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【完結】わん・もあ・たいむ ~今度こそ好きだと言って~  作者: 佐藤朝槻
わん・もあ・たいむ 取り戻す春
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安心するまで、このまま


 濃霧注意報が発表された朝の登校中、私は妙に高揚していた。

 昨日まで見えていた人影や建物がまったく見えない。

 踊るように歩く。

 弾むように歩く。

 それでも薄暗い世界に私ひとり。たった、ひとり。


「これを解放感っていうのかな……!」


 しかし、スマホの向こうから君の声が聞こえた途端、我に返った。危険な行いであるという理解と最悪の想定、すなわち死への恐怖が脳内を支配して、今度は体から力が抜けて座りこんでしまうのだった。君の声がよく聞こえず、私が何を話しているのかさえわからず泣きじゃくった。

 しばらくして、突然の浮遊感。

 君にお姫様抱っこされていると気がついた直後、車の走り去る音で完全に正気を取り戻した。氷水でもかけられたように体の震えが止まらない。


「無事でよかった」

「……ごめん」


 その優しい声色にほっとしたのも束の間。

 君の鼓動が早く、落ち着かない。

「もう大丈夫」と私が言うと、降ろしてくれた。私たちは抱きあい、少しの間だけ、霧で閉ざされた世界で互いの体温を感じあった。


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Day17お題 濃霧

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