1073:魔法も試してみよう。
「難点は固定する位置からそう離せない、という所か」
「あぁ、この位が限界ですもんね」
両手を広げて示そうとしたら、左右の自分の手とぶつかりそうになった。
うん、【妖精】がギリギリ手が繋げる程度の距離だな。
固定した場所からこれだけの距離しか無いって事は、壁際を走りでもしなきゃ問題無さそうだ。
「一応並べていけば広げることは出来ますけど」
「その分本体が危険に曝されるからな」
言おうと思った言葉をアリア様に取られてしまった。
別に良いんだけど。
それはともかく、無駄に広くスペースを取って分身してるのを見られたら、知ってる人なら何か仕掛けたなって事もバレるだろうな。
「さて、とりあえずこれは返すとしよう」
「あ、はい」
アリア様が指に乗せて差し出してきた帽子を受け取り、ただ持っておいても手がふさがるだけなのでかぶっておく。
流石にあそこまで圧縮されたら、ちょっとペラッとした感触になってるな。
まぁ放っとけばそのうち元に戻りそうだし、気にしなくて良いか。
「で、他に何を試しておきましょうか」
「魔法はちゃんと全員から出るんだよね?」
「そりゃまぁ…… 出るだろうけど試すに越したことは無いか」
お姉ちゃんの疑問に当たり前だと返そうとして、途中で思い直した。
これで実は本体からだけ発動しますとか言われたら、なんで増えたのって言いたくなるし。
【浮遊】で全員浮いてるしとも思うけど、本体だけに効果が出てて他の私は固定されてるだけなのかもしれないしね。
「わざわざ離れるのも手間だし、適当に小っちゃい石でも出せば良いか」
「そうだねぇ」
火だとテーブルが痛むし、水だと拭かなきゃいけないし。
石も普通なら処分する必要が有るけど、そこの姉が勝手に片付けてくれるだろうし。
「それじゃ、ほいっと。……あれ?」
ぽーんと斜め上に射出した石が、それぞれ普通にテーブルの上を跳ねていった。
帽子とかと違って、お互いの位置は維持されないらしい。
「こっちは固定されないんだねぇ」
「全く同じ物の様ですが、特に連動してはいませんね」
レティさんが二つを摘まみ上げて観察してる。
うん、摘まんで動かしても、残りの石は微動だにしてないね。
「まぁ一個が当たった時点で残りも止まるんじゃ、何個も打つ意味が無いよな」
「当たりやすさくらい?」
うん、まぁ一杯出てれば当たる可能性は上がるだろうな。
別に分身しなくても普通に撃ちまくれば済む事だけど。
「消耗はどうでしたか?」
「あー、っと? んー…… 少なすぎて解りづらいけど、多分ちょっと多めだったと思う」
そういえば消費MPを気にしてなかった。
もともと軽く打てる【石弾】を、出来る限り弱体化して発動してるから、ちょっと消費が増えても誤差だもんなぁ。
でも多分五倍は使ってないと思うし、ちょっとはお得なんだろう。
あくまでも多分だけど。
これ、経験値稼ぎに使えるかな?
……いや、でもこのゲームの開発だからなぁ。
増えたとしても、多分ちょっとだけだろうなぁ。




