第37話 PT結成
あれからサハラさん達は、善は急げとコトさんに急かされてギルドへPT登録にやってきていまいした。
それに今ならまだ混み合う時間では無いので待たなくても良いですし、なによりリディさん達のPTは悪目立ちするので出来るだけ人目に付きたくなかったと言うのが最大の理由だったりします。
と、言ってもまるっきり誰も居ない訳では無いので受け付けにもチラホラと人が居ます。
そんな時、待たなくて良い受付は何処かと言えばアドニスさん。
アドニスさんと言えば待たなくて良い受付。
とにかくそんな訳で全員でアドニスさんの所へ向かいました。
「おう嬢ちゃん、良く来たな。 こないだはほんと助かったぞ。 ありがとな。 ん? あれ、お前さんは……」
サハラさんが受付に立つと今日もアドニスさんは威勢良く声を掛けてくれます。
でも、そのすぐ横に居るリディさん達に気が付くと少し複雑な表情になります。
「久しぶりね、アドニス。 さっそくで悪いんだけど、今日はPTを組みに来たのよ。 この四人で登録して頂戴」
所でリディさんなのですが、悪い噂が広がって以来殆どクエストを受けていなかったので、ギルドに来るのもアドニスさんに会うのも久しぶりです。
「ああ、久しぶりだな。 元気そうでなによりだ。 で、嬢ちゃん達もそれで良いんだな?」
アドニスさんは確認の為にサハラさんとララに目配せします。
サハラさんはうんうんと頷いて返事をして、ララはぷいっと怒った顔でそっぽを向いて問題無い事を伝えました。
「分った、問題無いんなら登録するぞ。 手続き自体はすぐ済むよ。 しかし……なあ、リディアーヌさんよ。 俺は噂なんぞ信じちゃいないからそれについては何も言わんが、一つだけ基本的な事を確認しても良いか?」
アドニスさんは職業柄、一癖も二癖もある冒険者達を長年見てきたので人を見る目はかなり培われているのですが、そのアドニスさんからはリディさん達が噂で言われる様な人でなしには見えませんでした。
「なんです?」
リディは知らない間柄では無い人物に、噂は信じて居ないと言う言葉を言って貰って、知らず少しだけ機嫌良く答えました。
「ヒーラーの嬢ちゃんと組むって事は遺跡にまた挑む為なんだろ?」
「ええ、そうよ。 今度こそ最深部へ到達して秘宝を持ち帰るわ」
この町の東に広がる森、初めてサハラさんとララが出会った道がある森ですが、その森の奥には未だ誰も制覇して居ない遺跡がいくつも眠って居るのです。
そしてその遺跡には伝説級の秘宝が隠されているとまことしやかに言い伝えられていました。
ですので今までも数多のPTが挑み、そして失敗しているのですが、リディさん達もまたそのPT達の中の一つだったのでした。
二人は“今度こそ制覇してやる”と意気込み、やる気に満ちた眼差しをアドニスさんへ送るのですが――
「それは良いんだが……正直言って、遺跡へ入る許可はおりねぇと思うぞ?」
「「えぇぇ!?」」
まさに青天の霹靂です。
さっきまでのやる気が行き場を失って空回りします。
それこそまるで“玄関を開けた瞬間馬車に盛大に泥水掛けられた”みたいな感覚です。
「なぜよ!?」
リディさん達は待ちに待ったヒーラーをやっと見つけて連れてきたと言うのに、許可が出ないのでは意味がありません。
噛みつかんばかりの勢いでアドニスさんに理由を尋ねます。
「そりゃだってお前さん、そこの嬢ちゃんはFランクだぜ。 それにまだ一度もPT組んだ事無いどころか、獲物の一匹も倒してないと来たもんだ。 それに嬢ちゃんは今のところ町内の依頼専門だしな」
淡々とアドニスさんはリディさんへ理由を説明してあげます。
かなり基本的な事ではあるのですが、どうしてリディさん達がそこに気が付かなかったかと言うと、彼女達が今まで仲間にしたヒーラーはその職業の特性上、みんな壮年の冒険者だったので、その辺りの問題はPTを組む前にすでに解決しちゃっていたのでした。
「まあ、一応上に聞いてみるけどよ、ほぼ確実にダメだから覚悟しといた方が良いな」
そう言ってアドニスさんは、許可が出るか聞きにギルドの奥へ入って行ってしまいました。
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(ランクが低すぎるとか実戦経験が必要とか、冒険者にも色んな決まり事があるんだね)
サハラさんはギルドの奥に行ったまま中々返ってこないアドニスさんを待ちながら、なんとなく人事の様にそんな事を考えます。
そこからさらに十分近く待つとようやくアドニスさんが帰ってきました。
「結論から先に言うが、許可は出なかったぞ」
特に何でも無いとでも言うかの様に軽い口調でアドニスさんは告げます。
でも、リディさんとコトさんは凄くショックを受けた様で――
「そ、そんな……」
――と、ふらつきそうになりつつ近くの椅子に倒れ込む様に座りました。
「まあ待て。 本来ならそこで話は終りだったんだが、嬢ちゃんは特別だ。 こないだの騒ぎでかなりの手際だったのが上の連中の耳にも届いててなぁ。 二つの条件をクリアすれば良いって事に緩和してくれるそうだぞ」
アドニスさんが、今度はむすっとした顔で言いました。
内心そんな特別扱いは良く無いと思うし、なによりサハラさんが危険な遺跡に行くのに反対だと言うのもあったりします。
「本当!?」
リディさんは力無く座ってた椅子から勢い良く立ち上がって食いつきます。
「ああ、だけどそれでも結構大変な条件だぞ」
で、その条件はこんな感じです。
一つ、サハラさんのランクをD以上にする事。
二つ、指定した依頼を期限内に達成する事。
この二つの条件が提示されました。
が、二つと言ってもランクを上げる為には依頼を受けなきゃならないし、Dランクまでは適当な依頼だろうと何でも良いのでこなしていれば勝手に上がるので実質気にしなきゃならない条件はギルドから指定される依頼の一つだけなのでした。
「それで、その指定依頼ってどんな内容なのよ」
リディさんは、もうここまで来たら『まあ、どうせ本番前に何度か依頼受けて肩慣らしする必要があったし、ちょうど良いか』位の気持ちに考えを切り替えて気楽に行く事にしました。
「おう、それなんだがな―――」
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そんな訳で、サハラさんとララは、のんびりと買い物をしていただけの筈だったんですが、気が付いたらPTを組む事になって、さらに気が付いた時にはあっと言う間に予定外の依頼を受けると言う話しになってしまっていたのでした。




