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彼女は美しい。

星宮宵ほしみやよい:妖艶で美しく魅力的だが、多くの男を誘惑するミステリアスな女性。色白、華奢でスタイル抜群。ボブとミニスカートが良く似合う。

身長165cm、体重45kg、ウエスト58cm。艶やかな黒髪。くびれが効いたレイヤーボブ。八頭身は間違いない、完璧なる小顔。雪のように白い肌に、細長く形のいい脚。幅の広い綺麗な平行二重に目尻が少し上がった黒目の大きい瞳。鼻筋が真っ直ぐ通り、シャープなフェイスライン。キュッと上がった口角にハート形で立体的な唇。

白のワンショルダーブラウス、大きいベルトを付けた黒いプリーツミニスカート。首元には黒いレースのチョーカー。足元にはヒールの高い黒のロングブーツ。肩から白黒ドット柄のショルダーバック。

ー彼女は今日も夜の街を歩き、男を落としに行く。

古いビルの前で足を止め、地下に続く階段を下った。彼女のヒールの音だけが何にもない空間に響き渡る。地下には所々に穴が空いた木製のドアが1つだけある。彼女はリズムよく3回ノックした。するとドアノブの鍵が開く心地いい音がする。

「やっと来てくれたね、マイレディ。また会えて嬉しいよ。」

髭を生やしたスーツ姿の紳士が彼女を迎え入れる。彼女は口元を緩め、彼に抱きついた。

「その呼び方は辞めてって言ったでしょ、さぶちゃん。」

彼女の凛として透き通った声が三郎こと、さぶちゃんの耳元で響く。彼も彼女を受け止めて声高らかに笑い出した。いくつかの丸椅子と机、小さな冷蔵庫とベッドしか残っていない部屋に彼の笑い声が響く。

「そうだったな。でも君だって、さぶちゃんっていうあだ名を呼び続けてるじゃないか。」

「癖になってるみたいね。それにしても…どうするの?ずーっとここに引きこもり続ける気?」

彼女は近くに置いてある丸椅子に座って彼を見上げた。彼は高身長でスリムな男性だ。

「そんな話はいいんだよ。とりあえず、再会をお祝いして一杯飲もうじゃないか。」

「いいえ。」

彼女は大きく首を横に振った。優しい笑みを浮かべていた彼の顔が一気に曇る。

「私はその話をしに来たの。”そんな”話、じゃないわ。三郎さん、分かってるはずよ。」

「マイレディ…今日も君はあまりにも魅力的で困るよ。」

彼はゆっくりと彼女に近づいた。彼の右手が彼女の白い太ももに触れる。彼女は彼の右手を掴んでゆっくりと離した。

「話を反らさないで。今日も奥様と3歳のお嬢さんが首を長くして待ってるわよ?」

「私は君が好きなんだ。」

今度は彼女の細い腕を撫でる。彼女はもう一度彼の手をゆっくりと離した。

「今日も面接に行ってきたんでしょ?ちゃんと働く意欲があるじゃないの。奥様も許してくれるわ。」

「あいつはもう許してくれないさ。」

彼は彼女に背を向けて肩を落とした。彼女は彼の背中にそっと手を添え、耳元で囁く。

「許してくれるかどうかを決めるのは、三郎さん、あなたじゃない。奥様よ。ご家族と向き合うしかないの。それに…面接に行けてるってことは一歩踏み出せてるじゃない。」

彼はゆっくりと後ろを振り向いた。彼女の透き通った瞳と真っ直ぐな鼻筋をじっと見つめ、言葉を失っている。

「私と知り合ってから1か月経つのよ。あの日、道路で酔い潰れてた三郎さんとはもう違うでしょ?」

彼女がいたずらっぽく笑うと、彼は我に返って口を開いた。

「そうだったな…あの日は雨で君が傘を差し伸べてくれて。それから、ここに連れて来てくれたんだよな。最初は牢獄に入ってるような感覚だった。だが、君が来てくれたから私は生きてこられたよ。」

彼は彼女の頬に手を当てて口づけしようとした。すると彼女は彼の口に人差し指を優しく当てた。

「お礼は良いのよ…私からだけで。」

彼女は彼の頬に軽く唇を触れた。彼が唖然として自分の頬を撫でると、彼女は胸元から小さなカードを取り出して、彼のスーツの胸ポケットに差し込んだ。

「じゃあね、三郎さん。奥様とお嬢さんとお元気で。ごきげんよう。」

そう言い捨てて、彼女はさっと扉から出て行った。彼は一言も話すことができないまま、ただただ突っ立っていた。ベッドに腰を下ろし、彼女に入れられたカードを引っこ抜いてみる。真っ黒の中に白い筆記体の英語が書かれてあった。

「Nameless stars appear at twilight.」

彼は思わず笑みをこぼし、そのカードを胸に抱いた。


彼女は今日も煌びやかな夜の街を歩いて行く。

黒いVネックのTシャツに黒いショートパンツ。ちらっと見えるお腹に小さなへそピアスが輝いている。首からは十字架のネックレスを掛け、手首には銀の鎖ブレスレット、手には白いミニボックスカバン。ヒールの高い黒のショートブーツを履いても、彼女はヒールに負けずに歩いている。

いつの間にか周りにいるのは数人の怪しげな男たちだった。金髪、銀髪、赤髪、青髪とカラフルなヘアカラーをしている。みんなお揃いのダメージジーンズを履いて、ボロボロのビンテージシャツを着ている。

「そこの姉ちゃん、すごく可愛いね。俺たちと来ない?」

「もしかしてモデルさん?一緒に酒飲もうぜ。」

彼女は男たちをゆっくりと見回した。少しだけ口角を上げて、ハート形の唇を動かす。

「面白そうね。ご一緒するわ。」

「おーノリ良いね、姉ちゃん。俺たちに付いてきな。」

男たちはニヤニヤしながら歩き出す。彼女は前と後ろを彼らに挟まれながら歩いた。

「姉ちゃん、名前何て言うんだ?」

「あなたの名前は?」

彼女が質問返しすると、リーダーらしいその男は金髪の短い髪をポリポリ掻いた。

「まずは姉ちゃんから教えてくれよ。後で教えてあげるからさ。」

「嫌よ。あなたから言って。」

頑なな様子の彼女に男たちは大爆笑した。

「何だよ、そんなに名前が聞きたいのかよ。逆ナンされてる?俺ら。」

「ええ。きっと素敵な名前をお持ちだろうと思って。」

彼女が優しく微笑むと、彼らは一気に黙り込んだ。一言も話さないまま着いたのは、廃墟ビルにある簡易のクラブだった。ミラーボールの下で男も女も乱れて踊り狂っている。

「姉ちゃん、踊るのは好きか?」

金髪の男が彼女に手を差し伸べる。彼女は彼の目をじっと見つめて肩をすくめた。

「いいえ。私は見てるのが好きなの。」

「まあまあ、そんなこと言わずに俺たちと踊ろうぜ。」

他の3人の男たちも彼女を囲み始めた。それでも彼女は金髪男から目を離さずに口を開いた。

「じゃあ…まずはお手並み拝見したいわね。あなたたちがどんな踊りをするのか、見せてちょうだい。」

「何だ、この女。さっきから言うこと聞かねえな。可愛くないぜ。」

青髪の男が拳を握りしめて彼女に接近する。彼女は彼の頬に両手を当てた。

「可愛くない…本当に?」

彼は彼女の瞳に吸い込まれていく。すると赤髪の男が彼女の手を振りほどいた。

「こいつは痛い目に合わせねえとダメな女だな。俺らを舐め腐ってる。」

「いや、待ってくれ。その前に俺は彼女に触れたい。」

銀髪の男が赤髪を制して、彼女の腕を掴んだ。彼女は彼の手をゆっくりと離して、それから男たちを見回して口角を上げた。

「ここから面白くなりそうね。みんなで踊りましょう。」

「いや、姉ちゃん。踊るんだったらもっと良い場所があるんだよ。」

金髪の男がウイスキーの入ったグラスを彼女に渡す。彼女はウイスキーを顔から離して、小さく呟いた。

「人生なんてうまくいかないものよ。」

「は?急に何言ってんだ。」

赤髪が大声を出したが、彼女は静かに話を続ける。

「大切な人に見捨てられたり、愛情を受けられなかったり、劣等感に苛まれたり…。そんなもんなのよ。」

「まあ…そうだな。」

突然、金髪の男が切ない表情を浮かべる。

「俺らはいつも愛情に飢えている。本当の愛を知らずにここまで来たからな。」

彼の言葉に他の3人も俯いてしまった。彼女はグラスを近くのカウンターに置いて、凛とした声を出す。

「まだ諦めるには早いわ。あなたたちにはきっと、素敵なお名前があるはずなんだから。」

「名前…か。」

青髪の男がポツンと呟く。

「俺らお互いのこと、ニックネームでしか知らねえな。」

今度は銀髪。すると赤髪の男が頭をぐしゃぐしゃに掻きむしった。

「あーもう!そんな話は良いんだよ。過ぎたことなんて変えられねえんだから。姉ちゃん、俺らは今を生きてんだ。」

「素晴らしいことじゃない。」

彼女は赤髪の肩に優しく手を乗せた。男たちは目を丸くしてその光景を見つめている。

「過去に囚われずに今を生きる…それをできる人はなかなかいないわ。」

彼女の言葉に赤髪の男は目を伏せた。彼女は手を離し、ハート形の唇を動かす。

「でも、忘れてはダメよ。かつての輝きもまだ残っていることを。」

「そんなもの…俺らには何も…。」

金髪の男はそう言いながらハッとした。他の3人も顔を見合わせる。彼女は4人に背を向けて、数枚の小さなカードをばら撒いた。ミラーボールの光がそのカードに反射して、男たちは目をつむってしまう。

「じゃあね、カラフルな少年たち。今を大切にお元気で。ごきげんよう。」

彼女はあっという間にビルから消え去った。青髪の男が外に出て引き止めようとしたが、それでも彼女はもういなかった。

「何だよ…もっと彼女を知りたかったのに。」

唇をかむ彼に、銀髪の男が呟いた。

「このカード…英語が書いてるぞ。」

赤髪も金髪も真っ黒なカードを拾い、首を傾げた。

「読めねえな。全然分かんねえ。」

「ネーム…レス?字体が読みにくいな。」

すると、青髪の男がぼそっとした声で言った。

「Nameless stars appear at twilight.」

彼の英語の発音に3人は目を見張る。彼は3人を見ると、歯を見せて笑った。

「俺、昔アメリカに住んでたんだよ。だから英語は得意なんだ。あの頃の名前は…トムだった。」

「そうなのか!?何だよ、そんなすごいこと今まで隠しやがって。」

金髪の男が青髪の頭を叩いた。銀髪も赤髪も「おめえすげえじゃん。」と拍手を送る。

「そんで、この英語の意味は何なんだよ?」

金髪の問いに、青髪は神妙な面持ちになる。

「名の無い星は…宵から出る。」

「何だどれ。ことわざか?どういう意味なんだよ。」

銀髪の男がまた首を傾げると、赤髪がハッとしたように口を開いた。

「本当に重要で価値のあるものは、すぐに現れず最後の方に出てくる…たしか、そういう意味だぜ。」

「すげえな、おめえも。何でそんなこと知ってるんだよ?」

銀髪が目を丸くすると、赤髪は「ことわざ知るの好きだったんだよ。」と恥ずかしそうに呟いた。

「つまり…どういうことなんだよ?分かんねえな。」

金髪の男が難しい顔をすると、青髪の男は手をパンパン叩いた。

「まあ、そんな気にすんなって。とにかく今日は朝まで踊ろうぜ。見て見ろ、あっちにも可愛い姉ちゃんがうじゃうじゃいるし。」

「それもそうだな。よっしょ、楽しもうぜ!」

4人はようやく踊りの輪に入った。カラフルな頭がミラーボールの光に照らされて輝いている。


シルエットが美しい紺色のデニム生地ミニワンピース。襟に付けたピンクのリボン。髪には白くて細いカチューシャ。足元は丈の短い白い靴下に黒のローファー。手には茶色のハンドバッグ。

ー彼女は今日も夜の街を歩き、男を落としに行く。

彼女は街に繰り出していく。ネオンサインが光を放つ煌びやかな世界へ。


つづく

次回からは「彼女」の正体が徐々に分かっていくかも?しれません!乞うご期待です★

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