1721:特技を披露しよう。
「それにしても言っちゃ悪いんだけど、この子ってちゃんと戦えるの?」
しゃがんでマキちゃんと握手してたスナさんが、疑問を素直に口に出す。
あ、触手でふにふにとスナさんの手を叩き始めた。
「……これは抗議なのかな? ごめんごめん、悪く言いたい訳じゃないんだけどね」
まぁ確かに、本ウニからしてみれば言われて嬉しい言葉じゃないだろうしなぁ。
そもそも戦えるのかって話になると、うちの子もよその事は言えないんだけど。
「うーん、マキちゃん一人じゃちょっと厳しいかな」
「だよね」
うん、まぁそうだろうなぁ。
だって今のところ、でっかくて賢い以外は普通のウニだし。
いや普通のウニはトゲを丸くしたりは出来ないけど。
「でも大丈夫」
「ん?」
「ちゃんとその名に恥じない、凄い子なんだよ」
「名? ……え、武器なの?」
……高位種族の召喚獣だけあって、何か変なスキルでも持ってるのかな?
トゲは鋭いし相当硬いだろうから、棒の先にくっついててもらって振り回すだけでも強そうではあるけど。
「マキちゃん、おいでー」
「……おぉ、動いた。確かにこうして見ると、なんか結構可愛いかも」
ねぎとろさんに呼ばれたマキちゃんが、差し出された手に向かってトゲと触手を動かしてうにうにと動いていく。
……うにがうにうにって言うとなんかしょうもないダジャレみたいだけど、実際うにうにって感じでちょっとずつ歩いてるから仕方ない。
マキちゃんを手に乗せたねぎとろさん、こっちから見やすい様にか少し離れていった。
しかしまぁ、あのでっかいマキちゃんもねぎとろさんの手に乗ってたら小さく……というか普通のサイズに見えるな。
「マキちゃん、いくよー」
……トゲの上からわしっと掴んだ。
刺さらない様に出来るのは解ってても、なんか痛そうに見えてしまうな。
いや、そもそも普通の状態でも【人魚】の肌に刺さるのかは疑問だけど。
「はいっ」
斜め上に向かってポーンと放られたマキちゃんが、放物線を描いて水面に……
「え?」
「ふむ」
ぽちゃんと落ちるかと思ったら、飛沫一つ立てずに吸い込まれる様に無音で着水。
しかも今、水に入ったのに一切減速せずにそのまま海底まで落ちて行ったよね。
船着き場なだけあって結構深いから、途中からよく見えなかったけど。
「そのへん空けておいてねー」
「あ、うん」
私達から少し離れた場所を指差してから、マキちゃんを回収しにざぶんと潜っていくねぎとろさん。
わざわざスペースを指定したって事は……
「おわっ」
「おお、見事だな」
さっきと同じ様に、水面を一切乱さずに海中からぽーんと飛び出してきた。
しかも上手に回転を制御して、触手で衝撃を吸収したのか綺麗にピタッと着地してるし。
……あのピーンと斜めに二本伸ばされた触手は、体操選手の決めポーズ的なものなんだろうか。
うん、凄いんだけどなんというかシュールな絵面だな。
えっへんって感じでやってると思うと、なんとなく可愛く見える気もするな。




