エピローグ
先へ先へと続く道に、私は少しだけ不安になる。
このまま永遠に歩き続けなければいけないような気がして。このままどこにも行けないような気がして。
周囲は闇に包まれ、足元は固い土の道。
いくら歩いても変わらない風景に、私は自分が進んでいるのか、それとも立ち止まっているのか、わからなくなっていった。
いや、足はきちんと動かしているので、歩いてはいるはずなのだが。
「吞まれないように」
ふと、私の手を引いていた葉月さんが、生徒を注意する先生のような口調で言った。
私の手を握る左手がわずかに力を強める。
そこでようやく、自分の手が葉月さんの手から離れかけていることに気づいた。
「すみません。ちょっと怖くなって」
葉月さんの手をしっかりと握りしめながら言うと、葉月さんが気遣わしげな視線を送ってきた。
「ここは神力と妖力がせめぎ合っています。私たち妖でも流されてしまいそうになりますから、結奈さんは更に辛いでしょう」
でも、と葉月さんは微笑んだ。
「もうそろそろ着きますよ。神力の気配が強くなってきましたから」
その言葉に笑顔を返し、前を向いたとき。
数メートル先に、入口と同じような虹色の扉が見えた。――出口だ。
ホッと胸をなでおろして、扉の前に立った私たちは、その先に見える光景に息を呑んだ。
根元を残して折れ曲がった大木、月の消えた夜空、たたきつけるように降りしきる雪。
桃源郷の美しい景色はどこにもない。
現世よりずっと崩壊が進んだ世界に、私は思わず後ずさりしそうになった。
しかし、すんでのところで踏みとどまる。
私たちは、世界の崩壊を止めるためにここへ来たのだ。
怯んでいる場合ではない。
私たちは互いの存在を確かめ合うように、繋いだ手を握りなおす。
同時に踏み出した一歩は、迷いのない、力強い一歩だった。
第二章、これにて完結です。
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