1063:元の位置に戻ろうとしよう。
「増えれば増えるほど安くなるというのは、そういうデメリットが有るからの様ですわねぇ」
「うん、それは良いんだけど、なんで肩揉むの」
「なんとなく、ですわ」
「あ、そう……」
まぁ良いんだけどさ。
妙に加減が上手だから、痛くないっていうかちょっと気持ち良いし。
前に重りが付いてない分、肩は凝らない方だけど。
「っていうか、そこに居られると翅が動かせないんだけど」
「それもそうですわね」
……普通に背後に居られるだけで動かせないのに、カトリーヌさんの場合は前にせり出し過ぎてるせいで、完全に翅が押さえつけられるんだよ。
むしろ押され過ぎてちょっと前に曲がってきてるんだよ。
「雪ちゃーん」
「ん?」
「とりあえず大丈夫そうだし、こっち来なよー」
「あぁ、それもそうだね」
お姉ちゃんはともかく、アリア様に見せるって意味も有るんだしね。
さっきみたいに大きくなるならともかく、小さいままなのに遠くに居たら見づらいだろう。
「とりあえず真ん中に戻って、と」
別に入れ替わったままでも問題は無いんだけど、なんとなく。
……でもこの位置だと、左右から声が聞こえてくるんだよな。
まぁ慣れれば問題ないか。
端に居ても二人分聞こえてくることには変わり無いし。
さて、それじゃ……
「って邪魔ぁ!」
前に進もうとしたら、左右に配置された私がやや内向きの進路を取ってきて挟まれてしまった。
くそぅ、押しのけようとしてみても、自分の力で押し返されるだけだ。
っていうか手と手がぶつかってちょっと痛かった。
ぶつかった右手も左手も私のだから、二倍痛くて損した気分にさせられるな……
「配置時の向きに従って前進するのですね……」
「むぅ、これじゃ前に進めない……」
向きの違いでどうなるか確認しようとしたせいで、思わぬところで問題が発生してしまった。
完全に同じって言っても、進む方向くらい本体に従ってくれて良いだろうに。
「っていうかアヤメさんとお姉ちゃん、笑い過ぎじゃない?」
うん、まぁ気持ちは解るけどさ。
かなりしょうもない光景だっただろうし。
「押したりして配置をずらせないかな?」
「体への影響が全員に及ぶのですから、全員が下がるだけなのでは?」
「やっぱりそうだよねぇ。まぁ一応試してみてくれる?」
「はい」
少し後退してお互いの間を開けてから頼んで、左側の私を正面から押してもらう。
「……やっぱりダメだよね」
「その様ですわねぇ」
左の私と同じだけの距離を下がらされてしまった。
パズルゲームみたいに障害物にひっかけてみても、動けなくなるだけだって事だな。
「んー、どうしよ。一旦解除しても良いんだけど」
「あ」
「ん?」
「位置をずらすのであれば、横を向いて前進すれば良いのでは?」
「横? あー、確かに」
真ん中の私が真横を向いたら、隣の分身はそれぞれちょっと前か後ろを向いてる訳だもんね。
ある程度進んで前後にずれてもらえば、内側に寄ってきてもぶつからずに済むか。
「問題は、テーブルに着く頃には、分身のお二人があらぬ方向へ飛び去ってしまうだろうという事ですが」
「ダメじゃん」
そういえば、飛んでいく方向が違うって事はそうなるか。
まぁテーブルまでそんなに距離は無いから、囲んでる人に向かって飛んでいくくらいだろうけど。
むしろその方が問題か。普通に危ないし。




