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森のエルフは過保護さん  作者: rurura
カララの町 《雑用編》
17/80

第17話 雨降って地固まる?

◆◇◆◇◆





 あの後、宿屋に帰ってきてとりあえず二人とも水浴びして何とか落ち着きを取り戻しました。

 ララエルさん本日二度目の水浴びです、風邪引きそうですね。



 今は部屋のベッドに座って、ララがサハラさんの髪を拭いている所です。

 ララ自身も腰まであるロングヘアーなので一般的に言えばじゅうぶん乾かすのが大変な髪なのですけど、それにも増してさらにサハラさんの髪は凄く長いですし、ふわふわもこもこくるっくるな癖毛ですからもうびっくりする程乾かすのが大変なのです。


 ですので水浴びから出て来たサハラさんは水も滴るいい女……もとい、髪の毛を“ぞうきん絞り”したくなる程に水分を含んだ状態だったのでララが手伝ってあげているのです。

 サハラさん自身は何度もタオルで拭いたり絞ったりでぐったり力尽きちゃってたりします。



「サハラ、ごめんなさい。 今日は魔力が足りなくて魔法では乾かせないの、明日は大丈夫だからね」


 そうなのです、いつもはサハラさんにベタ甘なララエルさんが、精霊魔法を使ってパパッと髪の手入れをしてくれているのです。

 そう言う意味でもサハラさんはララと出会って居なかったとしたら凄く困った事でしょう。


 でも、今日はほんとにいっぱいいっぱいなのでそれが使えずに、今に至っています。



「いえ、むしろいつもありがとうです! 普通に乾かすのってこんなに大変だったんだね……」



 しばらくペタペタと髪を拭きながらのゆったりとした時間を過ごします。

 そして良い感じに髪が乾いてきた頃、サハラさんは今日の事を振り返って話しはじめます。



「ララ、今日は心配かけてごめんね」

(よくよく考えれば日本でも柄の悪い地域はあるし、そんな所の路地裏を一人で歩いてたら危ないですよね。 ちょっと反省です)


「うぅん、サハラが無事ならそれで良いのよ」


 そんな風にララは気にしないでと言うのですけど、ギルドでの大立ち回りや髪の毛ボサボサで汗だくな姿を見たらどれだけ心配して探し回ってくれた事か想像出来るだけに、サハラさんは申し訳なさで一杯になります。

 なんとかもっと感謝の気持ちを伝えられないかと思いつつ、何とは無しに足の上に手をおいたのですけど、その時ふとポケットの中の物に手が触れました。


「…………あ! そうだった! ララ、あのね。 ちょっと目を(つむ)って欲しいんだ」



「え、どうして?」



「まあまあ、い~からい~から~」



「う、うん?」



 何だか良く分っていないのですけどララは言われた通りに目を瞑ります。


 それを確認するとサハラさんはローブのポケットからガサゴソと昼間買った真鍮(しんちゅう)(くし)を取り出しました。


 そして、その櫛でララの髪を梳かし始めます。



「え、サハラ?」


 びっくりしてララが目を開けると、そこには優しく微笑むサハラさんが丁寧に髪を梳いていました。

 その表情にララはまたドキッとさせられてしまいます。



「ララ、いままでちゃんと言ってなかった気がするから言うね。 見ず知らずの僕を助けてくれてありがとう、ララが居なかったらきっとご飯も食べられずに途方にくれてたと思います。 それとこれ、僕からの感謝の気持ちです」


 サハラさんは持っていた櫛をそっとララの手の平に置いて、そのままララの手を握り続けます。


「今日も迷惑掛けちゃったし、たぶんこれからも色々迷惑掛けちゃうかもだけど……出来ればこの先も仲良くして貰えると嬉しいです」



(こ、これって……もしかしてサハラが出掛けてたのは私へのプレゼントを買う為だったの!?)

 注:誤解です。 単にウインドウショッピングに行こうとして迷っただけです。



「…………あ、ありがとう! すごく……すごく嬉しいわ! 大切に使うわね!」


 良い方に誤解しちゃったララは感極まって目尻にうっすら涙を浮かべ、サハラさんの手を握り替えして―――


「それに迷惑だなんてこれっぽっちも思ってないわ!」


 と、力一杯言い切りました。


「あはは、喜んで貰えてよかったよ~。 また明日からもよろしくです」


「ふふふ、よろしくね。 明日からも頑張りましょう」



 こうして波乱に満ちた一日もようやく終りを迎えました。



 ただ一つ問題だったのは、色々ありすぎてすっかり晩ご飯食べるのを忘れて居たのでした!

 仕方なくララが持っていた携帯食〈塩と砂糖が一杯入った乾パンもどき〉を二人で食べました。

 すごくまずい。







◆◇◆◇◆







 翌日、サハラさんとララは普段通りギルドへ来ました。

 そんな二人を満面の笑みで待ち構えていたアドニスさんは、見つけた端から開口一番に――


「よー、エルフの姉ちゃん! 昨日は嬢ちゃんと二人で男を取り合って刃傷騒ぎを起したんだってな!」


 なんて事を「がははははは!」と笑いながら大声で言い放ちました。

 おかげでギルド中から好奇の視線を向けられてしまいます。 困ったものです。


 でも実はもうギルドでは話題騒然で、面白可笑しく尾ひれはひれつけつつ爆発的に広がっているのでした。



「な、なんですかそれは!? わ……私はサハラを助けようと必死で!」


 ララは腹立たしいやら恥ずかしいやらで顔真っ赤にして反論します。


「あはは~、そう言う事になってるんですね~」


「おう、ほかにも色々なバリエーションがあるぞ。 例えば嬢ちゃんが実は不老長寿の種族で―――」


 だけどもう一人の噂の中心人物は案外へっちゃらで、アドニスさんに他にはどんな噂があるのか聞いて笑ってたりもします。

〈大体がサハラさんが童顔の悪女でララが一途なエルフって事になってる様です〉




「もぉー、サハラも何とか言ってあげて下さいよー」


 あんまりにもあんまりな噂なのでララはサハラさんにも怒ってと頼むのですが――


「まあまあララ、人の噂も七十五日だよ~。 気にしない気にしない~」


 ――やっぱりあんまり気にしてません。

 だけど実際に噂って鎮めようと思ってもどうにも出来ませんしね。

 諦めて自分も楽しんじゃった方がお得なのです。



「ララ、噂はしょせん噂なのです。 僕もアドニスさんも真実を知ってるんだから、それで良いじゃない」



「そんなものなのかなぁ……はぁ……そうかもしれないわね」


 しぶしぶですが、ララもそう言う話で納得する事にしました。




「ところでアドニスさん、今日は良い依頼ありますか?」


 一段落付いたのでやっと本日の本題に入れました。


「おう、まあ大体いつも通りの依頼が二つだな。 にしてもこの依頼はほんとに報酬安いな」


 アドニスさんは言葉尻にぽろっと本音が出ちゃいます。


「ちょ、ちょっと!!」


 その一言にララが焦ります!


「あ! あー、いや、気のせいだった。 まあ、それなりの報酬だな。 うん」








「……………………」







(ばればれです。 なに二人とも『危なかったぜー』みたいな顔してるんですか! 報酬が安いって思いっきりばれてますから~! そもそも何となく分かってましたしね……)


 二人とも隠しきったつもりで居ますし、しょうがないのでサハラさんは気が付いて無い振りをしつつ依頼を受ける事にします。



「えと……そのクエスト二つとも受けますのでお願いします」


「おうよ……手続き完了だ。 頑張って来いよ」


「はい、行ってきます~」



 怪我すんなよー、と言う声に手で答えながらいつも通り薬草を採りに行くのでした。




◆◇◆◇◆



 サハラさんも最近では慣れてきたので薬草の絵を見なくてもある程度は見分けられる様になりました。

 そのお陰で今日の依頼はかなり順調に終わらせられて、十五時にはギルドへと帰ってきました。


「はい、アドニスさん。 依頼の薬草各五キロずつです」


「おうよ、最近は結構早くなってきたな。 この分ならEランクへ上がるのもそう遠くなさそうだな」


「ふふ~ん♪ 当然です。 僕だってやるときはやるのですよ~」


 へへーん!と胸を張るサハラさん、そしてその後ろではウンウンと頷くララエルさん。


「はっはっは、さすがはこれからカララ支部を背負って立つ女だな! っとー、依頼の品、問題無さそうだな。 ほれ、報酬だ」


 アドニスさんは会話しつつも薬草の品質や量を確認していたのですが、問題が無かったので報酬の銅貨を手渡します。


「お~、今日は十八枚もある」


「今日のは品質も良かったからな。 少し割りましだ」


「やった~、ありがとうございます。 ところで、Eランクに上がるのって後どれ位かかるんですか?」


「あー、それかぁ。 そうだなぁ、それはエルフの姉ちゃんが教えてくれると思うぜ?」



「ふぁわえ?」


 不意打ちで話題を振られたララがすっごく変な声を出しました。

 どうも考え事をしてたみたいですけど……誇り高いエルフさんは出しちゃまずい声ですね。



「い、いいじゃない。 このままFランクの仕事してても! 毎日平和だし、安全だし、ね?」


 ララは丁度“このままじゃ近いうちにサハラのランクが上がっちゃうけどどうしよう”なんて考えてた所だったので焦って本音が出てしまいます。


「ぶ~ぶ~、僕は冒険がしたいのです! ずっとFランクの依頼をする位なら冒険者辞めてその辺のお店で働いた方がましです~」


 焦ったララがつい言ってしまった言葉にすかさずサハラさんは渾身の不満をぶつけてみます! ですが――



「あ、それいいわね! そうしましょう、私も冒険者なんて今すぐ辞めるわ。 そしたら二人で喫茶店でも始めましょうか?」

(私がコーヒー入れて、サハラがウエイトレス。 たまに言う事聞かない客は私が倒して……ああ、きっと楽しいわ!)


 なんて名案なのかしら、と言わんばかりにララが早速二人分の脱退届け用紙をアドニスさんに貰おうとしだしちゃいます。


「な、なんですと!?」

(が~ん、想定外の返しがかえってきちゃいましたよ? これはまずいです!)



「がっはっはっは! エルフの姉ちゃんにはかなわねーな!」


「む~、それはそれで楽しそうですけど~、僕は冒険するのです~!」


 サハラさんは頬を膨らませて抗議を続けるも今度は外野の冒険者達からも声が飛んできます。



「たしかにお嬢ちゃんには喫茶店のが似合ってるな!」

やら

「そいつぁ良い」

だったり

「姉ちゃん達が店開いたら通うぜー」

「俺も俺も」

「私なんて毎日行くわよー」

などなど、みんな楽しそうに話し始めちゃいました。


(う、う~ん、案外その方が良かったりするのかな~、とか思って来ちゃいますよ)


「むむ~、もういいです。 今日は帰ります!」


 そんなみんなにサハラさんはちょっとだけ拗ねてギルドから出て行きます。

 でもほんとは怒ってる訳じゃ無くて照れ隠しなんですけどね。

 そしてそれに気付いてるアドニスさんは――



「おう、またなー」


 と、いつも通りに送り出してくれるのでした。





ちょっとした裏事情

注:本編とは関わりません。


その1


実は髪を乾かしてくれるサービスもあります。

ララエルさんは世間知らずなのでそう言う細かい所を割りと知らなかったりするのです。


そしてサハラさんはロングヘアー慣れしてないので毎回髪を完全に濡らしてしまいます。


その2


喫茶店構想でララエルさんがコーヒー入れるって言ってるのですけど、ララエルさんは料理下手ですのでまともに入れれなかったりします。

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