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149 太陽の下のノスフェラトゥ

 顔面を撃たれて死んだロバートを残し、ベルやアウトロー達は草馬に乗った。

 残酷だが、墓に埋めてやる時間もない。


 ベルはジョンを自分の馬の後ろに乗せたがったが、大怪我を負っている彼女を説き伏せ、俺がジョンを俺の馬の後ろに乗せる事にした。

 たまに振り向いて様子を見てやらないと、ジョンが馬から落ちる危険性があったからだ。

 ジョンは走って揺さぶられるたび、熱で何か浮ついたようなことを口にしていた。


 2つの月が沈み、2つの恒星が昇ろうとしている。


 この惑星の太陽は、テラフォーミングをしても黄土色の荒野しか育たない。

 検索したら惑星全ての動物は、光合成する能力を備えた半植物性動物だらけだった。


 俺は馬に揺られながら、宇宙服を貫通したオーロットの弾丸が服の内部機構によって、麻酔の効果下で取り出されるのを感じていた。

 『生きる宇宙服』のキャッチコピーで売られてるやつで、宇宙服の内面の生体膜が傷を感知して塞ぐ他、生体膜が自在に伸びて装着者の治療をも行う。

 荒事をやる稼業に、ムラシマがだしたブランド品だ。ちょっとやそっとでは死なないように機能する。

 問題なのはベルだ。肩だけでなく上半身を血に染めて、馬が上下するたびに青い顔を更に青くしている。息子を取り戻した精神力で持っているのだろう。


 枯れた大地に光がさす頃には、町につく。

 そこには医療ポッドがあるはずだ。


 俺は何故かオーロットの不気味な顔を思い浮かべていた。

 オーロットはくたばったが、アスマン人といい、ブラッドクルスの動く死体といい、この銀河がどうとは言わないが、どこか科学や常軌を逸している。


「おい、街が!」

 ハリーが前方を指さすと、町から煙が上がっている。爆発音が聞こえた。

「くそったれ。何なんだ!」

 ヴァンDが悪態をつく。

「ブラッドクルスに違いない。報復に出たのだろう。」

 ムスカが静かに推理した。

「このまま走るぞ!」

 ベルが命令したが、声が弱々しい。

「虎穴に入らずんば、というやつだな。」

 俺は独り言の様に呟くと、自分を鼓舞するように草馬の細い身体をヒールで軽く蹴った。


 宇宙港のある所は栄える。

 その活気は今や、阿鼻叫喚の修羅場と化していた。

 赤い十字のあるズタ袋を被った奴等が、建物や人めがけてダイナマイトを投げている。

 ブラッドクルスが町を破壊しに来ているのは明白だった。

 町につどった保安官達が、ならず者と戦っているも形勢は悪いようだ。


 そんななか、燃える建物を前に禿頭の男が立っていた。昨夜見た光景と似ている。

「!?」

 リコが声にならない悲鳴をあげた。

 死んだはずのオーロットだ。

 俺はアウトロー達とアイコンタクトをとった。

 ビビる事が起きても、皆それなりには経験がある。

「ベル。あんたは息子を連れて病院へ向かってくれ。ドク、処置を頼む。俺達は化け物を退治してくる。」

 俺はラコン・ブラックマンバを抜いた。


 オーロットと対峙する。

 

 ブラッドクルスに殺された市民の死体の首元に牙を突き立て、血を啜っていたオーロットだったが、俺の姿を見て死体を放り投げてみせた。

「よう、モスキート。地獄に落ちたんじゃないのか?」

「アスマン人として真っ当に生きてきたこの私が、地獄に落ちるわけがないだろう。」

 オーロットが口周りの血を袖で拭いてみせた。

「知ってるか?吸血鬼は太陽の下じゃ、灰になるんだぜ?」

 俺が軽口を叩くと、オーロットはニヤリと笑った。

「ブラム・ストーカーの小説にはない描写だな。」

 ああ、そうかい。

 俺は感想を飲み込むと、先手必勝でウェーブ銃を構えた。


 作戦はこうだ。


 俺がオーロットを引きつける間に、ハリー、ヴァンD、ムスカ、リコが側面から集中砲火を浴びせる。

 単純だが、単純ゆえに最も効果が期待できる。

 昨夜と違って、オーロットの手には何もない。

 殺れるはずだった。


 オーロットは縦に宙を飛んで、俺の光弾を軽々と避けた。

「!?」

 ムスカの弓やリコの狙撃まで避けると、オーロットは俺に空中から掴みかかってくた。

 恐ろしい膂力りょりょくで俺の首の骨を折ろうとしてくる。

「うっ!」

 時計回りの回転で頭をねじ切ろうとする動きに、俺は逆らわず咄嗟に身体をターンさせた。

「ほう?」

 感心するオーロットに、俺は銃口を真上に向けて発砲する。

 弾は確かにオーロットの胴に当たっているが、効いてる素振りもない。

「無駄だ。私には銃や超能力は効かんよ。」

「なら、これはどうだ!」

 俺は素手でオーロットの頭を持つと、地面に頭部を叩きつけた。

 オーロットを掴んだとき、変な感触があった。

 スイカみたいにモノの詰まった頭が、軽い。


 瞬間、俺はアスマン人についてネットで再検索し、詳細検索で更に深く知ろうとした。

 アスマン人の特徴に俺は納得する。


 俺は昏倒するオーロットもどきの頭部に光弾を何発も撃ち込んだ。

 肩を掴んで思い切り引き剥がすと、肩から上が取れる。


 アスマン人はおおよそ肩から上しか本体がない。

 犠牲者の胴体に張り付いて、犠牲者の頭を本体とすげ替えて活動する寄生生物型の人間だったのだ。

 つまり、頭を撃たなければ意味がない。

 映画では銃でまず頭を狙うこともあるだろうが、銃撃戦では当たる範囲の広い胴体を狙うのが普通だ。

 昨夜、俺たちはセオリー通り胴体を狙って撃った。それは、運動神経を乗っ取られた犠牲者の死体に穴をあけたに過ぎない。

 もう一つ。

 アスマン人は同じアスマン人であれば記憶を共有する性質がある。個々に人格を持っているのではなく、群体で人格を共有している稀有な種族らしい。

 アスマン人が複数いて、昨夜倒したオーロットの記憶を手に入れて復讐にでも来たのだろう。


 未知の恐怖は理屈を知れば、それがどんなにぶっ飛んでいても頭脳は納得する。


 ということはブラッドクルスの連中も何らかの理屈があるに違いない。死体を操るアスマン人の技術によるものだろう。


 落ち着いて周りを見ると、ハリー達は集まってきたブラッドクルス達と撃ち合っていた。

 俺は癖で片目を閉じると、銃をくるくると回しながら加勢に走った。

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