翻訳スキルを持っていない。

 というかそこそこレベル高いのに、戦闘力が異常に低い。

 一芸特化というか『薬師』としては他に類を見ないくらい優れてるんだけどね。

 ていうか、他に薬師がいない。

 唯一無二だ。


 ナオミは『母親の徹底した管理』を"家出の一つの理由"と言った。

 "家出の理由は母親だけじゃない"とも。

 『本当の家出の理由は双子の妹だ』と。

 しかし姉妹の仲が悪いぐらいで家出するだろうか?

 ナオミには話したくない"綾美との秘密"がある気がする。

 「家出した事と、綾美さんの適職『エクソシスト』と何か関係あるの?」と俺はズバリとナオミに聞く。

 「・・・あると言えばあるかな?」

 「随分歯切れが悪いね」

 「私が『霊媒体質』なのは知ってるわよね?

 私は存在するだけで霊を集めてしまうのよ。

 綾美は霊魂は集めない。

 でも双子だけあって部分的に体質は似ているのよ。

 綾美は霊魂を集めたりはしないけど、近くにいる霊魂を取り込んでしまうのよ。

 幸い今のところ、取り込んだ霊魂の中には悪霊はいないみたいだし、取り込んだはずの霊魂は不思議と消えてしまっていたみたいなのよ。

 綾美にエクソシストの素養があって、霊魂が浄化されていたのかも知れない、なんて言うのは今知った事だけど・・・。

 でもその時は思った。

 『私がいるせいで霊魂が集まってしまう。

 そのせいで綾美が悪霊に取り憑かれてしまうかも知れない』って。

 だから、私は家を出たのよ」

 「何でその事を綾美さんに伝えなかったの?」

 「綾美と私はとにかくソリが合わなかったのよ。

 顔を合わせたら喧嘩ばっかり。

 双子だからかしら?

 『同族嫌悪』に近い感情がお互いにあったのかもしれないわね。

 だから、まともに話し合えるとも思えなかったのよ。

 ましてや"霊魂が見える"なんて言って信じてもらえるとも思わなかった」

 「信じるわよ」俺達が会話する後ろから誰かが声をかけてきた。

 後ろを振り向くとそこにいたのは綾美だった。

 「私もお姉ちゃんほどじゃないけど霊感が強いのよ。

 お姉ちゃんに幽霊が集まるのも見えていたのよ。

 だからこそ、私から離れて『お姉ちゃんは大丈夫かな?』と思ってたのよ」

 「・・・それ、どういう意味?」とナオミ。

 「何故かは知らないけど、私に触れられた幽霊は光の霧みたいになって消えたのよ。

 しかも、何故か私がいるところには悪霊はイヤがって近付いて来ないのよ」

 「まさか、そんな・・・」

 「お姉ちゃんもしかして、私が悪霊に取り憑かれないのは偶然だと思ってた?

 悪霊は私から逃げていたのよね。

 だから私が近くにいる限り、お姉ちゃんも悪霊に取り憑かれる事はなかったのよ。

 でも、お姉ちゃんは私のいないところに行っちゃった。

 私がいなけりゃ悪霊も近付いて来るんじゃないかしら?・・・って思ってたら"お姉ちゃんが意識不明で入院した"って話を聞いたのよ。

 あぁ、やっぱりな、って思ったわよ」と綾美。

 何だ、姉は自分が霊を集めてしまう事で妹を心配して、妹は自分がいないと悪霊が逃げて行かない事で姉を心配していたのか。

 お互いを想い合う良い双子じゃないか!

 「綾美、部屋に入る時にはノックしなさいよ。

 相変わらずデリカシーがないわね」

 「お姉ちゃん、私だってわかったら絶対に居留守使うでしょ?

 ノックなんて出来る訳ないじゃない!」


 前言撤回、この双子相性が悪すぎる。

 相性が悪すぎるからお互い会話もしないで、すれ違いを生んだのだ。 

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