第27話 強くなりすぎた?ベーカリーズ、上級一歩手前の依頼に挑みます!
朝。
冒険者ギルドに入った瞬間。
「お待ちしていました」
受付嬢に声をかけられた。
「俺たちを?」
「はい」
俺たち四人が顔を見合わせる。
「何かありました?」
「先日のオーク討伐の件です」
「ああ」
「ギルド内で話題になっていますよ」
「……」
嫌な予感がする。
「ベーカリーズの皆さん、思っていたよりかなり強いんですね、と」
「そうなんですか?」
リリアーナが嬉しそうに聞く。
「はい。四人でオーク三体を討伐したという報告は、かなり良い評価になっています」
セレナが少し姿勢を正す。
「ということは……」
「はい」
受付嬢が依頼書を一枚差し出した。
【街道西部・魔物討伐】
【対象:グレートウルフ】
【危険度:中級上位】
【推奨人数:四名以上】
【報酬:銀貨五十枚】
「グレートウルフ?」
「通常のウルフより大きく、強力な魔物です」
ミリアが依頼書を読む。
「危険度は?」
「中級上位です」
「なるほど」
リリアーナが俺を見る。
「どうする?」
俺は三人を見る。
今まで戦った中では、一番強そうだ。
でも。
「やってみよう」
「賛成!」
リリアーナが即答する。
「私も」
ミリア。
「はい」
セレナ。
全員の意見が一致した。
「お願いします」
依頼を受ける。
◇
街を出る。
西へ。
街道沿いを進む。
「グレートウルフか」
俺は歩きながら考える。
「普通のウルフより速いんだよね?」
リリアーナが聞く。
「そう聞いてる」
「じゃあ、私の弓が役に立つね」
「頼む」
「任せて」
ミリアも杖を握る。
「魔法で足を止める」
「助かる」
「セレナは?」
「前に出ます」
即答だった。
「グレートウルフが速いなら、私が受け止めます」
「無理はしないでくれ」
「分かっています」
四人で進む。
以前なら。
こういう依頼を受けるだけでも少し緊張していた。
今は違う。
怖くないわけではない。
でも。
仲間がいる。
それだけで安心できる。
◇
しばらく進む。
「……止まって」
セレナが言った。
「いた?」
「はい」
俺も索敵。
「いるな」
「何匹?」
「一匹」
リリアーナが弓を構える。
「一匹だけ?」
「ああ」
「それなら」
セレナが剣を抜く。
「行きましょう」
森の中。
大きな影が動く。
グレートウルフ。
通常のウルフより一回りどころか、かなり大きい。
鋭い牙。
筋肉質な身体。
黄色い目。
「……」
こちらを見ている。
次の瞬間。
消えた。
「速い!」
リリアーナが叫ぶ。
右。
左。
木々の間を高速で移動している。
「セレナ!」
「はい!」
グレートウルフが飛び出す。
セレナが受ける。
ガキィン!
「くっ!」
弾き飛ばされる。
「セレナ!」
「大丈夫!」
すぐに立ち上がる。
「速いです!」
「ミリア!」
「分かってる!」
杖を振る。
「火よ!」
火球。
グレートウルフが横へ跳ぶ。
「リリアーナ!」
「見えてる!」
矢が飛ぶ。
グレートウルフが避ける。
「外した!」
「もう一度!」
二本目。
三本目。
グレートウルフが木の裏へ逃げる。
「見失った!」
俺は索敵。
「後ろ!」
振り向く。
グレートウルフが飛びかかってきた。
「くっ!」
剣で受ける。
重い。
爪が剣を押し込んでくる。
「こいつ……強い!」
身体強化Ⅱ。
力を込める。
押し返す。
グレートウルフが後ろへ飛ぶ。
「今!」
セレナが突っ込む。
剣速強化Ⅰ。
剣が閃く。
一撃。
二撃。
三撃。
グレートウルフが避ける。
「まだ!」
セレナが追う。
「ミリア!」
「任せて!」
炎が走る。
逃げ道を塞ぐ。
グレートウルフが横へ逃げる。
そこへ。
「もらった!」
リリアーナの矢。
肩に命中。
「当たった!」
「今だ!」
俺が走る。
グレートウルフがこちらへ向く。
牙。
爪。
速い。
だが。
反応速度強化。
見える。
身体強化。
受け止められる。
俺は爪を剣で受け流す。
「セレナ!」
「はい!」
横から斬撃。
グレートウルフの動きが止まる。
「リリアーナ!」
「了解!」
矢。
「ミリア!」
「これで終わり!」
炎。
四人の攻撃が重なる。
グレートウルフが倒れた。
「……」
静かになった。
「終わった?」
「索敵」
確認。
「周囲に他の魔物はいない」
剣を下ろす。
「勝ったな」
「勝ちました」
セレナが息を吐く。
「かなり強かった」
ミリア。
「うん」
リリアーナも頷く。
「でも、ちゃんと倒せた」
「四人だからだな」
「うん」
◇
討伐部位を回収。
依頼達成。
「……」
俺たちは顔を見合わせる。
そして。
「お腹空いた」
リリアーナ。
「だと思った」
俺は【食玩】を開く。
「何食べる?」
「ドーナツ!」
「またか」
「だって好きだから」
「私はクロワッサンサンド」
ミリア。
「私は……」
セレナが画面を見る。
「今日はハンバーガーにします」
「いいな」
俺は少し考えて。
「じゃあ俺はベーコンエッグサンド」
購入。
ポンッ。
四つの紙袋。
「いただきます!」
リリアーナがドーナツを頬張る。
「んー!」
表面の砂糖がシャリッと砕ける。
中はふんわり。
ほんのり温かい。
噛むほどに小麦の甘さが広がる。
「美味しい……」
リリアーナが幸せそうに笑う。
ミリアはクロワッサンサンド。
幾重にも重なった生地。
サクッ。
ハラリ。
噛むとバターの香りが一気に広がる。
そこへハムとチーズ。
「……これ、好き」
「気に入った?」
「うん」
セレナはハンバーガー。
ふわふわのバンズ。
厚いパティ。
シャキシャキの野菜。
ソース。
大きく口を開ける。
「いただきます」
ガブッ。
肉汁がじゅわっと広がる。
「……!」
セレナの目が輝く。
「美味しいです」
「だろ?」
「はい」
もう一口。
「美味しい……」
俺はベーコンエッグサンド。
焼いたベーコン。
半熟の卵。
柔らかなパン。
噛んだ瞬間。
ベーコンの香ばしさ。
卵の濃厚さ。
パンの甘み。
全部が混ざる。
「これは……」
思わず声が出る。
「うまい」
戦った後だから余計に美味い。
◇
食べ終わる。
カードを確認。
「さて」
一枚目。
【SKILL CARD】
【防御力強化Ⅱ】
「これは俺」
カードを持つ。
「使う」
光。
『【防御力強化Ⅱ】を習得しました』
リリアーナ。
【SKILL CARD】
【連射強化Ⅰ】
「これならもっと撃てる!」
使用。
ミリア。
【SKILL CARD】
【魔法射程強化Ⅰ】
「いいね」
使用。
セレナ。
【SKILL CARD】
【剣技強化Ⅲ】
「……!」
セレナが驚く。
「また強いカードだな」
「はい」
セレナがカードを見つめる。
「使います」
光。
『【剣技強化Ⅲ】を習得しました』
「……」
セレナが剣を握る。
「かなり強くなった気がします」
「俺もそう思う」
四人で顔を見合わせる。
「なんか」
リリアーナが言う。
「私たち、強くなりすぎてない?」
「……」
ミリアが考える。
「否定はできない」
「セレナなんて最初と別人」
「そうですか?」
「そうだよ」
セレナが少し困ったように笑う。
「でも」
俺は言った。
「強くなったなら、それでいいだろ」
「うん」
◇
町へ戻る。
ギルドで報告する。
「グレートウルフを一体……」
受付嬢が確認する。
「はい」
「お疲れさまでした」
報酬。
銀貨五十枚。
かなりの額だ。
「ありがとうございます」
依頼を終えた俺たちは、ギルドを出る。
「今日も稼いだ」
「何買う?」
リリアーナが聞く。
「夕飯だろ」
「パン?」
「パン」
三人が笑う。
俺も笑う。
「じゃあ、今日は少し豪華にしよう」
「何食べる?」
「ハンバーガー!」
「また?」
「だって美味しいから!」
「私も食べたい」
「私も」
「じゃあ決まりだな」
四人で歩く。
今日も。
ベーカリーズは依頼を達成した。
今日も。
俺たちは強くなった。
そして今日も。
パンを食べる。
冒険者としては。
かなり順調だと思う。
ただ。
最近一つだけ困ったことがある。
「……」
俺は財布を見る。
増えている。
確実に増えている。
それでも。
パンを買う。
カードが出る。
強くなる。
また依頼を達成する。
報酬が増える。
パンを買う。
「……」
これ。
もしかして。
俺たち。
永久機関みたいになってないか?
「アレン?」
「何でもない」
俺は笑った。
「帰ろう」
「うん!」
四人で宿へ向かう。
明日は。
また依頼を探そう。
そう思っていた。




