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傑物の一族の傑物ですが、なにか?  作者: 猫側縁
第3章 学生 シエル
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第38式



皆元気に行こう!と手を挙げて跳ねた私に同調してイェーイ!と跳ね回ってくれたのは残念ながらケットシーだけだった。


やあやあ皆様ご機嫌よう!夜になって多少眠くてテンション上がってるシエルちゃんだよ!


「……シエル嬢、元気だねぇ……?」

「おじいちゃんが年寄りなだけじゃない?」

「ぐっはぁ!辛辣だよぉおお!」

「そこ2人、静かにしてください」

「「はーい」」


仲良く騎士団長さんに叱られた。仲良く返事をしておこう。クラウスの第3騎士団の団長だって。デュオ・マクノアさん。


聞き覚えがある人、素晴らしい記憶力だね!私なんて傅かれて、その節は部下が失礼致しましたと言われて、深淵の迷宮を配下におさめた際に迷宮核の紋章を確認した騎士だった気がするとノクターンが教えてくれなかったらずっと忘れてたわ。


「攻略者様、グラーティアス様、これから襲撃犯への取り調べ及び処分の言い渡しを行いますが、今回のお二人の同席は異例な事です。出来る限り、大人しくお願い致します」

「「はぁ〜い」」


……いや、あの、相手が何もしなければ本当に私も大人しくしてるので、そんなに胡散臭そうに見ないでいただけます……?


現在私達は、学校の教員区域の懲罰部屋……ではなく、王城により近い騎士や魔術師たちの研究所や鍛錬場があるエリアに来ていた。

彼女、重要参考人だから、セキュリティが更に厳しい場所に移動させてしまった方がいいって第二皇子殿下が言ったらしいよ。

まあ、学校だと最悪逃せるし逃げ出せちゃうもんね。


「シエル嬢、元気すぎやしないかい?」

「うん。眠いけど。身体が軽い。物理的に血が抜けたせい?」

「そっかぁ、血の分軽いのかぁ。……メイたちが質の良い肉とか魚を今朝発注してたなぁ」

「質の良い肉?何の肉?ワイバーンのお肉?」

「食べてみたいのかい?」

「いや、どちらかと言えば牛肉のシチュー食べたい」

「……朝からは重いかなぁ」

「……やっぱりおじいちゃん、歳が……」


「黙ってください」「「はぁ〜い」」


どうやらお喋りも禁止にされたようだ。大人しくしてたんだけどな。


「こちらのお席にどうぞ」


部屋に入ってすぐの高級感あふれるソファーに私とおじいちゃんが揃って座る。マクノアさんやその他護衛の騎士達がすぐ側に控えた。

ソファーの前のローテーブルにはお茶とお菓子が用意されてる。……これ、時間的に夜食になるのかな。明日の朝ごはん少し遅めで良いかな?


お茶にだけ口をつけて待っていると、部屋の奥側……私たちが座っているソファーが対面していた幕が開いていく。元々大きな部屋を幕で二つに分けて、手前側に私たち、奥に……彼らがいるのだろう。案の定、敷物を敷いているとはいえ床の上に拘束された状態で3人が膝をつかされていた。

一瞬やりすぎでは?と思った方がいるかもしれないけど、案内係を偽った2人がやったのは、ただの妨害行為じゃない。

簡単にいうなら文武両道超エリートな騎士団の隊長クラスだけで作られた特別なチームが待機している戦場に、武器も準備も無い状態で丸腰の一般村人を敵として放り込むような事をしたし、

女子生徒に至っては、私を殺そうとしたからね。殺人未遂及び傷害罪並びに禁術行使による法律違反。ぶっちゃけ私じゃなければ死んでた。それはあの場にいた誰もが思う事だろう。

実際ミティ達も、私が死んだかと思って1日目は無事だと分かっても心配が勝って食事が喉を通らなかったらしい。

だから今朝あんなに抱きついてたのね。うんまあ、麗しい女の子たちに囲まれて、しかもそれが私の事が大好きっていう人たちなら大歓迎だし嬉しいし、たくさんの花達に囲まれている私を見る男子達の羨ましさと心配が入り混じった微妙な顔がまた楽しかったからいいんだけどね。それにしてもミティ達めちゃくちゃ良い子だね。私をそこまで心配してくれるだなんて……。初対面の時の典型的な令嬢ミティが懐かしい……。あの子今ではリリィさんとも仲良くしてるんだよ。子供の成長って早いねぇ……。


……じゃなくて、今は処分の話か。

兎に角、3人はかなりの重罪なんだよねぇ。彼らは貴族だから、相手が私ではなく、平民の特待生くらいだったら、色々揉み消して停学又は退校で済んだかもしれないんだけど。

……貴族様だからね。不快に思うだろうけど、よくあるんだよ。妻も子供もいる最低な貴族が、その辺の平民の女性に手を出して最終的に殺すとか。しかも罰せられる事はほぼない。たとえ貴族夫人でも爵位が男爵とか準男爵とかだと夫公認で高位貴族の下衆に差し出される事もある。平民、女性、子供。……弱い者の三大名詞ってよく位置付けられる。その理不尽を是正する社会を各国の王様は作ってくれれば良いのにねー。……ああ、そういや……それでいったら私は三大名詞全てに当てはまるよね!

シェリティアちゃん、じゃなくて、シエルちゃんね。

あ、久しぶりに自己紹介が聞きたい?しょうがないなぁ。


私、シエル。孤児で平民で根無草な旅人だった女の子!元々は貴族だったんだけど、ちょっと国の中で色々あって面倒になったから逃げてきちゃった!さらに色々あって現在は帝国の魔法学校に通っていて、ついでに准教授もやってるよ!

孤児で平民で女児っていう三大弱者名詞にバッチリ当てはまってるけど、壁はぶち壊し敵は捻り潰して今日も逞しく生きてます!

よーろしっくねー!


……こんな感じ?そもそも私自己紹介をするようなキャラだっけ?え?軸がブレブレ?さーせんしたー。……ああ、物凄くどうでも良い時間を消費した気がする。話を戻そうか。


まあ戻したところで結局、彼らがやった事は超重罪なのでかなり重い罰が待ってまーすってことだけなんだけど。ついでに平民で女児な私は複数迷宮攻略者っていう超重要人物なので、貴族だからって許してもらえないっていうだけの話なんだけど。


「シエル様の御身を害した貴様らに対し罰を言い渡す。案内係を偽った2人は身分剥奪。シエル様の命を手にかけた貴様は終身刑に処す」


……まあ、妥当だよねぇ。それで良いとは一言も言ってないけど。


「何か言いたい事はあるか?」


それが罪人達に向けられている言葉だとは重々承知の上で、私とケットシーは声を揃えて異議あり!と叫んだ。

まさか被害者から声が飛んでくるとは思わなかったのか、罰を言い渡した騎士の人や他の人達も唖然として私たちを見ている。おい3人。逃げ出すなら意識の逸れたこの今だぞと思ったけどそれは言わない。


「シエル様、あの……」

「邪魔してごめんなさい。でもそれは罰になるの?被害者が納得しない罰はただの私刑であって罰じゃないよ」

「……遮ったのはびっくりしたけど、その通りだねぇ。先ずはシエル嬢に確認があると思ったんだけどなぁ」


ねえ?と、おじいちゃんがマクノアさんに視線をやれば、すぐ様マクノアさんが、罰を言い渡した騎士を呼び寄せた。持っている書面には校長、護衛隊長、それからクラウスのサインが入っている。うん。王命じゃないなら、いいよね?


「シエル様の命を奪おうとし、実行した犯人に対しての怒りが収まらないとは思いますが、これ以上の罰は存在しないかと存じます。……お気に召しませんでしたか?」

「マクノアくん。先ずはシエル嬢の要望を聞こうじゃないかぁ」

「要望?ご要望がおありでしたか。失礼致しました。なんなりと」


さ、いいよ?とおじいちゃんが言うので、遠慮なく話させてもらおう。


「先ず私の妨害をしてくれた2人は、無罪放免は流石にまずいから反省文の提出と1ヶ月間停学で自宅謹慎ね」


余程私の言ったことがショッキングだったのか、マクノアさんが何か言いそうになっておじいちゃんにお黙りと窘められていた。


「次に、魔術クラス首席だけど……。そもそも何で私を狙ったの?」


敢えて近付けるギリギリまで来てその顔を見下す。なるべくあの闘技場で私が見下ろしていた時と同じに見えるように。案の定彼女は嫌悪と憎しみの入り混じった目で私を睨んだ。すぐ様護衛の人たちが間に入ろうとするけど、それを手で止める。冷静さを欠かせる事が目的なんだから、彼女の視界に私以外が入るなよ。


「……んで、よ」

「はぃ?」

「なんでっ……!何で今になってアンタみたいなのが入ってきたのよ!?

アンタが来てから散々っ……!私は首席なのにアンタと比べられて劣ってるって!?

せっかくお父様にも認められたと思ったのに、アンタが来たせいでまた私はっ…!!」


彼女の父親は現在魔法騎士団所属らしい。つまり魔法のエキスパートか。なーるほどー。爵位的な問題で隣のクラスなのか。

で、おそらく魔法が得意な厳格な父親は彼女に見向きもしないから、魔法でトップになって認めてもらいたかったのに、このままでは首席は私に取られてしまうと思ったと。ふーん、成る程。……実際私が首席じゃなくても、私が1学年からいたら首席にはなれてなかっただろうと周囲は予想がつくから、どちらにしろ惨めだと?へぇー。


「……実際そうなった時に嘲笑われる姿より、今の君の姿の方が多分惨めだけど?」


彼女は一瞬何を言われたのかわからなかったらしい。


「君の言う通り、いつか私と比べられる事があるかもしれない。その時の周りからの眼は耐え難いことかもしれない。

けどさぁ、そうならない可能性だってあった。例えば、あまりに私が周囲とかけ離れ過ぎて、比べる事すら烏滸がましいと思われるくらいの魔術師になった場合とかね。


比べられるか比べられないか、どっちかわからないけどどちらの可能性もあったのに、君は今回でその可能性すら潰してしまった。

これから君に待っているのは、私の才能に恐れを成して努力ではなく殺害を選んだ愚かな魔術師という評価だ。私が超高名な魔術師になれば格の違う私に嫉妬した罪人だし、逆なら首席と呼ばれながら魔術師の力量を見る目もなく弱いものいじめした罪人ってことになるね?」

「!」

「その評価は一生ついて回って、きみを傷つける事はあっても、救ってはくれない。父親どころか誰も認めてくれないんだよ。どれだけ改心して、反省して、後悔して、懺悔して、罪を償っても。

今回のことが無ければ、いつか認められる日が来たかもしれないのにね」


女子生徒は静かに涙を流していた。それがどんな感情からであれ、やらかしてしまった事に変わりはないし、ついでに言えば、どんな処罰を受けようと私が言った評価を受ける事になるだろう。


「そんな訳で、彼女を終身刑なんかにしたら、その周囲からの耐え難い視線に晒されなくなってしまうよねぇ」


パチリと、彼女の涙に濡れたひとみが私と交差した。彼女は私が、何を罰として与えようとしているのか気付いたらしい。

許してあげる、なんてはずないでしょう?


「卒業後の進路は、魔術師団に入団予定だったねぇ?入団取り消しになるはずだから、私の研究室の部屋付き用務員にしよう。

とりあえずは2ヶ月停学、1ヶ月の自宅謹慎。

……勿論、彼らのやらかした事は動機も含めて周知は徹底してもらう。

以上が私の求める罰だよ」

「……お言葉を返すようですが、あまりに刑が軽くありませんか。卒業年度の生徒にとって、2ヶ月程度卒業にも影響がありません。

何より、複数迷宮攻略者である貴女を襲撃しておきながらその程度の罰で済まされれば、後々に……」

「知るかそんなの。罰は本人が苦しんでこそ罰。

本当に苦しいのは肉体が傷付けられるよりも精神が傷つけられる方だと思うけど?」


苦言を呈したマクノアさんに、私がそう突き放すように答えると、唖然として黙り込んだ。あー、すみませんねぇ、傍若無人、唯我独尊が我がポリシーです。


「確かに罪には罰が必要だ。けど、その罰すら、私の役に立たない事なら要らないんだよ」


罰したい、罰されたいだけの人間の顔はもう見飽きた。


「案内係の方はどうでもいい。納得いかないならクラウスに処分は任せる。でも彼女の処分は譲らない」

先週は更新できず申し訳ございませんでした。


読了ありがとうございます。


作者体調不良につき、申し訳ございませんが来週もお休みさせていただきます。ごめんなさい。

失礼します。

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