第25話 四人なら余裕?ベーカリーズ、ちょっと強めの依頼に挑戦します!
休日が終わった。
そして今日は。
久しぶりに、少し難しい依頼を受けることになった。
「これにしよう」
冒険者ギルドの掲示板。
俺が選んだのは一枚の依頼書だった。
【街道北側・魔物討伐】
【対象:ゴブリン、ウルフ、ホーンラビット】
【危険度:中】
【推奨人数:四名以上】
【報酬:銀貨二十枚】
「四名以上……」
セレナが依頼書を見る。
「ちょうど私たちですね」
「ああ」
リリアーナが笑う。
「ベーカリーズにぴったり!」
ミリアも頷く。
「やってみよう」
「よし」
依頼を受ける。
俺たちは町を出た。
◇
「昨日休んだから、今日は頑張れそう」
リリアーナが言う。
「お前は昨日も元気だっただろ」
「それとこれとは別」
「そういうものか?」
「そういうもの」
セレナが笑う。
「リリアーナさんは元気ですね」
「セレナも慣れてきたね」
「はい」
「よかった」
四人で歩く。
以前なら。
俺の隣にはミリアとリリアーナ。
そして少し後ろにセレナ。
今は違う。
四人が自然に横並びで歩いている。
パーティーとして。
ちゃんと馴染んできた。
「アレン」
「ん?」
「前方」
セレナが言う。
「何かいる?」
「はい」
俺も索敵を使う。
「……いるな」
「数は?」
「十匹くらい」
「予定通り」
セレナが剣を抜く。
リリアーナが弓を構える。
ミリアも杖を持つ。
俺は剣を握った。
「行くぞ」
◇
魔物が現れた。
ゴブリン。
ウルフ。
そしてホーンラビット。
種類が混ざっている。
「まず後衛を狙わせない!」
俺が前へ出る。
ウルフが飛びかかってくる。
受ける。
そのまま横へ流す。
「セレナ!」
「はい!」
セレナが横から斬り込む。
身体強化Ⅰ。
俊足Ⅰ。
反応速度強化Ⅰ。
以前とは動きが違う。
速い。
しかも無駄がない。
ウルフの攻撃を紙一重でかわす。
斬る。
倒す。
「一匹!」
「いいぞ!」
俺も一匹倒す。
「リリアーナ!」
「任せて!」
矢が飛ぶ。
ゴブリンの腕を射抜く。
次の矢。
胸に命中。
さらに一匹。
「三!」
ミリアが詠唱する。
「火よ!」
炎が地面を走る。
ゴブリンが吹き飛ぶ。
「残り!」
「私が行きます!」
セレナが走る。
俊足Ⅰ。
その速度はかなりのものだった。
ホーンラビットが突進。
セレナは横へ跳ぶ。
反応速度強化Ⅰ。
角を完全に見切っている。
「そこ!」
斬撃。
ホーンラビットが倒れる。
「終わり!」
静かになる。
「……」
俺は周囲を見る。
「全部倒したな」
「早かった」
ミリアが言う。
「前よりずっと」
リリアーナも頷く。
「セレナが強くなったからね」
「皆さんのおかげです」
「俺たちも強くなってるけどな」
カードのおかげ。
ここ数日。
毎日のようにスキルカードを使ってきた。
その積み重ねが、少しずつ形になっている。
◇
依頼の討伐対象を探しながら進む。
しばらくして。
「……」
セレナが足を止める。
「どうした?」
「前方に何か」
「索敵」
俺も確認する。
「魔物だ」
「何匹?」
「……かなりいる」
集中する。
「二十……いや、三十近い」
「多い」
ミリアが呟く。
リリアーナが弓を握り直す。
「どうする?」
俺は考える。
三十。
普通ならかなり厳しい。
でも。
今の俺たちは違う。
「やる」
「アレン?」
「依頼対象だ」
セレナが頷く。
「分かりました」
「無理だと思ったらすぐ下がる」
「はい」
四人で進む。
◇
木々の向こう。
大量のゴブリン。
その中にウルフ。
ホーンラビット。
予想より多い。
「……多いな」
「本当に」
リリアーナが息を呑む。
「でも」
ミリアが杖を握る。
「私たちならやれる」
「そうだな」
俺は剣を構える。
「行くぞ!」
リリアーナが最初に撃つ。
矢が飛ぶ。
一体。
二体。
三体。
魔法。
「火よ!」
爆発。
一気に数が減る。
「セレナ!」
「はい!」
セレナが飛び込む。
速い。
斬る。
避ける。
また斬る。
俺も前へ出る。
剣を振る。
一体。
二体。
三体。
魔物の数がどんどん減っていく。
「右!」
セレナの声。
「分かってる!」
俺が攻撃を受ける。
横からセレナ。
斬撃。
「助かった!」
「こちらこそ!」
リリアーナの矢。
ミリアの魔法。
四人の攻撃が途切れない。
十匹。
八匹。
五匹。
三匹。
そして。
最後の一匹。
セレナが斬った。
ドサッ。
終わった。
◇
「……」
四人とも黙っていた。
周囲には魔物の姿。
だが。
もう動くものはいない。
「終わった?」
リリアーナが聞く。
「索敵」
確認。
「終わった」
「やった!」
リリアーナが拳を握る。
ミリアも息を吐く。
「かなり倒した」
「うん」
セレナが自分の剣を見る。
「……」
「どうした?」
「以前の私なら、途中で動けなくなっていたと思います」
「でも今は?」
「まだ動けます」
セレナが笑う。
「カードのおかげですね」
「それだけじゃない」
「え?」
「セレナ自身が強くなったんだよ」
「……」
「カードはきっかけだ」
セレナが少し黙る。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
◇
依頼達成。
俺たちは街道脇で休憩することにした。
「……」
全員が俺を見る。
「何?」
「お腹空いた」
リリアーナ。
「私も」
ミリア。
「私もです」
セレナ。
「……」
まあ。
そうなるよな。
「じゃあ昼飯にするか」
【食玩】を開く。
「何がいい?」
「今日は甘いの!」
リリアーナ。
「私はサンドイッチ」
ミリア。
「私は……」
セレナが画面を見つめる。
「これがいいです」
【カツサンド】
「おお」
俺は少し驚いた。
「それは絶対美味いやつだ」
「はい」
俺は自分用に。
【チーズバーガー】
購入。
ポンッ。
紙袋が出現。
四人で昼食。
セレナがカツサンドを取り出す。
厚切りのカツ。
きつね色の衣。
その下には柔らかな肉。
ソースがたっぷりかかっている。
「……」
セレナがじっと見る。
「食べないの?」
「少しだけ見ていました」
「早く食べないと冷めるぞ」
「はい」
両手で持つ。
「いただきます」
ガブッ。
ザクッ。
衣が音を立てる。
次の瞬間。
肉の旨味。
甘辛いソース。
ふわふわのパン。
全部が一緒に口へ入る。
「……!」
セレナが目を見開く。
「美味しい……」
「だろ?」
もう一口。
ザクッ。
肉汁。
ソース。
パン。
「これは……」
セレナが幸せそうに目を細める。
「今まで食べたパンの中でも、かなり好きです」
「カツサンドは強い」
「はい」
リリアーナも甘いパンを食べる。
「こっちも美味しいよ!」
ミリアはサンドイッチ。
「これも」
「みんな満足そうだな」
俺はチーズバーガーにかぶりつく。
ふわふわのバンズ。
肉汁たっぷりのパティ。
とろりと溶けたチーズ。
そこへソース。
噛んだ瞬間。
肉の旨味とチーズの濃厚さが一気に広がる。
「……うまい」
これだけ戦った後なら。
なおさら美味い。
◇
食べ終わる。
カードを確認する。
【SKILL CARD】
【攻撃力強化Ⅱ】
「これは俺が使おう」
カードを持つ。
「使う」
光。
『【攻撃力強化Ⅱ】を習得しました』
リリアーナ。
【SKILL CARD】
【遠距離命中強化Ⅰ】
「これ欲しかった!」
すぐ使う。
ミリア。
【SKILL CARD】
【魔法威力強化Ⅰ】
「いいカード」
使用。
そして。
セレナ。
【SKILL CARD】
【剣技強化Ⅱ】
「……!」
セレナが固まる。
「すごい」
「いいカードだな」
「はい」
セレナがカードを握る。
「使います」
光。
『【剣技強化Ⅱ】を習得しました』
「……」
セレナが剣を見る。
「もっと強くなれそうです」
「よかったな」
「はい」
四人とも。
確実に強くなっている。
◇
町へ戻る。
ギルドで報告する。
受付嬢が討伐数を確認する。
「……こんなに?」
「はい」
「四人で?」
「そうです」
受付嬢が少し驚いている。
「すごいですね」
「たまたまです」
「いえ、これは十分な成果ですよ」
報酬を受け取る。
銀貨二十枚。
「ありがとうございます」
ギルドを出る。
夕方。
町の通りを四人で歩く。
「今日はかなり稼いだな」
「うん」
「何か買う?」
リリアーナが聞く。
「いや」
俺は笑った。
「今日は夕飯を豪華にしよう」
「賛成!」
「賛成」
「はい」
即答だった。
「じゃあ【食玩】で好きなものを買おう」
「本当に?」
「金はあるからな」
三人の顔が輝く。
「何にしようかな!」
「迷う」
「私はカツサンド……」
「まだ食べるのかよ」
「美味しかったので」
セレナが真顔で答える。
俺は笑った。
こうして。
俺たちは今日もパンを食べる。
そして。
カードで強くなる。
冒険して。
稼いで。
また美味しいパンを食べる。
そんな毎日。
ベーカリーズの四人で過ごす日々は。
思っていた以上に楽しかった。
「アレン!」
「ん?」
「早く帰ろ!」
「分かったよ」
俺たちは夕暮れの街を歩いていった。




