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森のエルフは過保護さん  作者: rurura
序章 《出会い編》
8/80

第08話 異世界料理は塩の味

「あ~ぅ、ララエルさ~ん。 早く帰ってきて下さ~ぃ」


 サハラは困っています。 何故ならお腹が空いたからなのです。

 すでにララエルが部屋を出て行ってから一時間以上が経っています。


 くぅ~~


 サハラのお腹が抗議の声をあげます。 喉の渇きも限界です。


「……よし! ここは一つ勇気を持って部屋の外にでましょう。 うん、そうしよう」


 そう決意して部屋のドアノブを回します。

 そして少しだけドアを引き開けて(内開きドアです)隙間から外を覗いてみると……当然と言えば当然なのですけど、外は廊下になっている様です。

  壁は白くて所々に窓も見えます。 でも隙間から見える方向は行き止まりみたいです。


(よ~し、出掛けましょう! とりあえず飲み水を探そっと~)


 外を覗くのをやめて一度部屋に振り返って……。


「ふふ~ん。 それじゃあララエルさん、少し出掛けて来ますね~」


 と、無人の部屋に小声で囁いてから、スパーンと勢い良くドアを開け放ちます。



「あれ、出掛けるの? じゃあ案内するわね」


「うきゃーーーーーー!!?」



 勢い良く開けたドアの目の前という予想外な位置から返事があったので驚きの余り部屋の真ん中まで猫みたいに飛び跳ねてしまいます。

 返事をしたララエルもサハラの悲鳴に驚いてビクッと肩を振わせてたりします。

《エルフ族は大体の人が殆ど足音を立てずに歩くから一緒に生活するとこう言う事が間々あったりするのです》


「びびびびっくりしましたよ~!」


 サハラは胸の辺りに手を当てて気を落ち着かせようとしますが、いまだに心臓がバクバク言って落ち着きません!


「わ、私もびっくりしたわ……。 所で何処へ行きたいの?」


「あ、うん。 ちょっと喉が渇いたしお腹も空いたから何か食べに行こうかと思ったのです」


「ああ、ごめんなさい。 そこまで気が回らなかったわ、なら食堂に行きましょか、お嬢様」


「いえいえ~。 行こ……って、あれ? お嬢様!?」

(あれれ、何でお嬢様になってるの!?)



「待って! なんで僕がお嬢様なのかな?」


 と言うのも結局あの後、酒場でララエル達はサハラの事を“貴族かどうか分からないけど少なくても良家のお嬢様だろう”と言う結論になったのです。

 なのでララエルはとりあえず失礼の無いように「お嬢様」と呼ぶ事にしたのです。



「違うよ~、僕はお嬢様じゃなくてただの一般人です。 普通に名前で呼んでくれれば良いですよ~」

(なんで急にお嬢様って事になっちゃったんだろう? ん~、やっぱり溢れ出る気品のせいかな? ふふ~ん、それなら仕方無いですね!)


 そんな風にサハラが壮大な勘違いをしているとはつゆ知らずララエルもさらに勘違いを重ねてしまいます。


(きっともう身分は剥奪されたから今は一般人なんだって事なのね。 こんな若いのに健気ね、可哀相にせめて独り立ち出来るまで付き合ってあげよう)


「……わかったわ。 じゃあサハラ……ちゃん?」


「ぅぅぅ、ちゃんは恥ずかしいです。 呼び捨てでお願いです。 それにその方が何だか仲良くなれる気がするし」


「そう……ね。 うん、そうしましょう。 サハラ、改めてよろしくね」


 そう言ってララエルはサハラに右手を差し出しました。


「はい、宜しくです! じゃあじゃあララエルさんの事はララって呼んで良いかな? あだ名で呼べばすぐに仲良くなれるよね!」


 サハラは差し出された右手を握って握手しながら満面の笑みで言います。



(う……この子笑うと可愛いわね。 でもエルフの名前は短縮するのはマナー違反なのだけど……悪気は無さそうだし、まあ良いか。 それになんか放っておけないし……もし妹が居たらこんな感じなのかしらね)


《エルフ族は里全体が家族みたいな物なので、血縁じゃなくても年下は弟や妹として扱う事も多いのです。 ですがエルフは滅多に子供を作らないのでララエルの居た黒の森ではララエルが一番若いのです。 なので実は密かに妹に憧れていたりします》



「じゃあサハラ、ご飯に行きましょうか」


 改めて挨拶も済んだ事ですし今度こそ食堂に向う事にします。


「うんうん、もうすっごいお腹空いたよ~」


 目が覚めた時は昼過ぎだったのですが、今の時間はすでに夕飯時になっているのでサハラが空腹を訴えるのも仕方無いのです。


 食堂は玄関ホールに隣接した部屋にあるのでそこに向かいます。


(ぉぉお、凄いです! 廊下がレトロ調ですよ! ネットで見た北欧の古い建物がこんな感じだった気がする~。 わぁー! 窓の外もやっぱり北欧系の町並みだ~)


 短い距離なのですがサハラとしてはすべてが物珍しくてキョロキョロ、キョロキョロと落ち着ません。

 窓の外を見た時なんて「ひゃー!」と声までだしていました。


(なんだろう、これと言って珍しい物は無いと思うのだけど、もしかして思ったよりお嬢様育ちで庶民の生活が初めてで珍しいのかな?)


 そんなこんなではしゃぐサハラと悩むララエルはすぐに食堂に着いたので適当にあいてる席に座ります。

 食事のメニューは基本的にコックにお任せしか無いので二人分頼んで待ちます。

 ちなみに水はセルフサービスなので水瓶から自分達で汲んできました。



「そう言えばさっきサハラはご飯食べに行こうとしてたみたいけど、お金持ってたの?」


 ララエルは水を飲みながらふと疑問に思った事を聞いてみます。


「…………あ、そうか! お金持ってないんだ、気が付かなかったです」

(そうかそうか~、そう言えばここはもう元の世界でもゲームの世界でも無いんだね。 そうなるとこの世界のお金は持ってないんだね)



「ブフッ!「ぎゃー」ゲフ、ゲフンゲフン……ご、ごめん、びっくりして吹いちゃったわ」


「酷いよララ~」


 ララエルは飲みかけてた水を盛大に吹いてサハラに掛けちゃったので急いでハンカチを取り出して拭きながら思います。

(間違い無いわ! やっぱりお嬢様育ちよ!)

 常識どころかお金の知識も無いんだな、とさらに誤解が深まったのでした。


(ちょっと気を取り直して今後の事も聞いておこうかしら)


「ねえ、少し真面目な話なんだけど、サハラはこれからどうするの? 何か当てとか予定とかってある?」


「う~ん、実は当ては何も無いのです~。 ララには打ち明けますけど実は僕はここが何処なのかすら全然知らなかったりするのです」



「うん、それはたぶんそうなんだろうなって思ってたわ。 良かったらサハラがどうして自分が何処にいるのか分からない様な事になってるのか教えて貰える? 言い辛い事だったら無理しなくて良いからね」


 そう言った後にララエルはサハラに無理をさせない様に優しく微笑んで気遣います。



(どうしよう、秘密にする事じゃ無いけど全部そのまま言っても通じなそうだしな~……うん、伝わりそうな所だけ言おう!)



「えとね、説明が大変なんだけど、僕はこの世界とは別の場所……凄い遠くの国かな? そこで生まれ育ったんだけど、ちょっと訳あってテレポートで飛ばされちゃって帰れなくなっちゃったんだ」

(あ、そう言えばテレポートって有るのかな? もう言っちゃった後だから通じなくても手遅れなんだけど……)


「やっぱり……そうなのね。 国には帰れないのね」


「うん。 だからとりあえずお金を稼がないとならないのだけど……僕も冒険者になろうと思うんだ」


「え……冒険者になるの?」

(この子が冒険者って……確かにこの町に住所や伝手が無くても仕事出来るし、稼ぎも悪く無いけど……不安ね。 すっごく不安ね)


 ララエルは考え事と不安で寄った眉間の皺を右手の人差し指でほぐしながら悩みます。


「うん、冒険者になってお金稼ぎながら色んな所に行ってみたいのです! そうすればきっと楽しいのです」


「そう……ね、たしかに色んな所に行くなら冒険者は向いてるかもしれないけど……危ない仕事も多いのよ? それに柄の悪い人達も一杯よ?」


「大丈夫です! それに皆話せば意外と良い人かもしれないよ~。 所でララは冒険者なんだよね? 出来ればどうやってなれば良いのか教えて欲しいのです」



(うぅぅ、不安ね、しょうがない明日一緒に行ってあげよう)

「んー、そこまで言うなら仕方無いわね。 なるのは簡単よ。 冒険者ギルドに行って登録すればすぐにでもなれるんだけど、今日はもう間に合わないから明日連れて行ってあげるわ」


「え、一緒に行ってくれるの? ありがとう! 冒険者ギルド楽しみです♪」



 丁度今後の予定が決まった頃、料理が届きました。



 でもサハラは予想外の料理にたじろぎます。


 メニューの内訳


 あんまりふっくらしてない(・・・・)パン

 紫と青と白の色彩豊かな野菜炒めっぽい物

 黄緑色の焼き鳥っぽい物

 青いスープ とろみ付

 オレンジ色のいちご盛り合わせ


(み、見た目が凄い、合成着色料てんこ盛りみたい……で、でもきっと味は美味しいはず!)



 ララエルが「美味しそうね」とか言いつつ笑顔で食べ始め「美味しいよ」とサハラに言ってきます。

 そこまで言われてしまっては仕方ありません。


 サハラも覚悟を決めて食べ始めます!


「いただきます!」


 とりあえずカラフル野菜炒めを食べてみます。

 パク モグモグモグ

(……し、塩っ辛い! 凄く味が濃いです。 もう素材の味が何にも分らない位しょっぱいです!)


 出足を挫かれましたが、気を取り直して次は焼き鳥っぽい物を一つ。

 ぱく もぐもぐもぐ

(ぁぅ、しょっぱい、しょっぱいよ! これはもはや塩を食べてるのと変わらないよ!?)


 どの料理も一口でご飯お茶碗一杯分位食べられそうな程味が濃いです。

 それと言うのも実はこの【カララの町】と言うのは鉱山の町なので色々な種類の鉱物を掘ってるのですが、それとは別になんと岩塩も取れるのです。 そのお陰でこの町は塩が非常に豊富にあります。

 そして鉱山労働者や冒険者など肉体労働者が多い、と来れば当然料理の味付けも濃い物が好まれます。


 そう言う理由で塩をふんだんに使った料理が名物になっているのでした。



「どう、美味しい?」


 困った事にララエルは普通に美味しそうに食べながら上機嫌にサハラに感想を聞いてきます。


「う……ん、すっごく……美味しい……ね」

(何とか……本当に何とか涙を抑えて言えました! GJ自分! ララもなかなか罪作りな人ですね)


 他の料理はと言うとふっくらしてないパンはやっぱりふっくらしてないし、オレンジのイチゴはもっさりしてました。

 だけど青いスープだけはパンプキンスープみたいで美味しかったです。










 その後、胃もたれと闘いながら部屋に帰るとララエルは別の宿に部屋を取ってあるからと言って帰って行ってしまいました。



 ただし帰り際に

 「鍵掛けて寝るのよ? 知らない人が来てもドア開けちゃだめよ? 何かあったら大声で火事だー! って言うのよ? 助けてー! じゃダメだからね」

 と何度も繰り返していきました。


(まったく心配しすぎです。 僕をなんだとおもってるんだろう)











 そんなこんなで明日はギルド行き。


 サハラは楽しみに期待一杯で夢の世界に落ちて行きました。










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