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森のエルフは過保護さん  作者: rurura
番外編
79/80

ルミお母さんは幸せ




 サハラさんとララを我が子として引き取ってから早二年が経った頃。


 今、ルミ姉さんは自身の仕事の一つである、黒の森の入り口にある外界との交流窓口になって居る小屋の三日間の泊まり込みの警備任務を終えて、村の中にある自宅へとのんびりと歩いて帰っている途中です。


 その道すがら、ルミ姉さんは今日までの穏やかなりに色々な事があった日々を思い出します。



 そう、例えばサハラさんへ弓を教えようとした時――――



「サハラ、エルフの村でエルフたる私に引き取られたと言う事は貴方もすでに立派なエルフと言っても過言では無いわ!」


 ある晴れた昼下がり、ウトウトとうたた寝をしていたサハラさんとララを庭に連れ出してルミ姉さんは鼻息粗くそう宣言しました。

 それに対してサハラさんはまさに寝耳に水、すごくびっくりです。


「そ、そうだったのですか!? 僕、いつの間にかエルフさんに……ふふ~ん♪ なんだか得した気分なのです!」


 そして何故か自慢げに胸を反らしながら“得した気分”と言い放ちます。


「サハラ、当然よ。 貴方はメルミアお母さまの娘で私の妹ですもの。 もはや生粋のエルフと言っても過言では無い(注一)わね!」


 《注一:過言です》

 自信満々に間違った事を言い切るララもある意味ではいつも通りでは有るのですが、悲しいかなこの家族にはその間違いを訂正する人が居なかったりするという大問題が……。


「それでサハラ、エルフと言ったら何かしら?」


「う~…………あ! エルフさんと言ったら長い耳なのです!」


 ルミ姉さんの問い掛けに暫し考え込んだサハラさんですが、ハッと気が付いた様に答えます。


「うーん惜しいわね! それも確かに重要だけどサハラの耳を伸ばす事は出来無い……訳でも無い……か、でも今はそうじゃ無いのよ」


 と、サハラさんの答えはどうやらルミ姉さんの求めていた物とは違った様子。


「う~ん? じゃあ……分ったのです! 弓ですね!?」

(と言うか耳って伸ばせるのですね!)


 耳の事も気になった物の、もう一度考えたサハラさんは今度こそ正解だろうと自信を持って答えました。


「そう! そうよサハラ、エルフと言ったら誰もが思い浮かべるのが弓の名手って所ね。 そして実際その通りなのよ」


「やったのです! 正解しました」


「そうよサハラ。 エルフたる者、五十メートル先を飛んでる鳥を射落とせなければ未熟者って言われる位だからね」


 《そもそも五十メートルも離れた鳥に当てるなんて相手が止まっていてもかなり大変です。 ちなみに飛んでる鳥を弓で落とすのは一部の人が相当な修練を詰んでやっと出来る高等技術です。 その両方が合わさっているなんて言った日にはもはやどんな神業かと言うレベルですね》

 そう言いつつララは手に持つ自身の弓(出会った当初に持っていた宝弓(シルフィア)では無くて本当の自分物)を素早く引いて五十メートルは離れている場所になっていたリンゴを打ち抜きました。


「そう言う訳だからサハラ、弓を覚えましょう」


「ふぇ!? 無理そうなのです。 ……そもそも引けなそうでする」


「大丈夫よ。 子供向けの練習用の弓矢を用意したわ。 ララエル取ってきて」


「はいお母さま」


 ルミ姉さんに頼まれたララは一旦家に戻ってすぐに小さな弓矢を持って帰って来ます。

 その間にルミ姉さんも五メートル位離れた場所に的を用意しました。


「じゃあサハラ持ってみて」


「はいなのです」


 返事をしつつサハラさんは横で見本を見せてくれているララを見よう見まねして弓を構えてみます。


「サハラ、左手の親指はここ、他の指は……そう、そんな感じ。 力は普段は要らないわよ。 足は肩幅くらいに広げて、そうそう」


 そこからさらにルミ姉さんがサハラさんの後ろに回って手取り足取り教えて上げるのでした。


「ふふふ~ん♪ なんか格好良いのです!」


 まだ矢も手に取ってないのですがサハラさんはすでにご満悦です。


「じゃ、次は引いてみましょ」


「わかったのです! よいしょー」


 ……ちなみに古い観光地にあるような子供でも引けるビヨンビヨンな弓に毛が生えた程度なのでサハラさんでも問題なく引けます。

 と言ってもサハラさん的には結構頑張って引いてるのですけどね。


「うん、良いわね。 じゃあ次は矢をつがえて実際に射って見ましょう。 あ、矢は実戦で使うのを弓に合わせて小さくしただけだから怪我に気をつけてね」


 エルフ式教育方では矢は実戦の物と差が大きいと練習にならないと言って(やじり)が重りと布で作られた安全な模擬矢は使わなかったりします。


「ふむふむ~、気をつけるのです!」


「まあ矢は前か、最悪失敗しても横にしか飛んでかないから大丈夫でしょうけどね」


 と、何故か意味も無くフラグの様な物を立てるララエルさん。

 立ってる位置はサハラさんの後ろで少し離れた所。


「ではではいざじんじょーに、てりゃ~……あ!」


 力一杯引き絞ってプルプル震えながら良く分らないかけ声を出しつつ射ろうとしたサハラさんなのですが、案の定と言いますかなんと言いますか、射る瞬間に力を入れた足を滑らせてツルッとひっくり返ってしまいます。


「さ、サハラ大丈夫! っていたーい!!」


 倒れる途中で放たれた矢はびよよ~んと空に向かって飛び上がりすぐに重力に負けて落ちてきて、転んだサハラさんにびっくりして急いで助け起そうと走り寄ってきていたララの靴にスコーンっと刺さるのでした。


「ちょ、サハラ! って、え? ララエル!?」


「ぎゃー、ララ、ララ、ごめんなさ~い! 【回復(ヒール)】なのです~」





 ――――そんなドタバタもありつつ、二年間時間があればサハラさんへ根気強く、そして優しく丁寧に弓術を教え続けたお陰で今ではなんと! 表情と形だけなら一端の弓使い(注二)と言っても良いレベルまで進展したのでした。


 《注二:弓が使える様になったとは言っていません》



「ふふふ、思えば今までも色々あったわね。 さてさて、今度はいったいどんな事を見せてくれるのかしら?」


 そう幸せそうな顔で呟いて、ルミ姉さんはふふっと微笑みます。


「なんだか早く二人に会いたくなってきたわ。 急いで帰りましょう!」


 澄し顔のわりに案外ドジで天然な元妹とのほほんとマイペースな我が娘の顔を思いだして、ルミ姉さんは足取り軽く我が家えと走り出すのでした。






ふと思い立って勢いで書いてみました!

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