愛しています(1)
完全下校時間前、私は走っていた。自習室から昇降口まで先生が通る廊下を避けて走り、靴を速攻で履きかえて、さらに校門を走り抜け、そうして到着したバスに乗りこんだ。
「ローファーでも走れるようになったんだ」
車内で息を整えながらタオルで汗を拭っていると、君が驚きの声を漏らした。
「誰かさんのせいでね」
「……神様か」
神様に会っている間、私たちは当然、学校を休んでいた。そのせいで駆け落ちしたとのうわさが広まった。冬休みを挟んだら大丈夫だろうとお昼をいっしょに過ごしてみたが、まだ私たちに興味関心の目線が痛かった。
今は教室で話しかけないようにし、生徒が少ない時間帯のバスで待ち合わせをしている。
「あのうわさなら、もう大丈夫だと思う」
「……東真、なんかした?」
「まあ、ちょっと」
詳しくたずねたかったが、先に口を開いたのは君のほうだった。
「よかったら少し話したいんだけど、このあと時間ある?」
「……いいよ。どっかお店に入る?」
「いや、行きたいところがある」
「遠くないよね?」
「降りてすぐだよ」
「よかったー。今日はもう走り疲れちゃった」
たはは、と私は笑ってごまかした。
本当は帰りたい。体育で走らされ、さっきも走ったばかりで疲れたし、汗の臭いも気になる。
だけど、ちらりと見た君の笑みには少し影があって。明日にしようって断るのが怖くて。
私は車内から茜色をした空を眺めていた。




