1578:のんびり待とうとしよう。
ん?
なんか短くピッて笛みたいな音が…… あ、スタートの横に居る女の子か。
スタートに合わせて時報みたいな感じで吹くのかな?
……うん、タイミングはぴったりだったんだけどさ。
なんで肝心の最後だけ、ぷぇーって感じのひょろひょろした音になっちゃうの。
周りの人たちどころか走者のロシェさんまで、一瞬気が抜けたみたいに飛行が乱れてたぞ。
抗議してる暇はないからがんばれー。
初動にちょっと遅れが出たけど、意外と離されずに食らいついてるなぁ。
まぁ私の位置からだと後ろ姿しか見えないから、正直あんまり把握出来てないと思うけど。
お、最初の輪っかに…… ん、ロシェさんの挙動が乱れた?
……あー、ロシェさん側は機体に接触しない様に気を付けないといけないから、コーナーで追い抜こうとするとマツリさんのコース取りを把握する必要が有るのか。
角度が厳しめだとかで外側を通る羽目になるポイントが勝負なのかな。
あ、微妙にコースが曲がってるから人陰に隠れて見えなくなった。
まぁ追い抜いたら歓声が上がったりするだろうし、のんびり待って……
「んぉっ!?」
「おや、シェラ様」
下の方で待ってて暇だったのか、それなりに高い筈の木箱の上までぴょーんとシェラが跳んできた。
綺麗に高さを合わせてたのか割と静かに着地してたけど、自分に比べてかなりデカい子が凄い勢いで接近して来たら結構びっくりするよね、うん。
「ん? 後ろ向けば良いの? ……うん」
シェラのあっちあっちーって感じのジェスチャーに従って背中を向けてみると、すかさず背後からもふりと捕獲されてしまった。
まぁうん、くっついて満足してくれるならそれで良いけどさ。
問題は、だ。
「はいはい、後ろにでも乗せてもらっててね」
背中を向けてそーっと寄って来るカトリーヌさんを、脚を上げてむにっと押し返しておく。
なんで私の前に来て挟もうとするんだよ、カトリーヌさんは。
「閃きましたわ」
「そういう発想は要らないから」
私の足を背中にくっつけたままスイッと下に移動して、勝手に人の足置きになるんじゃない。
確かにシェラに抱っこされてると足は浮いてるけど、それは元々だよ。
くそぅ、カトリーヌさんはこの後にもお仕事が有るから、下手に攻撃も出来ないぞ。
いやまぁこの人の事だから、多少手荒く扱っても問題無いだろうけどさ。
とはいえこの状態で出来る抵抗には限りが有るし、シェラに任せると強すぎて危ないし。
「これですゎっ」
……とりあえず床に向けてグッと蹴り出してみたら、よく解らない事を言いながら叩きつけられてる音が聞こえてきた。
どうやら期待通りに動いてしまったらしいけど、なんかもうどうでも良い気がしてきた。




