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森のエルフは過保護さん  作者: rurura
序章 《出会い編》
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第04話 冒険者《ララエルの日常》

◆◆◆◆ここで一度視点を少女から変えて、彼女が転生してくる数日前に時をさかのぼります◆◆◆◆




 鬱蒼と木々が生い茂る深い森の中、その森を切り裂くように走る一本の道、その道の真ん中で四台の馬車が盗賊に襲われていました。


 そんなまさに一大事と言う時にも関わらず、馬車を守っている一人が心底不思議そうに言葉を発します。


「エリック、私は常々不思議に思っている事があるのだけれど、少し質問しても良いかしら?」


 そう呟いたのは、特徴的な長く尖った耳を持つエルフ族の少女です。

 見た目の年齢で言えば十八~九歳位《実際はエルフなのでもっと年上なのですが》腰まで届く透き通る様な鮮やかな金色のロングヘアーを揺らし、その髪色に引けを取らない輝く様な黄金色の瞳を今は疑問に歪めています。


「ああ? 寄りによってこんな時に何だよ? 時と場合を考えてくれよララエルさんや。 よっと!」

(っとにこのエルフのお嬢様は何かにつけて非常識で困りもんだぜ)


 金属で出来た胸当てを着けた軽装な青年が、自身に向かって振り下ろされた剣を盾で受けて相手の勢いを止め、お返しに今度は青年がカウンターで剣を振い相手の胴を切り裂きながら返事をします。

 そんなエリックは身長百八十とちょっと、中肉の引き締まった体と銀色の髪をした二十歳そこそこの人族の青年です。


「どうして丸耳族は……ああ、貴方達は自分達を人族と言うんでしたっけね。 とにかくどうして人族は同じ人族を襲うのですか?」


 場違いな程のんびりと話しながら、ララエルと呼ばれたエルフの少女は特徴的な尖った耳をピンッと伸ばし、手にした細剣を巧みに振って襲いかかってくる男を牽制します。


「どうして人が人を襲うのかって? おっとっと! そりゃ哲学の話になるんじゃねえか? って事はそれは俺達冒険者じゃなくて賢者の領分だよ。 おりゃ!」


 エリックは襲ってくる盗賊と戦いながら適当に返事を返します。 何せ無視するとララエルは不機嫌になって戦ってくれなくなってしまうので仕方無く相手せざるを得ないのです。

 実際に以前無視したら怒って戦闘中にも関わらずスルスルっと木に登って拗ねてしまったのです。 それに機嫌直して貰うのすっごく大変ですしね。


「そいつぁーあれっすよ。 エルフだって腹が減ったら何か食べるっしょ? そう言う事っすよ。 っとっとっと! っぶねー」


 エリックに続けて赤髪の青年がそう答えながら前後から同時に振られた剣を軽やかにバック転で避けて、お返しとばかりに一人に一本ずつ首筋目掛けてナイフを投げつけます。

 赤髪の青年は革製の胸当てやリストガート等最低限の防具だけ着けて軽業師の様にくるくると飛び跳ねながら戦っています。

 そんな戦い方でもちゃんと周りの話は聞いるので二人の会話に混ざってきました。


「あなたは私達エルフを馬鹿にしているの? それとも私を馬鹿にしているのかしら?」


 ララエルは憤りながらも丁度サポートに来たエリックに敵を全部押しつけて後方に駆け出しました。


「ちょ!? ひでーし! それはそれにして、さっきチャスが言った事はかなり分かり易かったと思うぞ?」

「さすが兄貴、分かってくれましたかー」


 と、人族の青年二人はうなずき合いました。

 ちなみにチャスは百六十五程の背で、この世界の平均からすると少し小柄な線の細い《ただしひ弱と言う訳では無いのですが》そんな体付きのこれまた二十そこそこの人族の青年なのです。


 そのあいだに充分後方へ下がって敵との距離がとれたララエルは素早く弓に持ち変えて手頃な敵に向かって矢を放ちだしました。

 若く見えてもやっぱりエルフはエルフです。

 弓を持って生まれてくるとまで言われるだけあって、放つ矢はまるで最初からあたるのが決まってるかの様に一射また一射と、どんどんと敵を倒していきます。


「やっぱり外は分からない事だらけね。 もう少し丸耳族を理解しなければならないようね」


 ララエルはそう結論付けて敵への攻撃に集中する事にしました。




 ほどなくして、さすがに被害の大きさに怯んだ敵が口々に「だめだ!」「退け!」「割に合わねー」などと言いながら逃げ出します。


「逃がさねえよ!」

 三人相手に一進一退の攻防をしていたエリックは逃げに移った敵に追撃をかけるのでした。



「ふー、だいぶ逃がしたな。 チャス、奴ら何人位居た?」


 盗賊の気配がしなくなって落ち着きを取り戻せたのでエリックは張り詰めていた気を解きつつ問い掛けました。


「他の連中が受け持った所は正確には分からないっすけど、こっちに来たのは十二人っすね」

 馬車はもう一つ他のPTと一緒に守っているのですが、そのもう一つのPTの方を指さしつつ

「で、あっちはたぶん八人位だと思うっすよ」

 と続けました。



 そもそも彼らがどうしてこんな森の中で盗賊と戦っていたのかと言うと、彼らは冒険者と言われる人達で冒険者ギルドを仲介して様々な仕事を受けたり、秘境や危険な場所を探検して古代の宝や魔法の装備等を探したりして生計を立ててる者達なのです。

 そして今は行商の馬車を護衛する仕事を行なっているのです。



「噂より多いな。 ちょっと依頼人や後ろの奴らと今後の相談してくる。 軽く警戒しつつ休んでてくれ」


 このPTのリーダーはエリックなので彼は二人にそう声を掛けて

「わかったわ」

「了解っす」

 との返事を聞きながら依頼人の元へ歩き出すのでした。



「………………と、言う事ですので慎重に進んだ方が良いと思います。 【カララの町】へ到着するのは一日か二日位遅くなるかもしれません」

 とエリックは依頼主の商人ともう一つのPTのリーダーへ提案しました。

 それに対して依頼主達の返答は。


「ああ、仕方無いな」

 ともう一つのPTリーダーは同意を示してくれたのですが、それとは対照的に依頼主の方は、


「遅れるのは頂けないですねぇ。 まあどうしてもと言うのであれば仕方ありませんが一日遅れる毎に報酬が一割減るのをお忘れ無く」

 そう言う契約ですからね。 と小太りの中年商人はいやみったらしく言い捨ててさっさと馬車に戻って行ってしまいます。


「っち、気にくわねーな! 命より時間が大切なのかよ!」


「お互い契約する相手をミスったな。 まあ出来るだけ遅れずに行くしかないか」


 エリックは不機嫌さを隠そうともしない同業者に適当に相づちを打ちつつも、危険を犯してまで急ぐ気にはなれないのでした。












 わがままララエルさん。

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