「人気ジャンルなら読まれる」――そう思って、ファンタジーの大海原に飛び込んだ。 そして溺れた
人気ジャンルなら、もっと読まれる。
私は、そんな甘いことを考えていました。
最近、ファンタジー作品にチャレンジしています。
理由は単純です。
もっと自分の作品を読んでもらいたい。
だったら、読者の多いジャンルに行けばいい。
異世界転生。
異世界転移。
剣と魔法。
ダンジョン。
冒険。
スローライフ。
領地経営。
投稿サイトを開けば、ファンタジー作品が次から次へと出てきます。
「人気ジャンルなら、自分の作品にも読者がついてくれるんじゃないか?」
そう思っていました。
……甘かった。
実際に書いて、投稿してみる。
すると――。
「あれ?」
思っていたほど、読まれません。
PVがゼロというわけではありません。
読んでくださる方もいる。
感想をくださる方もいる。
本当にありがたいことです。
ただ。
歴史やラブコメ、エッセイを書いていたときと比べると、明らかに反応が弱い。
そこで、ようやく気づきました。
人気ジャンルということは、
**読者が多い。**
でも同時に、
**読者に読んでもらいたい作者も多い。**
ファンタジーという大きな市場に、自分の作品を一つ置いた。
――ただ、それだけです。
その中から、
「これを読もう」
と思ってもらわなければならない。
タイトルを見る。
あらすじを読む。
そして、ようやく第一話を開く。
そこで、
「まだよく分からないな」
と思われたら、そのまま閉じられる。
次の話を読んでもらえる保証なんてありません。
ここで、私は自分の「ファンタジー観」を疑ってみることにしました。
私は昭和脳ですからね。
ロードス島戦記、大好きです。
長い旅をする。
仲間が増える。
少しずつ強くなる。
世界のことが、少しずつ分かってくる。
私は、そういう物語が好きでした。
でも、よく考えると。
私は物語そのものだけではなく、
**世界を知っていく過程そのものが好きだったんです。**
だから、
「最初は主人公が普通でもいい」
「世界観はじっくり説明してもいい」
「少しくらい話が動くのが遅くても、そのうち面白くなる」
そんな感覚で物語を作っていた。
主人公は苦労する。
失敗する。
少しずつ認められる。
そのほうが、その後の成功が気持ちいい。
私は、そういう物語が好きです。
だから、物語にも「助走」を求めていた。
でも。
ここに落とし穴があったのかもしれません。
**読者として好きな「助走」と、作者として最初から読ませるための書き方は、同じではない。**
文庫本なら、多少序盤がゆっくりでも、
「まあ、この先が面白くなるんだろう」
と思って読み進めることがあります。
すでに本を手に取っているからです。
でも、Web小説は違う。
一話読んで、
「まだよく分からないな」
と思ったら、その場で閉じられる。
そこで、かなり大事なことに気づきました。
**「そのうち面白くなる」は、作者には便利でも、読者には約束されていない。**
作者は、この先に何が起こるか知っています。
だから待てる。
でも読者は知らない。
だったら。
最初の段階で、
**「この先を読んでみたい」**
と思ってもらう必要がある。
そこで、人気作の読み方を変えてみました。
それまでは、
「面白いな」
で終わっていました。
今は、
「なぜ面白いんだろう?」
「なぜ、ここで続きを読みたくなったんだろう?」
「この設定は、次の何につながっているんだろう?」
そう考えながら読む。
例えば、最近読んでいる『ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を〈はじめから〉プレイする~』。
ゼフィルスには、ゲームをやり込んだことによる知識があります。
その知識がある。
だから有利に動ける。
すると、
「その知識を次はどう使うんだろう?」
と期待できる。
つまり、
**設定が説明で終わっていない。**
設定が、そのまま次の行動への期待になっている。
もう一つ気になったのが、
『【悲報】お嬢様系底辺ダンジョン配信者、配信切り忘れに気づかず同業者をボコってしまう~けど相手が若手最強の迷惑系配信者だったらしく動画がアホほどバズって伝説になってますわ!?』
です。
カリンお嬢様が強い。
その強さが配信で広がる。
周囲が騒ぐ。
その騒ぎが、また次の展開を生む。
ここでも、
**「設定がある」では終わらず、「だから次に何が起きる?」につながっている。**
人気作では、設定が次の行動を生んでいる。
対して。
――じゃあ、自分の作品はどうなんだ?
実際に、自作の第一話を読み返してみました。
今度は作者ではなく、読者のつもりで読む。
すると――。
いきなり見つかりました。
設定の説明。
世界の説明。
主人公が置かれている状況の説明。
作者としては、
「必要だから書いた」
と思っていました。
読者にも分かってほしい。
だから丁寧に説明した。
そのつもりでした。
ところが。
読者のつもりで読み返してみる。
頭の中に出てきた言葉が――。
**「で、この主人公は何をするの?」**
でした。
……あれ?
主人公の目的は、ちゃんと考えてあります。
この先どういう物語になるのかも、私は知っています。
でも。
第一話を読んだだけでは、それが十分に伝わっていない。
作者である私は「分かっている」。
でも、読者には「分からない」。
ここで、かなり嫌なことに気づきました。
私は、
「読者が理解できるように説明している」
つもりだった。
でも実際には、
**「作者が知っていることを説明している」**
だけだったのかもしれません。
しかも。
説明しているあいだ、主人公自身がほとんど前に進んでいない。
設定を説明する。
背景を説明する。
世界のことを説明する。
その間、物語は止まっている。
……そりゃ、
「で、この人は何をするの?」
になりますよね。
自分で読み返しておいて、
「これはきついな……」
と思いました。
そして、次に第一話の最後を見ました。
普通に終わっている。
文章としておかしいわけではありません。
物語として成立していないわけでもない。
ただ、
「ここで次を読みたい」
と思わせるほど強いものがあるかと言われると――。
弱い。
かなり弱い。
私は「一話を書き切る」ことに集中していました。
でも読者からすれば、
「ここまで読んだし、今日はここでいいか」
で終われる。
ここで、また気づきました。
**「一話を完成させること」と、「次の話を読ませること」は別なんだ。**
私は、一話を終わらせることをゴールにしていました。
でも読者にとって重要なのは、
「終わったかどうか」
だけではない。
その先に、
「次はどうなるんだろう?」
と思えるかどうかです。
人気作を読み返してみると、話の終わりには、続きを読みたくなる何かがあります。
形はさまざまです。
でも、最後には、
**「このあと、どうなる?」**
という気持ちが残っている。
だから、次の話を開く。
これが「引き」というものなのかもしれません。
そして。
ここまで気づいてしまうと、もう止まりません。
主人公の「すごさ」の見せ方まで気になってきました。
自作には、主人公が活躍する場面があります。
本人としては、かなりすごいことをやっている。
でも。
周囲の反応が薄い。
主人公が何かをする。
「できました」
「そうですか」
――終わり。
いやいや。
そこはもう少し驚いてくれよ、と。
作者としては、
「これだけすごいことをやったんだから、読者にも伝わるだろう」
と思っていました。
でも、読者は作者の頭の中を読んではくれません。
主人公が何かをやる。
その結果、誰かが驚く。
感心する。
頼る。
態度が変わる。
そこで初めて、
「この主人公、そんなにすごいのか」
と読者にも伝わる。
主人公自身が、
「俺はすごい」
と言うより、
「そんなことができるのか?」
と周囲が驚くほうが、ずっと自然です。
――そして、自作にはそれが足りない。
人気作を見る。
「なるほど」
と思う。
自作を見る。
「……できてないじゃん」
また人気作を見る。
「なるほど」
自作を見る。
「……ここもか」
研究するたびに、自分の作品の弱点が増えていく。
だんだん笑えてきます。
でも。
これは悪いことではないのかもしれません。
何となく、
「読まれないなあ」
と思っているだけでは、何も直せない。
でも、
「主人公の目的が伝わっていない」
「説明しているあいだ、物語が止まっている」
「第一話の最後が弱い」
「主人公が活躍しても、周囲の反応が薄い」
と分かれば、直せる。
少なくとも、
「何が悪いのか分からない」
という状態からは抜け出せます。
……ここまで研究して、ようやく少し分かってきました。
私が人気作から学んだのは、
**「読者の頭の中に、次に知りたいことを残す」**
ことの大切さです。
人気作では、
設定が次の行動を生む。
主人公が動く。
結果が出る。
周囲が反応する。
そして、次の展開につながる。
一方、自作では。
説明する。
説明する。
主人公が動く。
普通に終わる。
……うん。
これは、反省したほうがいいですね。
もちろん、私は「じっくり味わうファンタジー」を捨てるつもりはありません。
ロードス島戦記が好きなのも変わりません。
世界観を楽しみたい。
旅を楽しみたい。
少しずつ仲間が増えていくのも好きです。
ただ。
**読者として好きな「助走」を、作者として最初から要求してはいけない。**
そこは分けて考えたほうがいい。
自分の好きな物語を捨てるのではなく、
その魅力にたどり着くまでの入口を、Webで読まれる形にする。
今は、そんなふうに考えています。
だから、人気作の研究も、
「人気作を真似する」
ためではありません。
**自分が何をできていて、何ができていないのかを知る。**
そのためです。
そして今回、かなり嫌なことも分かりました。
私の作品は、
「ファンタジーだから競争が激しくて読まれない」
だけではなかった。
ちゃんと、自分で直せる弱点がある。
だったら、まだやれます。
たぶん、これからも、
「うわ、これは弱いな……」
というところが出てくるでしょう。
でも、それでいい。
少なくとも今は、
「ここが弱い」
と自分で見つけられる。
そのほうが、何となく悩み続けるよりずっと前に進めます。
そして。
ここまで研究したなら、次はもう逃げられません。
自分の第一話を、実際に解剖してみます。
タイトルやあらすじだけではありません。
冒頭から読み返して、
主人公はいつ動くのか。
目的はいつ伝わるのか。
説明はどこまで続くのか。
主人公が活躍したとき、周囲はどう反応しているのか。
そして最後に、
**「ここで読者は、本当に次の話を開くのか?」**
を見る。
人気作を研究した結果、
「なるほど」
と思っていた私が、
自分の第一話を開いて、
**「……できてないじゃん」**
となった。
では。
実際に、どこがダメだったのか。
次回は、自作第一話の解剖です。
作者本人が、作者の文章にダメ出ししていきます。
……さて。
私の第一話には、本当に、
**「もう一話読ませる力」があるのか。**
次回、実際に切ってみます。
……たぶん、かなり怖いことになりそうです。




