ナニワ商人は、石ころを「宝」に変えるファンタジー使いなのか?
アストレイド公爵邸の応接室。
エレオノーラの前に座る男は、派手な格子柄の羽織を纏い、胡散臭い笑みを浮かべていた。
「へえ、お初にお目にかかります。
手前、『ナニワ商会』の営業を担当しております、ヨサコイ・ナンデヤネンと申します。
以後、お見知りおきを!」
仰々しく名乗った男が、抱えていた風呂敷を机の上で広げる。
中から出てきたのは、禍々しいほど黒く、そして食欲を狂わせる香ばしい匂いを放つ瓶だった。
「……それが、例の『ソース』ですの?」
エレオノーラが、扇子で鼻先を仰ぎながら問う。
ヨサコイは「よぉ聞いてくれました!」とばかりに身を乗り出した。
「左様で! これは単なる調味料やありまへん。
異界の叡智を煮詰め、魔力を帯びた『黒いダイヤ』でございます。
これさえあれば、パサパサの保存食も、そこらへんの野草も、たちまち王侯貴族の御馳走に早変わりっ!」
ヨサコイは淀みない口上で続ける。
「ですが、今日の本題はこっちやありまへん。
エレオノーラ様……王宮の金庫、リリアーヌ様が『石ころ』に変えはったそうで?
実にもったいない!」
エレオノーラの眉がピクリと動く。
国家機密レベルの情報を、この男はどこで掴んだのか。
「……それが何か?」
「あれ、実は『石』やなくて、冷気を放ち続ける『永久凍土の核』に変質してますわ。
リリアーヌ様の校閲、凄まじいですなぁ!
……そこで提案です。
『冷える石』を使って、我が社のソースを絡めた料理を凍らせ、世界中に輸出びませんか?」
ヨサコイが懐から取り出したのは、丸い穴がたくさん開いた、見たこともない鉄板の図面だった。
「名付けて、『冷凍たこ焼き・ステラリア・ブランド』。
これで、空っぽの国庫を、金貨でパンパンにしてみせまっせ!」
【※注釈:このとき訓練と称して、騎士団がレイピアを構えて、たこ焼きをひっくり返すことになるとは、誰も想像していなかった】
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
リリアーヌのやらかした「石ころ」が、ステラリアに物流革命をもたらすことになるとは……。
そして、誇り高き騎士団の剣技が磨かれることに……。




