第15陣
……とはいえ、解説を交えつつ話さないと、色んなところから怒られそうだから"お掃除"しつつ、説明するね。
先程ケットシー達をおじいちゃんのところに転移させて、クラルフートさんの安全を確保する為、ヴァウンティーズを付けてこの教会の表で待っていてもらっている。
私がいるのは地下ね。神聖な光溢れる教会の、その祭壇の裏側にあった隠し扉のその中。地下に繋がる階段を降りてたどりついたそこは暗くてだだっ広い部屋。部屋の壁には無数に炎の揺らめく燭台が飾られており、その部屋全体を照らしていた。そして、床には複雑な魔法陣が描かれていた。まるで何かの儀式を始めるつもりだったようなその部屋。
……って、私はまじめに情報を伝えてるけど、簡単に言うとここで例の魔力を持つ子供達の実験が行われるはずだった。
乗り込んでったらちょうど準備中だったので、ハロハロ皆さんこんにちは!ちょっとお縄についてもらうね!!と、唖然としていた人々に宣告して、有言実行。武力行使。いつぞや自分が誘拐された時と同じように、バチバチ!電流攻撃を行い、その場の人間を無力化。次々倒れて行くが、命に別状はないから大丈夫。暫く身体が痺れて動けないだけだよ。
つんつん、と、シーフキャットが私に次の指示を仰いだ。
「ご主人〜、コレどうするにゃ?」
「うん、簀巻きにして壁際。全部」
「にゃい!」
「…教会の地下に、こんなもん作って禁術ね。地上で聖典読んで地下では悪魔を呼ぶなんて、罰当たりだよねぇ」
ねえ、と感情も無く、私の足元に転がった固まりに声をかけると、分かりやすく怯えた。あははは。乾いた笑い声が漏れた。
ここに侵入した時に、中にいたのは白い教会の神父たちと魔術師。皆白いローブを着ていたけど、1人だけ白をベースに赤色のラインが入ったローブを着ていた。分かりやすいよね、こういう時ボスって大抵特別様式のもの身に付けるんだから。私がボスです!って宣言してるようなものだよねぇ。
と言うわけで、私の足元に転がってる特別な簀巻き状態の人間は、ここの大司教でした。
「わ、私にこんな事をしてただで済むと思うなっ!」
「そうだねぇ。ただじゃ済まさないよ。
昏睡させられた魔力持ちの子供達、禁術の魔法陣、禁術の書、消えた子供達のステータス表の山と、取引した相手のリストを前にして、君が無事に済むはずがない」
「!ば、馬鹿な!あの倉庫には見張りが居たはずだ」
「私の使い魔に負けたんだから、衛兵としてはゴミ以下だよね」
しかもケットシーに負けたんだよ?私の愛玩使い魔のケットシーに。恐らく私の使い魔の中で最も戦闘能力が低いケットシーに。(にゃ⁈どこかでミーの事を貶してる人の気配にゃ!)
……えっと、私は急に冒険者が増えて豊かになった街並みに反して子供が居ないことに、子供の誘拐事件を疑った。そして教会が怪しいと睨んだ。恐らく領主と教会がつながっていると考えられる。(なんで教会を疑うかと言うと、この街全体にかけた検索魔法で、教会に多すぎる子供の数があったから。チート級魔力ってこう言う時は非常に便利だよね。…教会の寄付で賄える子供達の数なんてたかが知れてる。つまり、何かしらの理由で子供たちはそこにいる。)
次に領主と教会のつながりだけど、いや、さあ?領主の家とこの教会が地下で繋がってるのよ。なによりさ、教会に下ろすお金、申告されてる子供の数が増えてないのに増やしてる時点で知らないはずないんだよね。街のお金自体は増えてないんだから。
…って言う事を想像したけど理由の詳細なんざ知らん。証拠から突き詰めて処罰するのはお役所とか上の仕事。私はただ怪しい人たちを捕まえたに過ぎない。つまりね?どうでも良いわけよ。
「魔力を多少持ってる子供を買い集めて、魔力を奪って売り払う。始めたのはいつかなぁ?
奪った魔力をどうする気だったの?」
「っ、そんな所業ワシは知ら「逃げられないよ?知らないとは言わせない。
残念だけど、私はこの禁術を知ってる。
魔法陣を見れば、それをどうしようとしたのかもわかる」」
「しっつれーい!」
正真正銘、終わりだ。と告げれば、何か喚き散らそうとしたのか、シーフキャットの一撃で意識を刈り取られて床に沈んだ。
にゃっふー。と一仕事したと言わんばかりに息を吐いたシーフキャット。どうやら敵は皆拘束されたようだ。
よく出来ました。と撫でてやると嬉しそうに喉を鳴らした。かわいいやつめ…。
「ご主人、向こうに送った子どもはどうするつもりにゃ?親元なんてみつからにゃいですにゃ」
「んー…ステータス表がある子達はそこから探って多分家に帰れると思うよ。魔力持ちっていうのは、ある日突然急に一般家庭に産まれてくることもあるってされてるけど、厳密にはそうじゃないし、ね。
その他の、魔力を持たない子は間違いなく身寄りのない子だから、ちゃんとした領主と健全な教会を用意して、そこにいってもらう事になるだろうね。
まあそれはそうとして、おじいちゃんに連絡して本物のギルデロイさんとおじいちゃんが来たら、ここの地下ごと全部塵にしよう。禁書の類は貰っちゃおう」
「それ窃盗にゃ…」
「おじいちゃんにはちゃんと言うよ」
なるべくなら、この目の前に拡がっている趣味の悪い空間を二度と使えないように奴等の目の前で瓦礫の山にしてやりたいし、無いとは思うけど、この禁術を持ち出す輩が調査隊に居ないとも限らないのも相まって、徹底的に復元できないレベルまでズタズタにしたい。…したい、のだけれど。やっぱりそれにはおじいちゃんにくらい見せておかないと。私の今の身分は庶民。権力にモノ言わせて捕まえることが出来る小娘だ。出来るだけ目立たない事が重要だろう。その為だ、と自分に言い聞かせて、趣味の悪い部屋で、応援の到着を待つ。
「にゃー、ご主人。本物のギルベルトってなんのはなしにゃー?さっき簀巻きにされてた執事服にゃ?」
「ん?アレはね、皇子だよ」
だから私は、道中彼のことをギルデロイとは呼ばなかった。ただの一度も。皇子の息抜きに、幻覚魔法を使って、隣の片道2、3時間程度の街に行くくらいなら問題ないだろうと、成り代わりを許したのだろうけど。あまり宜しいことでは無い。おじいちゃんも許可を出したのは、多分いざとなれば私が護衛がわりになると踏んだからだろう。忌々しい。
「他人のフリをして、気晴らしなんてずるいじゃない」
「隠してるずるーいのは他にもいるにゃん」
「あら。私はちゃんとシエルとして堂々と生きてるじゃない。どこがずるいの?」
「ご主人がずるいとはひとことも言ってにゃー。ただ、ご主人の腕をアテにしてこっそり護衛を押し付けた狸ジジイはずるいですにゃー」
狸ジジイ。"揺らいだ"先に見えた姿を思い出す。思わず笑みがこぼれた。
「…狸ジジイというより、腹黒王子って表現がぴったりだったけど」
「にゃ?」
「……なんでもない」




