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森のエルフは過保護さん  作者: rurura
森の村 《神官潰し編》
38/80

第38話 馬車の中で

前話から話が飛んでる様に見えますが一応これで繋がっていますです。






◆◇◆◇◆





「馬車! 馬車良いですね! はじめて乗りました!」


 サハラさんは生まれて初めて乗った馬車に大興奮でテンションうなぎ上り、落ち着き無く辺りをキョロキョロと見回してます。



 ここはカララの町から西に向かって延びている少し寂れた街道です。

 今はその道の先にある小さな村に向かう乗り合い馬車が動き出したばかりの所でした。



「え? サハラって馬車に乗った事無かったのね」


 この世界だと馬車はかなりポピュラーな乗り物なので、乗った事無いと聞いてララは驚いて聞き返してしまいました。



「無いのです~。 あ、だけど人力車なら乗った事あるよ!」

(修学旅行の時に一度だけ乗ったのです!)


 ふふ~ん! と意味も無く自慢げに胸を張って言うサハラさん。



「「「人力車!?」」」




 そしてそのサハラさんの何気ない一言は、会話に参加せず装備の手入れを行なってたリディさん達二人も含めて全員で驚愕しました。


(馬の代りに人に引かせるの!? ……サハラの国って、未だに奴隷制でもあるのかしら? それとも馬は暴れる事もあって危険だから全部使用人にやらせるのか……なんにせよ、サハラって思ってた以上に凄い国のお嬢様なのね!)


 またまた勘違いを深めるララエルさん。

 でもこれはリディさん達二人も盛大に勘違いしてるので、ララだけを責めるのは可哀相かもしれません。



 そして車内の雰囲気が微妙になってしまった事に気が付いたサハラさんは、またまた何か変な事をやらかしてしまったのかなと思って、少し大人しくしてる事にするのでした。


それから数時間後…………。


「う~、馬車って凄い揺れるんだね。 お尻が痛い……」



 馬車が走り出してから早数時間たちました。

 サハラさんは慣れない乗り物にすっかりやられてしまい、お尻や腰など体中が痛くなってしまったのでした。



 それでも一応サハラさんが乗っている馬車はお客さんを乗せる為に作られている物なので、幌の屋根や窓も付いてるし、座席にもクッションを敷いてあって、ララやリディさん達には“案外快適な馬車ね”なんて思われてる位だったりします。




「そうね。 この辺りは舗装された道じゃないからどうしてもこれ位は揺れちゃう物なのよ」


「そう言えば舗装されてません! 僕の住んでた国ってどこ行っても舗装されてたから快適だったんだね」




「「「え!? そんなに色々な場所が舗装されてたの!?」」」


 サハラさんの言葉に本人以外の三人が一斉に驚きました。

 この世界では……少なくてもこの国では舗装路なんて町中の貴族街や王都周辺の主要街道の一部くらいな物なので“どこ行っても舗装されてた”なんて驚愕以外のなにものでもありません。


(サハラってもしかしてすっごい大きな国のお姫様とかだったのかしら……)

 と、ララの勘違いが少し深まってしまいましたし、リディさん達からも“もしかして王都育ちのお嬢様なのかしらん?”と若干誤解されてしまったのでした。

 


「そ、そうなのね。 舗装路と比べたら乗り心地は悪いわね」

(それでもこの馬車はクッションも敷いてあるし快適な方だと思うのだけど……うーん。 そうよ! 膝の上に乗っけて抱いててあげればお尻痛めなくて良いわね!)


 馬車疲れですでにテンションが下がって来ちゃっているサハラさんを気遣うララなのですが、話してる途中で凄く良い事を思い付いちゃったので手入れ中だった弓をいそいそと片付けて服の埃をパタパタと叩いてから、いざサハラさんを呼ぼうとしました、が――



「サっちゃん、あたしクッション(座布団)二つ持ってるから一個貸したげるよー」


 言うが早いか、コトさんはボストンバックの様な形をした荷物の中からふかふかのクッションを一つ取り出してサハラさんに手渡しました。



「わ~、コトさん、ありがとうです! ララ、コトさんがクッション貸してくれました!!」

(コトさん、なんて準備が良いんですか! さすがにBランクの冒険者さんともなると馬車移動も慣れた物なのかな?)


 と言った具合にサハラさんは素直に感心してキラキラした目でコトさんにお礼を言いました。



「う……ん、良かったわね」

(…………あ……あの(コトさん)め! …………嫌いよ)


 すっかりタイミングを逃しちゃったララは、ガックリと肩と耳を垂れさせて、途中だった弓の手入れを再開するのでした。

 ちなみにサハラさんがお尻が痛いのとか腰が痛いのも治癒魔法で治せるって気が付くのはだいぶ経ってからの事でした。







*・*・*







 それからも順調にサハラさん達を乗せた馬車は進んで行き、だんだんと雑木林の様な明るく日が差す森から、暗くて深い自然のままな森になってきました。

 サハラさんはこれ程深い森は殆ど見た事が無いので不安になってきました。



 この時、時刻はすでに午後の二時を回っています。

 このまま進んでも夜の十一時頃には目的地に到着出来るのですけど、夜の森を移動するのは危険なので途中にある休憩所で一泊する事になっていました。

 ちなみに休憩所は二~三時間毎に一カ所作ってあって、馬用の水飲み場が設置されています。


 その中でも町と村の中間辺りにある一カ所だけは少し設備が整っていて乗客が休める様に簡単な小屋が立ててあります。

 馬車はその休憩所まで後三十分位の所まできました。





 …………来たのですけど――




「ところでララ、今って何処に行く馬車に乗ってるの?」




 ・




 ・




 ・





「「「え……今更!?」」」



 またしてもサハラさんの予想外な発言にララ達三人はびっくりハモっちゃいました。







 ララ達三人は輪を作って緊急会議です。



『ちょっとちょっと! お姉様説明してなかったんですか!?』


ヒソヒソ


『だ、だって私はアドニスと話してたじゃないの! って言うか、こう言うのは保護者の貴方が伝えるんじゃないの?』


ヒソヒソ


『そこで私に振るのね!? で、でも、あの場にサハラも一緒に居たし分ってるものとばかり思ってたわ』


ヒソヒソ



 お互いに顔を見合って牽制するも、結局順当にララがサハラさんへ説明する事に決まりました。

 あんまり楽しい種類の依頼じゃないので説明するのも気が進まないのです。








「えっと、サハラ。 この馬車が何処に向かってるかは知ってるのよね?」


 ララはとりあえず、さすがにこれは分ってるだろうと思う所から聞いてみたのですが、サハラさんはフルフルと首を横に振って答えてきました。


(あれれ、サハラは何にも知らずに一緒に来てたのね。 これは(いち)から説明しなきゃ駄目そうね)


「分ったわサハラ。 それじゃあ最初から全部説明するわね」



「うん、お願いです」



「えっと、今回の依頼を何で受けたのかと言うとね。 二つ理由があって、一つは単純にサハラのランクを上げる為なのよ。 もう一つの理由はこの依頼を達成すればギルドが色々と優遇してくれるって話になったからなのよ」


 アドニスさんの話によると、ギルド側はサハラさんのDランクへのランクアップと、指定した依頼を期限内に達成するのを条件に遺跡探査の許可を考えても良いと言っていたそうです。

 しかも、この依頼を達成すれば二つの条件の内一つはクリアした事になるのに加えて、即Eランクへアップ! しかもDランクへの必要査定も大幅緩和するって事を言っていたのでした。





「で、その依頼内容は“呪われた村の調査”なのよ」


 ちなみに“調査”するだけで良いのです。

 村人が何人居て、どんな状況になっているのか、その辺がある程度分れば達成と言う事になっています。



「の、呪われた村!? それって行っても大丈夫なのです?」

(な、何だか危険な香りがする依頼なのですよ!)


 


「何でも二月程前から村で原因不明の体調不良が起き出したらしいのよ。 当然、教会や薬剤ギルドに治療を頼んで治して貰ったんだけどね。 なぜか何度治療してもまたすぐに流行るし、挙げ句の果てには治療に来た神官まで同じ症状になったって話なのよ」


 しかも村から離れて暫くすると嘘の様に元気になっちゃうって事であっと言う間に“呪われた村”って言う噂が一人歩きしちゃったと言う事なのです。

 その噂のせいで旅人や商人も近寄らなくなってしまって、非常にまずい状況なのです。


 自分が呪われる危険をおかしてまで辺鄙な村を助けに行こうなんて物好きな神官も居らず、ただただ時間だけが過ぎているのでした。



「ら、ララ~。 それって凄く行ったらダメな依頼な気がするよ?」

(の、呪いって言うより……それって病気かなんかじゃないのかな? ……凄く怖いのです!)



「たしかに危ないわね……。 でも、その呪いって命に関わる程酷い物では無いらしいから大丈夫よ」



「そっか~、それならちょっとだけ安心です。 でもやっとなんで馬車で出掛けてるのか分りましたよ~」



 やっと理由が分ったよ~と納得したサハラさん、ララも説明が終わって少し肩の荷がおりた思いです。




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