表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/14

食い違う主張

「ねえ、お兄さま」

「……安定するまで少し待て」

「まあ、お兄さま!すごいわ!もう新しい魔法を覚えなさったの!?」

「当然だ。俺を誰だと思ってる」

「素晴らしいですわ〜!」


いついかなる時でも褒めを忘れない。これがお兄さま攻略の基本ね。

両手を光らせたお兄さまは明かりを灯す魔法を実践しているところだ。

今、私とお兄さまは魔法の授業の真っ最中。教師が少し席を外したので、こっそり話しかけていた。

本来、魔法は十五歳から入学する学園で学ぶものなのだけど、魔力……魔法を使える人間に備わっているそれが多すぎると、感情の昂りなどによって魔法の暴発が起きることがある。それを防ぐため、魔力が高い場合は幼いうちから魔力のコントロールを覚えておくのだ。

ちなみに、魔法が使える人間は貴族に多い傾向があり、王家の血を引く私なんかはめちゃくちゃ魔力が多い。お兄さまも私ほどではないけど多かったため、この授業に関してはお兄さまの乱入ではなく初めから一緒に受けている。


「これくらい別にどうってことないだろ……。それで?なにかあるのか」

「そうなんです!」


私の褒め殺し攻撃が効いて、お兄さまも最近はちょっとデレるようになってきた。いい傾向である。

それを満足気に眺めてから、私は本題を切り出した。


「今度、お母さまと精霊の森に行こうって話してるんです。だから、お兄さまもどうかなって」

「……遠慮しておく」

「えっ!?」


そりゃあ従者を連れて行くとはいえ、私とお母さまを二人で行かせるなんて絶対に許さないと思っていたから、私は驚きの声を上げてしまった。


まさか、お母さまの言っていたことは本当なの……?


「ど、どうしてです?お母さまもお兄さまがいらっしゃれば喜ぶでしょうに」

「そんなわけないさ。俺がいないほうがあの人は喜ぶ」

「えっと……?」

「……俺がそばにいるだけで、母上は辛そうな顔をする。きっと、あの家での仕打ちを思い出されるんだろう。俺が、こんな姿で生まれたばかりに……」

「で、でも、お母さまは別に浮気なんてされていないわけでしょう?」

「当然だッ!!……あ、ああ、怒鳴って悪かった。お前に怒ったわけじゃないんだ」


私が肩を揺らすとお兄さまは驚くほど素直に謝る。ツンツンする余裕もないらしい。

お兄さまとお母さまの主張は微妙に食い違っているけど、不貞に関しては私もお母さまはやってないと思っている。

前世に読んだ設定資料集に『してない!!』ってビックリマーク付きで書いてあったし、なによりお父さまには浮気をする暇がなかったと思う。

私も産みの母の思い出と称して聞かされた程度のことだけど、母はお父さまにいつでもベッタリで、領地の視察でお屋敷を離れる時も絶対について行ったくらい片時も離れなかったらしい。

そんな中で別の家に嫁いだお母さまと逢瀬をするなんて分身でもしないと無理だ。


「俺のせいで母上の心に負担をかけたくない」

「そんなこと言わないでくださいまし。お母さまはお兄さまのことをちゃんと愛しておいでよ」

「だけど!」

「何か事情があるのでしょう。話してくださるまで、待ちましょう。私はずっとお兄さまの味方ですから。ね?」

「そ、うだな……」


よくわかんないからとりあえずお兄さまの好感度が上がりそうなことを言ったんだけど、選択肢的には正解だったみたいで、お兄さまは目に見えて安心したような顔をする。

……きっと、母親が自分を嫌ってるなんてこと誰かに否定してほしかったんだろうな。まだ子どもだし、当然だ。私としてもお母さまが本気でお兄さまを嫌っているとは思えないので、全くの嘘というわけでもない。

この辺はデリケートな話題であるし、今後は頭に入れて動こう。うまくいけば、家族全員からの好感度が上がる重要イベントになること間違いない。


「それより、お前。今日はずっと眠そうだけど、夜ちゃんと寝てるのか?」

「え……?えへへ……」

「寝てないのか!」


しまった、バレた。

お兄さまの好感度が上がってきた弊害としては、そっとしておいてくれないこと。病弱な母がいるお兄さまは、めでたく家族認定した私の体調にも敏感らしく、くしゃみひとつでさえ大げさなほど心配してくるのだ。


「す、少し夜更かししてしまって。でも、今日はちゃんと寝ますから」

「……ならいいけど。あんまり心配かけさせるなよ」

「お兄さま、心配してくださったんですか!?」

「父上や母上にだ!勘違いするな!」


お兄さまは否定するけど、顔が真っ赤だから照れ隠しなのがバレバレだ。


私が寝不足なのは徹夜して泉に沈める予定の作品を仕上げていたから。

何を作るかは迷ったんだけど、女神だし女性が喜びそうなものをということで、総レースのストールを作った。水に濡らしていいものかとも思ったけど、刺繍の先生も自分の作品で泉チャレンジしたらしいし、大丈夫なんだろう。ちなみに、先生は食べると目の疲れが取れるフルーツをもらってよく効いたそうだ。手芸って目も疲れるもんね。

ストールは我ながらいい出来で、今から何をもらえるのか楽しみだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ