番外編:天使が舞い降りた日
蛇足です。
ノリと勢いでやりました。
少し反省しています。
それは本編終了から数年後の話。
ーーー目と目があったらスタッフバトルっ!
それがステラティス家の使用人たちの合言葉だった。
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ことの始まりは、ある日の朝、
「俺とリーナに子ができた」
レグルスのその一言が始まりだった。
「魔法透視鏡で確認した所、双子らしい」
おおおっ!と歓声があがる。
使用人一同ホールに集められ、どんな重大発表だと思ったらとんでもない爆弾だった。
「そこで気は早いが世話係を決めたいと思う」
レオナールが言った瞬間、使用人が一斉に手を挙げた。
「私、お世話には自信がありますっ!」
「自分、体力には自信がありますっ!」
「俺は故郷に兄弟が5人いましたっ!」
「それを言うなら、私だって子供が2歳よっ!」
ざわつくホール。
………収拾がつかなくなった。
「私、魔法一眼レフ持ってますっ!毎日新鮮な写真を提供できますっ!」
と最近頭角を表してきたナンシー。
ーーー新鮮な写真ってなんやねん
つっこむ者はいなかった…。
「ナンシーにはまだ早すぎます。ここはメイド長の私が」
ずずいと前にでるマーガレットに、「お前にはお前の仕事があるだろう」と旦那で当家執事であるジョルジュ。
「話し合って決めるように」
レオナールのこの一言が使用人たちの魂に火をつけたのだった。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢
「くらえっ! 始まりの漆黒魔紋場のカード全てを汚染、10000のダメージっ!」
「くうぅっ! まだまだっ!
奇跡呼ぶ清廉の歌姫を召喚、闇を一掃するっ! 」
掃除をしていたはずのメイド2人が、いつの間にかお手製のカードゲームに興じている。
「なにをしているんですかね? 」
「……知らないほうがいい」
不思議そうなリーナの腰を抱き、レグルスは方向転換した。
熱狂は当分続きそうだ……。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢
それから数ヶ月
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リーナの部屋の廊下に椅子が置かれ、レオナールとディルゴが腰掛けていた。
その前をうろうろとレグルスが歩き回る。
部屋の中からは苦しそうなリーナの声。
「レグルス、落ち着け」
レオナールは言うが彼も貧乏ゆすりをしている。
隣でディルゴがため息をついた。
「魔法科学が発達した帝都で、そうそう滅多なことは起きんよ」
「俺の妻は産後に死んだっ!」
「母上は俺を産んで亡くなったっ!」
2人の声が揃う。それはそう。
「……そうじゃったな」とディルゴにはそれしか言えなかった。
どれだけの時間が経っただろうか…
突然、子供の泣き声が聞こえてきた。
「あ…」
と思った瞬間には、屋敷中に伝播し一斉に歓声が上がる。
「今夜パーティーだ」
「酒がうまいぞーっ!」
どこかで男性使用人が雄叫びをあげている。
きっと彼らは徹夜で飲み明かすのだろう。
しかし、翌日にはいつも通り仕事をしているのが、この家の使用人たちの化け物じみている所だ。
「リーナっ!」
「まだです、坊ちゃま」
レグルスが部屋に飛び込もうとするが、ドアの前でピシリと立つマーガレットに阻止された。
そんなマーガレットの瞳も潤んでいたことに気づいたのは執事のジョルジュだけだ。
しばらくして、二つ目の泣き声。
レオナールとディルゴも席を立ち、扉の前で待機する。
中から「どうぞ」と声がかかると、3人は文字通りマーガレットを押し除け部屋へと飛びこんだ。
産婆と婦人科医師が苦笑しているが、彼らはそんな事気にしていない。
「リーナ…」
愛おしげにレグルスが呼ぶと、リーナは「はい」と優しく微笑んだ。
彼女の両脇には一対の赤子。
元気に泣いている。
「あめでとうございます、元気な男の子と女の子です」
「男児…」
レオナールは膝をついた。
そして手を組み、天に祈った。
ーーー神よ、感謝します
レグルスが産まれ、妻が亡くなり、男手ひとつで……と言ってもメイドたちはいたが……育てていたレグルスが魔蝕紋に罹り、幾度も絶望した。
公爵家は自分の代で終わるか、親族に任せるしかない…何度もそう思ったが諦めきれなかった。
様々な事があった。
罪も犯した。
だが…
リーナと子供たちを見る。
涙が溢れた。
「ありがとう、ありがとう」
幾度も繰り返す。
「良く頑張ったな」
言ったのはディルゴだった。
彼もまた、涙ぐんでいる。
彼は研究に、こと魔蝕紋から1人でも多くの命を救うためだけに心血を注いできた。
国には認められたが、婚約者には見捨てられた。
結婚どころか、孫がいてもおかしくない年になってしまっていた。
研究と引き換えに全てを諦めてきた。
それがどうだろう。
血こそ繋がらないが娘ができ、その娘が孫を産んだ。
それも2人だ。
嬉しくてたまらない。
「じーじじゃぞ」
優しく語りかける。指を差し出す。
小さな命はそれを握った。
彼はそれが反射によるものだとわかっていた。
それでも嬉しかった。
すっかり出遅れ、レグルスは少しだけ不機嫌になった。
「名前は、俺が決める」
むすっと言うと、リーナは笑った。
「お願いします、パパ」
優しい声だった。
レグルスも堪えきれずに、リーナの手を取り泣き出す。
ーーーすばらしい光景ですっ!
そんな家族を見て、ナンシーは魔法一眼レフのシャッターを押しまくっていた。
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さらに3年後
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「よーぅ、チビども!今日も元気かー?」
1人の青年により、カーテンが開け放たれ、光が差し込む。
「おはよー、にーに!」
「おはよう、じゅりにぃ」
目覚めた子供たちは元気に青年に……ジュリアンの足元にまとわりつく。
数年前、過酷なスタッフバトルを勝ち抜いたのは、面白半分で参加したダークホース、マーガレットとジョルジュの息子のジュリアンだった。
……若者の参戦はずるいとの声があったが勝てば官軍。文句は言わせない。
「ジュリアン!使えるならその言葉遣いなんとかなさい!」
と、一番文句を言ったのはマーガレットだが。
結局治らなかった。
ジュリアンはガシガシと双子の頭を撫で、「じゃあ着替えるぞー」と雑な口調とは裏腹に丁寧に着替えさせる。
「にーに!今日は何ある?」
「じゅりにー!今日のご予定は?」
「今日か?!お祝いだ!チビ達のな!」
「おいわい?」
着替えて部屋を出る。
館中に花が、そして使用人達からのプレゼントであるぬいぐるみやおもちゃが飾らせている。
双子はわー、わーと喜んでいる。
「エリオット様、ルイーゼ様お誕生日おめでとうございますっ!」
クラッカーはまだ怯えるだろうと、フラワーシャワーで迎える。
「おめでとう」
待っていたリーナ。
「おかさまー!」
「ははー!」
双子が飛びつくと、変わらぬ笑顔で彼女は迎え、抱きしめた。
「さあ、祝おう」
レグルスが言う。
レオナールは声に出さずに泣いていた。
孫が生まれてからと言うもの涙脆い。
今日は双子の3回目の誕生日。
小さな天使がステラティス家を今日も駆け回る。




