1320:用心して試しておこう。
「残念ですわ」
「はいはい、さっさと訓練に戻ろう」
まぁ実際、試す機会は今くらいしか無さそうではあるけどさ。
他のタイミングで言われても、何をいきなり言い出すんだってスルーするだろうし。
いや、まぁ言いだしてもなんか流れでゴリ押されたりはよく有る事だし、別にそうでもないのか。
「あぁ、その前にもう一つ」
「ん?」
「一応の用心として、ご自分に効果が出てしまうのかという事の確認は済ませておいた方がよろしいかと思いますわ」
「あー…… それは確かに」
さっきも警戒はしてたけど、溜めた後にうっかり飲み込んじゃったり、先の方から口の中に漏れちゃったりなんて可能性は有るもんなぁ。
気を付けてれば大丈夫そうだとしても、こんな身体じゃ何があるか解ったもんじゃないからね。
「んじゃ、ちょっと試して…… 見るのは座ってからの方が良いな、うん」
万一しっかり効果が出たりして、墜落したくはないし。
そこまで高くないとはいえ、怪我をする可能性は十分に有るだろう。
「どうぞ」
「はいはい」
スッと地面に先回りして四つん這いになるカトリーヌさんを放置して、花壇のふちに腰掛ける。
地面はどうかなーって思ってここに来たけど、もし後ろに倒れたら大差ない結果になりそうだな。
まぁ払えば済む事だし、別に良いか。
「それじゃ試してみるから、危なそうだったらお願いするね」
「はい、任されましたわ」
ちゃんと座ってる状態だしそんな勢いよく倒れたりはしないだろうけど、一応見ておいてもらわないとね。
……この位置、前に倒れたら結構危ないし。
調整出来るのかは判らないけど、一応出来るだけ弱く出る様にイメージして、と。
ちょっとだけ生成して、舌の先からちょこっと針を覗かせて口の中にピュッと噴射してみた。
「んー? ん、とりあえずは大丈夫そうかな……?」
口をもごもごさせてみて、特に痺れた感じもしないのを確認して石の上にぺっと吐き出す。
うん、舌で触ってみてもちゃんと認識できてるな。
もう一回同じ様に生成して、今度は舌から直接飲み込んでみる。
……うん、内側は判り辛いけど、とりあえず問題が起きてる感じはしないな。
ちょっとだけ強く……というか弱くするのを緩めてみても、大丈夫そうだ。
「うん、自分には効かないっぽいね」
「私も習得すれば耐性を得てしまうのでしょうか」
「それは判らないけど、普通は『しまう』ではないよね」
普通じゃないのは十分承知した上で一応ツッコんでみたけど、ニコニコ笑顔でスルーされてしまった。
「それはさておき白雪さん」
「ん? まだ何か有るの?」
「そちらの麻酔なのですが、針から出すのではなく口内に一度溜めてから吐き出す事で、新たな【吐息】を習得する事が出来る可能性が有るのでは?」
「……思いつかないでほしかったなぁ」
本当に出そうだから嫌なんだよ。
まぁ無かったとしても現状で十分大差ない気はするけど。
ぴゅーって空中にばら撒くだけで、すぐに気化して同じ様な効果がありそうだし。
「っていうか、そんなの試してたら中庭がヤバい事になるでしょ」
「私がサポートいたしますわ」
「いや、要らないんだけど……」
花壇のふちに座ってる私の斜め下で仰向けに転がって、さぁ来いって顔されても困るんだよ。
多分あそこから上に向かって風を起こしてくれるんだろうけどさ。
さっさと普通の訓練しない?
まぁ説得がめんどくさいから諦めて付き合うんだけど。
うっかり向こうが飛ばし損ねて浴びたりすると困るから、一応手を振って合図してからぷふーっとね。
正確にはうっかりしたって口実を与えない為にだけど。
……うん、まぁ取れるよね。
【昏睡吐息】かぁ……
ん?
昏睡って英語だとなんか違ったような?
「麻酔の魔力を吐き出し」って書いてあるし、麻酔あたりなのかな。
っていうか麻酔の魔力って何だよ。
いや、その辺にツッコんでも仕方ないのは解ってるんだけどさ。




