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森のエルフは過保護さん  作者: rurura
番外編
78/80

スーさんの憂鬱

凄く今更ですが、スーリエルさんのその後の生活を少しだけ書いてみました!







「なんか予定と違うのじゃが……」


 つい最近冒険者としての生活をスタートさせたダークエルフのスーリエルさんは全身を覆う激しい筋肉痛に動く事すら出来ずにベッドの上に寝ころがり、何故こうなったのかと呟きます。


 そもそも彼女の予定としてはサハラさんとララの二人と一緒にのんびりとした生活を送るつもりで町に出て来たのですけれど、その目論見はサハラさん達とPTを組めなかった時点で儚くも崩れ去ってしまいました。

 そして代わりに提案されたリディさん達とPTを組む案なのですが、何かそこはかとなく怪しさを醸し出してはいたものの、だからと言ってここまで過酷な生活になるとは夢にも思わなかったのでした。


 その生活とはどんなかと言うと……



 初日は危険生物指定されている【フレイムサラマンダー】とか言う凶暴極まりない化け物を太陽が真上にある時から狩りに出掛け、そして沈んで、さらに次の太陽が昼を示すまで戦い続けると言う意味不明な脳が筋肉ででも出来ていそうな強行軍につれて行かれ。


 やっとゆっくり出来ると思ってた翌日には開拓村までの物資輸送の依頼にかり出されてそのまま数日帰って来れなくなったり。


 はたまたその次は【大熊(ビックベア)】が畑を荒らしてるから退治してくれって依頼を受けてまた何処の村ともしれぬ所へ馬車で行ってスーさんの十倍は有るんじゃ無いかと言う程の化け物熊と戦って、しかもすぐさまカララの町まで帰ってくると言う果てしない強行軍。


 他にもあれやこれや……


 ……と言う実に理不尽極まりない生活なのです。


 こんな生活にエルフとしては驚異的に忍耐強いスーさんもさすがにプリプリ怒って文句の一つもこぼしてしまうと言うものです。

 自分の個室で一人きりの時にですけどね。


「なんで行く所行く所化け物の様な凶悪な魔物ばかりが居るんじゃ! しかも……しかもじゃ! どうして意地でも出先で宿を取らずに町まで強行軍で帰って来るんじゃ! おかしくないか!?」


 まったく、なんでじゃ!と喚きながら、普段なら壁に枕の一つでも投げつけてた所なのですが、悲しきかな……現在スーさんは筋肉痛真っ只中、物を投げるどころか指を動かすだけでも激痛が走ると言う酷い状態なのです。

 ちなみにスーさんお得意の治癒精霊魔法はララ達黒の森のエルフが使う詠唱魔法と違って杖で空中に【精霊語】と呼ばれる魔方陣を書かなければ発動しない紋様魔法なのです。


 ようするに、現在スーさんは手がプルプルしちゃってまともに【精霊語】が書けなくて回復魔法が発動出来ず筋肉痛を治せないと言う事なのです!


 …………筋肉痛が治まれば使えるんですけど、それじゃ手遅れなんですよね。


 そんなこんなで微動だにせずに怒っていたスーさんの所へ空気を全く読まない(読めないのでは無く)コトさんが底抜けに脳天気な態度でご飯を持って入って来ました。



「スーさーん、ご飯出来たよー。 食べさせてあげるねー」


 ちなみにコトさん、腹黒だけど優しいです。

 ですのでスーさんが筋肉痛で動けないのでお世話しに来てくれたのでした。

 誰のせいで筋肉痛になってるかは考えない方向で。


「おお、すまなんだのぅ。 って、まてぇい! わしの名はスーリエルじゃ! 略すでない!!」


「えー、サっちゃんはスーさんって呼んでるじゃん。 私もそうしたいー」


「ダメじゃダメじゃ、エルフの名前を略すでない。 それよりそのサハラを呼んできてくれんかの? わしに治癒魔法を掛けて貰いたいんじゃが……」


 サハラさんの回復魔法なら一発で全快出来ますし、もし無理でもある程度治れば後は自分の魔法で治しても良いし、と思って頼んだスーさんなのですが。


「あ、それ無理。 サっちゃん結構前にエルフの里に出掛けて行っちゃったもん」


 さらっとコトさんが凄く重大な話をこぼします。


「…………なぬ?」


「あれ、言ってなかったっけ? ちょっと出掛けて来ますって手紙も貰ったよ」


「聞いとらんよ!」


 ほんとに重要な事をサラッと言うコトさんにスーさんはぷっくり頬を膨らませて怒ります。


 そもそもサハラさんやララと一緒に生活しようと思って町にまで出て来たのにとことんまで予定通りに行かないスーさんです。

 もういっその事自分も黒の森へ追いかけて行ってしまおうかとさえ思ってしまいます。

 でも、そんな考えも何だかんだ面倒見が良くて優しいコトさんやリディさんと別れるのも気が引けるなぁと考え直します。


 何せ今現在もコトさんはスーさんの背中を抱き起こしてご飯を食べさせてくれてるのです。

 そこまでされちゃうと普段の多少の理不尽はまあしょうがないかなぁと思っちゃうのでした。


 そうこうしている内に開け放たれていた部屋のドアをコンコンとノックしながらリディさんが入って来ます。


「良い? スー、大丈夫? 回復薬を買って来たわよ」


「おお! ありがたい……ってまてい! おぬしもか! エルフの名前は略すのでないわぁ!」


 部屋に入るなり開口一番にエルフの名前を略して呼んだリディさんへスーさんは“うがー”と不満を訴えます。


「あぁ、大丈夫よ気にしないで。 で、回復薬飲める?」 


 そんなスーさんの態度にリディさんは一瞬たりとも怯むこと無く淡々と答えながらウエストポーチから回復薬を取り出して見せて不満を受け流そうとします。


「うむ、かたじけない、……って違うわ! 危うく流される所じゃったわぃ! 大丈夫よ、ではない! りゃ・く・す・な! と言うとるのじゃ-!」


「うん、わかったわかった。 それで、スー……リアナ? ほら、手伝ってあげるから早く飲んで楽になりなさい」


「まーちーがーえーるーなー! スーリエルじゃー!」


 根が単純なスーさんはリディさんのあからさまにバレバレなスルーにもあわや引っ掛かりそうになるも、何とかギリギリで気がついて怒りなおしたものの、今度はリディさんまさかの素で名前を間違えると言ううっかりを披露。

 どうやらリディさんはスーさんの名前をちゃんと覚えてなかったのでスーと略して呼んでた様です。


 まあそれは置いておくとして、リディさんはコトさんと入れ替わっていまだ吠えまくってるスーさんを支えて回復薬を飲ませてあげます。


 半ば強引に。


 そしてスーさんがガボガボと溺れる様にして飲み終わった後、しばらくじーっと見守りゲホゲホと咳き込むスーさんの顔から苦痛の色が消えたのを見て取ってコトさんとアイコンタクトでうなずき合ってから声を掛けます。



「治ったわね?」


「治ったでしょ?」


「げほげほっ……う、うむ。 すごい効き目の薬じゃな?」


 回復薬が効いたのを注意深く確認するリディさんとコトさん、それを胡乱(うろん)げに見つつも素直に返事をしちゃったが運の尽きなスーさん。

 ここから一気に三文芝居が始まってしまいます。


「でしょう。 スゴク、高かった、カラネ」


「お姉さま、そんなにお高い薬、今日までにやった依頼報酬で足りました?」


「ソレ、なんだけど、ね。 全然、足りなかったわ」


「あらあら、それじゃあまた稼ぎに行かないと……ですね」



「なに? いや待て! こ、これはもしや…………は、はめられたのじゃーー!!」



 迫真の演技が決まってほくそ笑むコトさんと、最初から最後まで一貫して大根役者だったリディさんにスーさんはガシッと肩を押さえられて逃げる間も与えられず真っ青な顔で焦るばかりです。



「ふふふ、さあ、動けなかったメンバーも治った事だものね。 何を狩りに行こうかしら」


「それなんですけど、なんとすごい偶然な事にここに丁度【ラーサーペント】の討伐依頼がありますよーぅ」


「偶然ねー。 しかももう受付済じゃないの。 これじゃ倒してこないと違約金が発生しちゃうわねー」


「そうですねー。 仕方無いですねー」


「仕方無いわねー」


「それダメ! わし知ってる、凄く駄目な奴なのじゃー!」


 あわあわと焦りまくるものの、ニヤニヤと笑う二人に両サイドから腕を持たれて引きずられて行くスーさんなのでした。




 ちなみに余談ですが、今回飲んだ回復薬ならスーさんが参加した依頼の報酬があれば千本は買えます。


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