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森のエルフは過保護さん  作者: rurura
カララの町 《取引編》
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第59話 PTの解散




 いつもサハラさん達が泊まっている宿屋から少しだけ離れた場所にある、ちょっとだけ硬派な雰囲気のこぢんまりとしたとある酒場。

 以前ララとサハラさんが行った酒場は料理が色々食べられるとあって、お酒を飲まないお客さんも結構居ましたし、なんと言っても店自体のノリがどんちゃん騒ぎの居酒屋ノリだったのに対して、こっちのお店は幾分か落ち着いた大人な雰囲気を醸し出しています。

 それこそ葉巻でも吸ってニヒルに振舞っても浮かない位には。



 そんな硬派な店のちょっと薄暗いホールの隅、そこには丁度二階に上がる階段の裏、しかも柱の影にもなってて殆ど個室見たいになってる奥まった席があります。

 普段からリディさんはその席を好んで使っているのですが今日もご多分に漏れず同じ席で昼間っからコトさんと一緒にお酒を飲んでいました。


 ただし、数日前までの様にやさぐれて飲んでる訳では無く、普通に空き時間に飲んでるだけなのでその表情は以前の様な暗い影も無く、コトさんと数日前の依頼での出来事を時折笑い合いながら話して居る所でした。



「ふふふ、あの時は危なかったわね。 まさか貴方がサラマンドラに潰され掛かってるとは思わなかったわ」


「もー、笑い事じゃ無かったですよー! ただでさえあたしたち翼人は体重軽いし脆いのにあんな大きな奴止められるわけないじゃないですかー!」


 わりと本気で命の危機だったのに笑うなんて酷い! とコトさんは『ブーブー』と唇を尖らせて猛抗議します。

 でもその一方ではずいぶん長い間笑ってなかったリディさんが久々に笑ってるのを見て少し安心していたりもしますけどね。



 そんな会話のさなか、リディさんはふと何気なく酒場の入り口に目を向けます。

 すると丁度中に入ってきた見知った顔を見つけました。



「あら、あれはサハラとララエルじゃない」


 リディさんの呟きを聞いてコトさんも入り口の方へ振り返って見てみます。


「あ、ほんとだ。 しかもこないだのダークエルフも一緒じゃないですかー」


 キョロキョロと辺りを見回して自分達を探してる様だったのでコトさんは『おーい』と手を振って呼んであげます。

 すぐにサハラさん達もそれに気づいてリディさん達の元へ向かってきます。



「いらっしゃい、どうしたの? 何かあった?」


 リディさんはそう言いつつ、椅子が足りなかったので適当に近場のテーブルから奪って来て三人に席を勧めます。

 サハラさん達は勧められた席にそれぞれお礼を言いながら座って、それからサハラさんがリディさんの問いに答えます。


「はい。こないだのPTのお礼と()()の手続きがまだだったな~、とかスーさんの話とか色々あったので探してたんですよ~」


 いや~、探しました! 的に額の汗を拭うジェスチャー付きでサハラさんは重大な事をあっけらかんと言い放ちます。


 しかしいくらサラッと軽く言われた所で聞き捨てならない物は聞き捨てなりません。

 リディさんもコトさんもびっくりです!


「ちょ、ちょっと! ちょっと待ってサハラ!! 解散ってどう言う事なの!?」


「そうだよサッちゃん! せっかく組んだのにもう解散なんて……。 あ、そうだ! そう言えばまだ借金もあるじゃない!」



 実はコトさんも本気で取り立てる気なんてさらさら無かったので危うく忘れちゃう所だったのですけれど、こう言う時の為にわざわざ小狡い(こずるい)手まで使ってララに借金させてたのを思い出したのでした。



「そ、そうだったわね! 確か結構な額だったわよね? 解散したらローンでの返済は出来ないかなぁ……一括って事になっちゃうかも…………なんて……ね?」


(さすがにちょっとやり過ぎかしら?)

(いえ、お姉さま。 ちょっと可哀相な気もしますけどここは心を鬼にしましょう!)


 リディさんとコトさんは長年培ってきた阿吽の呼吸で素早くアイコンタクトをして連携をとります。

 そして一気に押し切っちゃおうと続けて喋ります。


「そうそう、だからさ、借金が終わるまで二~三年位はさ、一緒にやろうよ! その方が良いよ! ね?」

(ふふん、その間にいかにあたしとお姉さまが優秀かを見せつければ嫌が応にも“抜ける”なんて話はしなくなるはず!!)


 と、謎の自信に裏打ちされたコトさんの説得計画が脳内で構築されていきます。


 ですがそんな二人の連携もコトさんの自信も虚しく、『にっこり』と後光が差しそうな勢いの満面の笑顔でサハラさんは二人の努力を粉砕してしまいます。


「そうですそうです! その事もお話したかったんですよ~。 コトさんにはだいぶお待たせしてしまいましたけど、やっとお金を用意出来たのですよ~!」


 そう言うサハラさんの言葉に合せて、ララが懐から金貨の入った袋をコトさんへ手渡しました。


「壺、割っちゃって悪かったわね。 …………次は……気をつけるわ」


 そっぽを向いて、非常に嫌そうに、それでも一応ララも謝罪の言葉を伝えます。



 と、言ってもリディさんもコトさんもそんな言葉は全然聞こえて居なかったりしますけども。

 なんと言っても最後の保険として打っておいた手があっさりと解決されてしまったのです。

 口から魂が旅立って行ってしまいそうな程の放心状態なのです。



 そんな状態でも無意識に袋の中身をガサゴソ確認して、本当に金貨八枚が入ってる事に改めてびっくりしてしまいます。


「うそー……えー? ほんとに金貨八枚入ってるし……。 うそーん」


 もう何が何やら、とコトさんは焦ってこんがらがって放心から中々放心から帰って来れません。


 が、そこはそれ。

 曲がりなりにもリーダーで人を率いる立場のリディさんはそうも言ってられません。

〈と言っても今はサハラさん達を抜かせばコトさんと二人きりですけどね〉


 ダメだった物はダメなんだと諦めてさっさと先に進みます。


「わかったわサハラ、これで借金は正式にチャラね。 でも少し聞いても良いかしら?」


「はい、なんでしょうか?」


「PTはどうして解散するの? この前のクエストで何か問題あったかしら?」


「いえいえそんな事は無かったですよ~! でも突発的にご一緒させて頂いた野良PTですし、そろそろ一度お別れして普段の生活に戻る頃かな~? なんて思ったのですよ~」


「ふむふむ、“のら”って言うのは良く分らないけど言いたい事は分かったわ。 要するに“一度お別れ”と言う事ね」

(要するにまた次があるって事ね!)


 リディさんもやっぱり野良PTと言う物は分からなかったのですが、それでも目敏(めざと)く今後に繋がりそうな言葉を聞き止めました。


「はい! また機会が有りましたら是非ご一緒しましょ~!」


「ええ分かったわ。 また誘うわね」

(そしてその時こそ正式にメンバーにして見せるわ! でないとせっかくこなしたクエストも無駄になるしね)


 そんな風に前向きにリディさんは決意するのでした。



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