1266:きちんと警告しておこう。
「ん、オッケー。入って良いよー」
体を拭いて出来るだけ髪の水気も吸い取り、服を着てからお姉ちゃんに声をかける。
「の、覗いてないよ?」
「いや知ってるよ」
なぜいちいち変な冗談を挟むのか。
戸がちゃんと閉まってるのは見えてるよ。
というかわざわざ見せる理由が無いから追い出してるってだけだし、別にお姉ちゃんにそんな趣味は無いんだから覗く意味も無いでしょうに。
用意してくれた背もたれ付きの椅子に寄りかかって、髪をお姉ちゃんに任せて……しまうと手持ち無沙汰だな。
「はい」
「ん? あ、ありがと」
とか思ってたらタブレットを渡された。
うん、これならやってもらってる間に勉強が出来るな。ありがたい。
「雪ちゃんは真面目だねぇ。良い子良い子」
「まぁ一応やっといた方がぁっつい」
「あ、ごめん」
櫛を持った方の手で撫でてくるのはいいけど、ドライヤーを近くで止めないでくれないかな。
地味に熱いし髪も痛むし。
「いやー、楽しみだなぁ」
「ん?」
ご機嫌で鼻唄交じりにすいすい櫛を通してたお姉ちゃんが、唐突に何やら言い出した。
あんまり浮かれられると私の頭にダメージが入る可能性が有るから、やってる間は落ち着いててほしいんだけど。
「何が?」
「アヤメちゃん、すっごく小っちゃくなってるんでしょ? 可愛いだろうなーって」
「……だからって、触ろうとしたりよく見ようと近づいたりしない様にね?」
「努力する!」
「うん、悪いけど信用出来ない」
「えー」
だってお姉ちゃんだし。
事前に注意してても、うわぁーって言って突っ込んで来る可能性が五割くらい有りそうなんだもん。
「大丈夫大丈夫。だってやっちゃったら後で酷い目に遭うのが解ってるもん」
「いや、解ってる様な事やっちゃって、何回もラキやぴーちゃんに叱られてるでしょ」
「むぅ……」
解ってたらやらないってくらいの理性を保っててくれれば、こっちも苦労しないんだよ。
流石に本当にやっちゃいけない事はやらないけど、後で自分が叱られるくらいの事だとブレーキにならないのは知ってるんだ。




