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リクルーター  作者: 海星
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五十話

 「何してたんだっけ?」と俺。

 「何か食材を手に入れようとしてたんじゃ?」とルイ。

 「『食材』?

 何のために?」俺は当初の目的をすっかり忘れていた。

 「わからない。

 何か『調味料を手に入れなきゃいけない』みたいな事を言ってた」とルイ。

 「そうだ!

 俺は何か調味料・・・そうだ!『カルダモン』を手に入れるために嫌々バイトしてるんだった!」

 「『カルダモン』?

 何か違う名前だった気が・・・」

 「そうと決まれば日本に戻ろう!

 ケイはこっちに残るよね?」

 「うん、別にそっちに用事ないし」とケイ。

 「うん、わかった。

 色々ありがとうね。

 小屋まで送って行くよ」

 「うん、よろしく」

 小屋に行くと意外な人がベガと共にいた。

 ナオミだ。

 「あ、ナオミさん。

 どうしたの?

 ネクロマンサークビになったの?」と俺。

 「そんな訳ないじゃない!

 一旦講習が終わったのよ!

 『ネクロマンサー養成講習』の仮免許取得ってところかしら?」

 「『仮免許』って事は『実地講習』が残っているって事?」

 「そうなのよ。

 ついては日本の私の部屋に行きたいのよね。

 あの部屋に憑いてる悪霊を従えに行きたいのよ」

 「『従える』?」

 「『ネクロマンサー』は『エクソシスト』と違って霊を浄化しないのよ。

 言ってみれば『霊とお友達になる』のよ」

 「つまりあの部屋に取り憑いてる悪霊とお友達になる訳か。

 丁度良かった。

 俺は霊感はサッパリないんだけど、夜中に『ラップ現象』って言うのかな?

 パキパキでかい音がして、うるせー、うるせー。

 霊と友達になったら言い聞かせてよ。

 『安眠妨害だ』って」

 「わ、わかったわ。

 でも怖くなかったの?」

 「別に安眠妨害以外何の実害もなかったからね。

 異世界で霊以上に恐ろしいモンスターなんてやたらと見てるから別に怖くはなかったよ」

 「図太いと言うか、なんと言うか・・・。

 それより早く日本に帰りたいわ。

 異世界も悪くないけど、文明社会が懐かしいわ」

 「それなんだけど・・・。

 ごめん!

 勝手にナオミさんの服着てた!」

 「それはしょうがないわよ。

 日本の服なんて全くないんだから。

 異世界の服は何て言うか・・・『アルプスの少女』って感じだし」

 「でもジャージもストッキングも沢山ダメにしちゃった・・・」

 「どの程度服をダメにしたか実際に見ないとわからないわ」

 「じゃあ、手を握って・・・」

 「杏奈、何か雰囲気変わったわね。

 前に手を繋ぐ時、もっと挙動不審だったわよね?

 『女性に免疫がない男子中学生』みたいな」

 「ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」

 「そんな事言ってないじゃない。

 さぁ、日本に転移しましょう!」

 そうかワープって言ってたが、『転移』って呼ぶのが一般的なのか。


 俺はナオミさんと『歌姫』の女の子と『踊り子』の女の子二人を連れて日本に戻って来る。

 しかし四人ひしめき合うとナオミさんの部屋は狭いな。

 「それはそうと杏奈は日本で何してるの?」

 「何って、アルバイトだよ」

 「何でまた?

 日本でお金が必要なの?

 異世界の料理が不味いから?」

 「料理は確かに不味いね。

 しかも調味料が高過ぎて種類が少ないよね」

 「それはしょうがないよね。

 異世界にいて実感したもん」

 「『実感』?」

 「異世界は『飢えないため』に食べ物を食べてるよね。

 誰も料理の味に文句を言わないもんね」

 「まぁ、俺が日本で働くのもそれと関係ある部分があるんだよ。

 俺が日本でアルバイトしてるのは『カルダモン』を買うためなんだよ。

 ・・・あれ?

 カルダモンだっけ?

 カイエンペッパーだっけ?」

 「そんなモンが欲しいの?

 じゃあ、少しは貯金あるからそこから『カルダモン代』出して良いわよ」

 「・・・俺は何のためにバイトしてたんだ・・・」

 最初からナオミさんに金を借りれば良かったじゃんか・・・。

 「まぁ、自分で何とかしようとすることは悪くはないわよ。

 これからどうするつもり?

 私はこの部屋に憑いてる悪霊を従えるわ。

 杏奈は『カルダモン』を買いに行くの?」

 「ナオミさんのお金はナオミさんがおろさないと。

 その中から借りるならアリだけど、人の口座から金をおろすのは違うよ。

 人の暗証番号を聞くのも違う」

 「私が『別に良い』って言えば構わないと思うけど。

 私だって誰にだってカードの暗証番号を教える訳じゃない。

 杏奈を信用して教えるのよ?」

 「それはありがとう。

 でも今回は他に用事があるから遠慮するよ」

 「『他の用事』?」

 「『歌姫』と『踊り子』達を芸能界デビューさせるんだよ」

 「何でまた?」

 「なんとなく。

 俺は、その子らが流行ったら『流行の仕掛け人』なんだよ!

 格好良いと思わない?」

 「別に・・・。

 だってその子らの曲作る訳でも、振り付けする訳でもないんでしょ?

 プロデューサーが注目される事は稀にあるけど、スカウトマンが注目される事は絶対にないわよ」

 「わかった!わかった!

 俺がプロデュースして、俺が曲書けば良いんだろ!?」

 「別にそんな事しなくても良いけど・・・。

 大体、注目されてどうするのよ?」

 頭に血が上った俺はナオミの話が聞こえない。

 かくして俺は四人組のガールズユニットをプロデュースする事になった。

 「『スピード』みたいな名前が良いよね。

 『猛スピード』って言うのはどうだろう?」と俺。

 「その名前はちょっと。

 いかにもパクりじゃないですか」社長に任命した角栄がダメ出しする。

 「そうか、じゃあ、『猛スピードと急ブレーキ』って名前はどうだ?」

 「その名前もちょっと・・・」

 「じゃあ『猛スピードと急ブレーキとハッピー&ブルー』って名前はどうだ?」

 その時、角栄は気付いた。

 『ダメ出しする度に名前が酷くなっていく』と。

 こうしてガールズユニットの名前は『猛スピードと急ブレーキとハッピー&ブルー』と決まった。


 「デビュー曲は『スピード』の『ボディ&ソウル』みたいな曲にしよう!」と俺が勝手に決めた。

 角栄は何故か俺に絶対服従だ。

 俺の言う事には『はい・・・』か『ハイ!』としか答えない。

 「わかりました。

 山田様の方針に従います」

 「じゃあ、曲名は『ヘッド&釜山港』ね!」

 「・・・ちょっと意味がわかりません」

 「だから、『ボディ&ソウル』みたいな曲にしたいって言ったじゃねえか。

 だから『ヘッド&釜山港』だよ!」

 「『ボディ』が『ヘッド』になるのは安直だけど、なんとかわかります。

 『ソウル』が『釜山港』になる理由が・・・もしかして、『ソウル』って地名だと思ってません?」

 「地名だろ?

 お前、そんな事も知らないのか?」

 「・・・わかりました。

 曲名だけじゃわかりません。

 何かの奇跡で凄い良い曲になるかも知れません。

 その『ヘッド&釜山港』の仮歌を聞かせてもらえませんか?」

 「まだ曲名しか考えてないんだよ。

 歌は明日までに考えておくからさ」

 「・・・わかりました」

 角栄は自分が芸能事務所の社長を引き受けてしまった事を後悔した。


 ~翌日~

 「歌詞を拝見しました」

 「どうだった?」と俺。

 「ほぼ『釜山港に帰れ』ですね」

 「おっ!

 それに気付いたか!

 そうなんだよ『釜山港に帰れ』にインスパイアされてるんだ」

 「・・・そうですか。

 それはともかく、ハミングの部分が多いですね」

 「元が演歌だからね。

 速く歌ったらあっという間に歌詞が終わっちゃうんだよ。

 だから空白の部分を埋めるようにハミングの部分が沢山あるんだ」

 「で、ハミングが『♪ライラ、ライラ、ライラ・・・』グループサウンズですか!

 ・・・まぁ、歌詞だけじゃわかりません。

 曲を聞かせて下さい」

 「曲は俺は書けないから、お前が何とかしてよ」

 「は?」

 「元信者とかで、ミュージシャンとか作曲家とかいないのかよ?」

 「いますけど・・・」

 「だったらその人に『ヘッド&釜山港』に曲つけてもらってよ」

 「わかりました」


 「社長、何で言いなりなの?」と凛火。

 「今までの流れを作ったのが山田様なんですよ。

 山田様には逆らえない仕組みになってしまっているのです」


 結果的に『猛スピードと急ブレーキとハッピー&ブルー』はメガヒットする。

 そしてガールズユニットは神速で改名する。

 ユニットには専属のプロデューサーがつく。

 プロデューサーは『ヘッド&釜山港』の作曲を担当した男だ。

 『ヘッド&釜山港』はデビューシングルのカップリング曲で幻の曲として二度と演奏される事はなかった。

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