013 姫様はじめました ~Little Bitch Girl~ 2
このちっこい可愛い生き物は――フィリアのミニチュア版はその見た目でも分かるとおり、実の妹でルーチェと言うらしい。
年齢は――ほう、今年で十六歳になるのか。つまり前世の人間で言えばJKに当たる訳だな……っていうか前世のオレと数歳程度しか違わないですと!? 今はアウトでもフィリア同様、数年後には合法ロリ確定ってことになりそうだな……。
それは兎も角――この小さな妹ルーチェをラテア兄ィはフィリアと同じくらい溺愛しており、そしてフィリアたちもまた溺愛しているようだが――どうやらオレもその中の一人になってしまったらしい……。
「ね、姉、さまぁ……く、苦しいよぉ……!」
それにしてもまあ、ルーチェ可愛いよ。可愛いすぐる! ああっ、なんて愛おしいんだ。はぁはぁはぁはぁっ……。
ダメだもう堪えられん。もうこのまま褥台までお持ち帰りして……いやそんなのまだるっこしい。今すぐこの場で邪魔なドレスを剥ぎ取って、全身ナメナメしまくりたい……!!
「る、るー……い゛っぐぅっ……し、しんじゃう゛ぅ~~――!」
「もう辛抱堪らん!」
フィリアがルーチェを押し倒そうとした、まさにその時――
「おイタが過ぎますよ、フィリア様!」
バシッ!
「……ッ!」
バシッ!
「痛っ――!?」
バシッ!
「……痛いっつーの!」
ホノカに三度も頭を叩かれたフィリアはルーチェから手を放し、その両手で自分の頭を押さえつけた。
「フィリア様。正気に戻られましたか?」
「……ハッ、私としたことが、なんてことを!」
間一髪でオレは正気を取り戻した――って、あれ? なにこの既視感……!?
いやぁ、ヤバかった!――どうやらフィリアは、ルーチェの魅了にうっかり掛かってしまい、催淫状態に陥っていたようだ。
で蛇っ子メイドのホノカが例のごとくその足元の、スカートの中から伸びたその蛇尻尾のツッコミで止めてくれたっていうワケだが……っていうかキミさ――
どうしてずっと静観を決め込んでいたの?
なんでさっさと止めてくれなかったの?
口元がニヤけているのはなんで?
三度も叩く必要があったの?
こほんっ……御覧になったようにルーチェの魅了もなかなか強力らしい。
フィリアの場合は体臭に特化しているが、ルーチェの方は眼差しで――つまり視覚による【魅了】効果が突出しており、フィリアと同様に……まだ幼い為にその能力を上手く制御しきれていない点、同性たる女性淫魔さえも惹きつける点なども同じだ。
淫魔は異性同士では中和特性が作用する為、互いの魅了に掛からない――という特徴のあるこの中和特性能力は、本来であればフィリア自身も持っているし、男女無差別なルーチェの魅了にも掛からない筈なのだけど……。
中身の方の意識が男だったからなのか、単に寝たきりの影響で体調不良だったからなのかは定かではないが、ルーチェの魅了にあっさりと陥落してしまった訳である。
なおこの魅了効果は、通常は作用する持続時間は短く、軽い衝撃で正気に戻ってしまう程度のものでしかないが……成人淫魔――中でも傾国傾城級サキュバスともなると、種族も性別も関係なく半永久的にその効果を持続させられるのだとか。
ま、つまり我ら姉妹はそんな希少な傾国傾城級サキュバスの卵っていうことになるワケだな。
とは言えこの厄介な体質の姉妹の場合、即効性効果に関しては強力だが、他の淫魔と同様に持続時間は短い為、今のところそこまでの脅威にはなっていない。
それでも尚、この姉妹の魅了に引っ掛かる者が毎日のように後を絶たない為、常に我ら姉妹の界隈では、頭部を叩くツッコミが必須の日常風景と化している……らしい。
★★★LAST-PRINCESS or LUST-PRINCESS★★★
「ホ、ホントごめんね――ルーチェ……?」
完全に正気に戻ったフィリアはちっぱいに埋もれていたルーチェを引き剥がして、その顔を覗き込むと――
「はぁはぁっ……苦しかったぁ――ね、姉さまはぁ、正気に戻られたのですね?」
「う、うん。なんとか、ね……」
ほっ、良かった。どうやらルーチェも無事なようで安心した――このちっさ可愛い妹は、幸いまだ毒牙に掛かっておらず、開発されていない綺麗な体なのだ。
だと言うのに危うくフィリアは、こんな純情無垢な妹に百合百合エロエロな新しい世界を教えてしまうところだったワケで……。
「あらっ? 姉さまの眼……?」
またこのパターンか――ルーチェは被っているボンネットをずり降ろして目深くしつつ、こちらをチラッと窺うように見つめた……ほう、なるほど。おそらくああやって魅了の発生源である自らの眼を、いつでも即座に隠せるようにする為、ボンネットを被っている訳だな。
「話には聞いてはいましたけどぉ、今度の姉さまはホントに虹彩異眼なのですねぇ!」
「ははははは、まあね……」
「三番目の姉さまの虹彩異眼は、とっても綺麗で素敵なのですぅ」
おおうっ……ズバッと言ってきちゃったよ、このコってば。やっぱ子供は正直だなぁ。
「あっ……もうっ、ルーったらダメね――!」
ハッとして何かに気が付いたルーチェは立ち上がると、フィリアから数歩下がった。
自らのスカートの裾を両手で摘まみ、ふわっと持ち上げて、腰と膝を曲げて頭を下げ――
「はじめまして。三番目の姉さま……タリア大公家次女、ドルチェミエーラ=ドルメ・S・ラ・タリアと申します。以後お見知りおきを」
とおしゃま態度で優雅に淑女の礼でお辞儀したのであった――おおっ、か、可愛い。お姫様や! ホンモノのお姫様がここにおる!……いやいや呑気に感心していちゃは駄目だろ。
よーしっ、こっちも……フィリアも負けてはいられない――
「こちらこそ、はじめまして。愛しの小さき妹よ……三番目のフィリアです。以後よしなに」
とフィリアも対抗して、優雅に淑女の礼でお辞儀を返してみた――ふっ、どうよ上手く決まったぞ。
だと言うのに――
「ぷぷっ……フィリア様。そのドヤ顔っぷり、お見事です」
「だまらっしゃい!」
ずっと背後に控えたまま、澄ました表情で物言わぬ飾りと化していたホノカが、水を差すようなツッコミを入れやがった――っていうかなんでオレは、ノリノリでお姫様プレイをやってんだよ!
「ところで三番目の……いいえ虹彩異眼の姉さま――」
『虹彩異眼の姉さま』ね――そう来ましたか……妹よ、その上目使いなチラ見の目線が堪らなく可愛い過ぎるから、あまりこっちを見つめないで!
「スミレ色の姉さまとハシバミ色の姉さまは、ご壮健でいらっしゃいますかしらぁ?」
ルーチェ、我が妹よ。可愛い妹よ――
(心配してくれて有難う。私は至って元気よ)
(はーい、あたしも元気だよー!)
「……ええ、まあ、元気みたい、よ?」
無視無視!――雑音は無視の方向で!
「そうですの――よかったぁ!」
ルーチェは飛びつくようにして、ガバッとフィリアのちっぱい目掛けて抱き着いて来た。
うおーっ、堪らん。可愛いよルーチェ、マジ可愛いよ……はぁ~、心が和んで癒される。
気が付くとフィリアも全力で抱き返していた――あれ? この流れってまさか……。
「はっ!?……フィリア様、それ以上はいけません!!」
(マズいわ!――早く能力を抑えて!!)
(アタマの中でスイッチを押すイメージ、だよ!)
フィリアは慌てて腕の中のルーチェを引き剥がして、その顔を覗き込むと――ってまたこのパターンなのかよ……。
「姉さまの、匂いがぁ~……きゅ~~ん――」
ガクンッ――フィリアの体臭で匂い酔いして、ルーチェは酩酊状態になっていた……。
★★★LAST-PRINCESS or LUST-PRINCESS★★★
フィリアの体臭の匂いに酔ってしまったルーチェは、幸いすぐに正常に戻ってくれたから良かったけども……。
ルーチェはまだ幼くて性的には未成熟なので、フィリアの魅了で大人のように発情することはないが、中和特性能力の制御もまた未熟なせいで、フィリアのように強力な匂いを嗅ぎ過ぎると酩酊してしまう訳だ。
これは例えるならば、まだ酒の味を知らない未成年に、いきなり飲ませて急性アルコール中毒にさせてしまうようなものなのかな?
確かにフィリアは自身の体質を制御出来ていなかったが、これは全く出来ない訳ではない。
ある程度は意識すれば、能力を抑えることが出来るようだ……実際この姉妹がよく一緒にお風呂に入っている情景も記憶にあるしな。はて? そこにもう一人いた気もするが、あまり深く考えてはいけない。
新米フィリアたる自分の場合、オレの精神がこの体にまだ慣れていなかったせいで、この時は普段以上に体臭がダダ洩れ状態になってしまったらしい……。
でその制御法についてなのだが――
あの時、心の中で聞こえた雑音に言われるがままやってみたら、無事制御出来たので事なきをえた。もっともその助言の内容も――
「ちょ……スイッチを押すイメージって、一体どうすれば?」
(考えちゃダメ! 心で感じるんだよ!!)
「えっ、考えるな? 心でって……理力? 功夫?」
(呼吸ですわ。吸って吸って吐くのタイミングよ……さあ、早くやって!)
「呼吸だな?……よしっ、ヒッヒッフー……ヒッヒッフー……ヒッヒッフー……ヒッヒッフー……ヒッヒッフー……ヒッヒッフー……――」
とか言う極めてアバウトな指導であったが――そもそも冷静になって考えてみれば、『ヒッヒッフー』ってなんなんだよ?
何はともあれ制御法を完全に体得したお陰で、フィリアも愛妹と一緒にお風呂に入れるようになったっていう訳だ。いやぁ、よかったよかった。
因みにルーチェの視覚の魅了に対しても、同様の方法で中和出来るし、この呼吸とやらも慣れれば無意識のうちに、自然と出来るようになるらしい……。
一方。正気に戻ったルーチェはプンスカと、かなりおかんむりのご様子だった――フィリアはひたすら謝りまくったのだが、今泣いた烏がなんとやらで「あとで一緒に遊ぶ」ことを約束したらあっさりと許してくれた。
ああ、やっぱルーチェは可愛いなぁ。和むわ~……っと、いかんいかん気を緩めたりしたら、また魅了が発動しちまうな。ヒッヒッフー……ヒッヒッフー……ヒッヒッフー……。




