表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
最強はだれだ!?王位決定戦!
88/88

私、女王になりました!もうポンコツなんて言わせません!

最終話です!

 王位決定戦を私とルル様は優勝し、ルル様は晴れて女王となった。

 体力が回復してきたリリとトトちゃんが立ち上がる。


「あたしたちが負けるなんてね…負けるのがこんなに悔しいとは思わなかったわ!」

「リリ殿。また三年後の王位決定戦でリベンジしましょうぞ」

「…そうね!それまで鍛え直すことにするわ!」


 リリとトトちゃんが笑顔で手を差し出してくるので、私たちも握手し返す。

 するとまた観客席から盛大な拍手が鳴り響いた。




 こうして長い長い大会が終了し、翌日。

 ルル様の女王即位は好意的に迎えられ、パレードもつつがなく終了した。



 それから数週間。

 元王様に賭けていた観客の列が連日城へと続く奇妙な光景が広がっていた。


 ルル様が優勝した場合、王様に賭けていた金額を返金するという約束事をしていたからだ。


 その金額は0がいくつあっても足りないような額だったのだけど…

 私たちは自分自身に大金を賭けていたので、その優勝賞金でギリギリ賄うことができた。



 私たちは最低オッズの名に恥じない、国家予算並みの大金を手にしていたのだ。


 そんなこともあり城の従業員総出で返金処理を行い、穏やかな日々が戻ってくるにはかなりの時間を要した。





 その間にも皆それぞれが違う道を歩み始めている。



 実況・解説をしていたうっちーと魚ちゃんは、大会で強かった選手の何人かに声を掛け、大海賊団に数人スカウトできたようだ。


 あの剣帝や、ラッキー二人組も入団したらしい。

 中でも剣帝の入団はうっちーにとっては大収穫だったようで、わざわざ城まで報告に来てくれた。


「すごくない!?あの剣帝がうちに入ってくれるなんてさ!」

「そうですね。戦力アップは間違いないでしょう」

「うんうん。これで大手を振って帰ることができるよ。あ。そだ。リリちゃんはどう?入団して一緒にお宝探しのロマンを追い求めない!?」

「ふふん。遠慮しておくわ!面白そうだけど、お姉ちゃんのことが心配だからね!」

「そっかー。残念!」

「うっちー。そろそろ時間うお」

「オッケー。それじゃみんな!まったねー!」

「さよならです!」


 うっちーと魚ちゃんとはまた三年後の王位決定戦で会えるだろう。




 そしてそのお姉ちゃん心配性のリリは、試練の逆さ塔でまた最高記録をあっという間に更新したようだ。


 まだ誰も到達したことのない150階。その大ボスの黒龍を無傷で攻略したらしい。

 一時トップだったギギ王子もこれには苦笑いだった。


「ふ…短い栄誉だったな」

「トトが憑依した状態でも試練の逆さ塔に入れるとは思わなかったわ!ちょっとズルいかもしれないけど、二人で逆さ塔を攻略するのはとっても楽しいわね!」


 試練の逆さ塔は本来一人でしか中に入ることはできない、言わばソロ専用だけど、トトちゃんの憑依状態でも一人としてカウントしてもらえたようだ。


 おかげでリリは最速、最高記録を打ち立てることができた。

 これからもどんどん記録を塗り替えていくだろう。




 そしてルル様のお姉さんであるネネ王女は…ギャンブルにドハマリしていた。


「見なさい!この大金!また国の予算を増やしてきてあげたわよ!」

「ネネ様。また出禁になっても知りませんよ」

「そこは抜かりないわクロネ。ルルから変身できるアイテムを借りているの。だからギャンブルするたびに顔を変えているわ!」

「…ルル様?コルナさんに貰った変身できる葉を貸したのですか?」

「はい。だって初めてネネお姉ちゃんに頼られたんですよ!仕方のないことです!」

「まったく…」


 ネネ王女は大会を通じて未来予知に磨きがかかったらしく、その能力を利用して賭場を荒らしに荒らしているらしい。


 しかし勝ちすぎたせいですぐに賭場関係のブラックリストになったネネ様は、困り果てた末ルル様に相談し、ルル様はコルナさんに貰った「変身葉っぱ」を笑顔で貸したと。


「ルーさん。ネネ様を止めてくださいよ」

「あら。私に賭け事を教えてくれたのはルーよ?」

「「………」」

「あははー。これぞ適材適所なのですよー」


 全く悪びれていないルーさん。

 大会の時にも思ったけど、自由な人だ。


 でも、稼いだお金は城にすべて入れてくれるので、それはありがたい。




 ルル様のお兄さんであるギギ王子はリリに対抗意識を燃やし、本格的に試練の逆さ塔へ挑戦している。


 そしてそこで手に入れたアイテムはネネ様同様城に入れてくれている。

 ギギ王子曰く、自分が強くなるためのアイテム以外はすべて不要とのこと。




 あと、新くんとおじいちゃんもこの国に残ってくれていた。

 なんでも人間国は面倒ごとが多いから、こっちのほうが気楽に過ごせるとのこと。


「魔法使いだからとバカにされることもなくなったからのう」

「そうですね」


 王位決定戦で魔法が活躍した場面も多かったので、おじいちゃんのようにザ・魔法使いの格好をしていてもゴミを投げられなくなったのだ。


 これからは魔法使いの地位も徐々に上がっていくだろう。




 そして肝心の私は…王の護衛というまんまな役職についている。

 主な仕事はルル様の補佐。つまり今までと何も変わらない。


 ただ…この国の王の仕事は私の想像していたものではなかった。

 王位決定戦の数週間後…私とルル様は元王様…テオ様に仕事内容の説明を受けることに。


「いいか?主な仕事は体を鍛えることだ。午前中は筋トレ。午後は騎士団の特訓に混じるか、試練の逆さ塔に潜るかのどちらかだな」

「「え…」」

「もちろんしっかり休みを取ることも大事だ。王にとって一番大事なことは健康であることだからな」

「あのー。書類仕事とかは?」

「そんなものはないぞ」

「国会に出たりとか」

「国会?なんだそれは?」

「えーと、国民の代表者同士で話し合いをする場…?」

「ないぞ。十傑会議はあるけどな!」

「「十傑会議?」」

「最強の十人で話し合う会議だ」

「ああ…」


 当たり前だけど日本とは全然違うね。

 こっちのほうが楽しそうではあるけど。


「ともかく、有事の際を除けばこれといった仕事はない。自分の好きなことをするとよいだろう」

「自分の好きなこと…ですか」

「ああ。時間はたくさんあるのだ。ゆっくり考えることだな」


 ちなみに私のお勧めは筋トレだ。そう言ってテオ様はいなくなった。


 その日は時間も遅くなっていたこともあり、部屋に戻ってお休みすることに。


 …そうそう。部屋もかなり大きくなった。

 これまで暮らしていた部屋の三倍以上の大きさだ。

 そして、私もその部屋で本格的に暮らすことになった。今までもルル様の部屋に入り浸っていたけどね。


 理由は王様の暗殺は夜って相場が決まっているからだ。

 護衛として、常にルル様の傍にいなくてはいけないのだ。


 パジャマに着替えて、二人でベッドに潜り込む。


「ふはぁ。今日も疲れました~」

「慣れないことが続いていますからね。お疲れ様です。…それはそうと、自分の好きなこと、決まりました?」

「はい!歩いている途中にずっと考えていました!」


 おお。ルル様えらい!


「それで、何をするのですか?」

「えとですね。街に出て、人々がどんな暮らしをしているのか、どんなことに困っているのか、何を望んでいるのか…自分の目で見て、解決できることはしていきたいです!」

「ほう。いいんじゃないですか?」


 想像していたよりまともな意見だった。いや、ルル様らしいのだけれど。

 もっとポンコツな意見が出てくるものだと思っていた。


 しかし王様がそんな簡単に外へ出歩いてもいいのだろうか?

 …いいのか。私の常識はこの国では通用しないのだ。


 私だけでは心許ないけど、リリにも護衛をしてもらえれば安全も確保できるだろうし。


 そんなわけでその日はリリの部屋にお邪魔して、一緒に街を散策してほしいとお願いすると快諾してくれた。




 そして翌日。

 私たちは四人で街を散策していた。


「お姉ちゃんが王になっても結局この四人で遊ぶのね!」

「遊びじゃないですよリリちゃん!民の生活を見守る立派なお仕事なのです!」

「物は言いようですね」

「およ。あちらで喧嘩が起こっていますぞ」

「なんですって!?あたしも混ぜなさい!」

「ちょっと!リリちゃーん!!」


 とまぁ、喧嘩を仲裁したり、家を建てたいという人に私の土魔法で造ってあげたり、買い物を楽しんだりと…充実した毎日を送っていた。


 



 そうして街の視察を始めて数週間。

 私たちの行動も国民に認知されてきた。


「ふぅ。今日も見回り成功ですね!」

「最近喧嘩が多くて楽しいわね!」

「血の気が多すぎるんだよね。この国」

「早く帰ってお風呂に入りたいですぞ」

「そうね!みんなで入りましょ!」

「「「賛成!」」」


 ルル様がお悩み解決します!と公言しながら歩いているので、ひっきりなしに依頼ごとをされる毎日だ。


 特に私の魔法は使い勝手がいいので、家を増やしたり、傷を回復魔法で治したり、荷物を浮遊魔法で運んだり…と何でも屋さながらに貢献してきたおかげか、魔法を習ってみたいという人が連日城に殺到し始め、おじいちゃんが魔法の教官として大忙しらしい。


 私にも手伝ってほしいと打診がきているほどだ。


「なんというか…平和だなぁ」

「そうですね~」

「そういえばお姉ちゃん。あのこと、クロネに聞かなくていいの?」

「あのこと?」

「そうよ。お姉ちゃんったら、夜中にこっそりあたしに部屋に来て…」

「わー!自分で言います!」


 なんだろう?私に聞きたくてリリに相談するほどのこと?

 ルル様を見ると、聞いていいのか迷っているように見つめてくる。


「なんですか?ルル様に隠し事はしませんよ」

「えーとまだ心の準備が…」

「こういうことは早く聞いときなさいよね!なんだったらあたしが聞いてあげるけど」

「ダメです!これは私が聞かないといけないことなんですから!」


 なんだろう凄く気になる。

 早く聞きたいな~と目で訴えていると、やがて意を決したルル様が恐る恐る私に尋ねてきた。


「…以前、クロさんがスフィルクスさんに質問していたことなんですけど」

「はい」

「元の世界に戻れる方法…聞いてましたよね?」

「あー…はい」


 何でも答えてくれるスフィルクスさんコーナーが以前あり、その時に確か聞いた。

 もちろん期待しないでだけど。


 確かその時は、ルル様がたくさん魔力量が多い魔物と契約して、異世界に転送できるほどの魔力量を溜めることができたなら、スフィルクスさんの魔法で帰ることは可能…そんな回答をもらった。


「私、優勝した後にスフィルクスさんに聞いてみたんです。そしたら、今ならたぶん成功するだろうって言われちゃいました」

「へえ」


 まぁ、竜人に水龍神(娘)、スフィルクスさん、九尾のコルナさんコリナさん…と魔力には全く困らないであろうラインナップとルル様は契約に成功している。


 私どころか新くんも転送できるほどの魔力量だろう。


「それで、クロさんは帰れるのは帰りたいのかな~…なんて…」

「ルル様…」


 ルル様が話している途中から涙目になってきた。

 思わずルル様を抱きしめる。


「く゛ろ゛さ゛~ん゛!!」

「前にも言いましたよね?私は帰る気はありませんと」

「でも本当に帰れると分かったら、気が変わるかもしれないじゃないですか!」

「変わりませんよ。ルル様を放ってはおけませんし」

「うぅ~…ほんとですか?」

「はい。私の居場所はここです」

「うくぅ…よ゛か゛った゛です゛ぅ!」

「街中で泣かないでください。ルル様」

「あたしの言ったとおりだったでしょ!やっぱりクロネがいなくなるなんて考えられないもの!」

「良かったですなぁ。ルル殿」


 ルル様の後ろからリリとトトちゃんがよしよしと頭をなでている。

 そんな光景に周囲の人々がなんだなんだと集まってきたところで、人混みをかき分けて新くんとおじいちゃんが慌てて走ってきた。


「黒音!大変だ!」

「どうしたんですか?新くん。それにおじいちゃんも」

「ワシの人間国での知人が亡命してきてな…人間国が大量の異世界人を使って戦争を起こそうとしているようじゃ!」

「「「「ええ!?」」」」

「テオフレール様にこのことを伝えたら、すぐに十傑会議を開くって言ってたよ!」

「ふっふーん?お姉ちゃんが王様になってから結構退屈だったけど、面白いことが起きそうじゃないの!」

「そんなことを言うものではないよ。リリ」

「ともかくすぐにお城に戻りましょう!」

「ですな!」


 やっぱり帰るわけにはいかないよね。

 これからもずっとルル様を支えていかないと!


 そしてポンコツだけれどもかわいい。ルル様の成長を一番近くで見続けるのだ。


これにて完結です。

ここまで読んでくださった皆様。本当にありがとうございます!

特にブックマーク登録、評価はとても執筆の励みになりました。



次回作もなるべく早く投稿するつもりなので、そちらも読んでもらえると嬉しいです!


仮タイトルですが…


・誰もがクリアを諦める「死にゲー」の世界に美少女が招待されてしまったようです

・愛情だけあればいい


のどちらか。あるいは両方を投稿する予定ですので、よろしくお願いします!


それではまた!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ