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第62話 火喰い姫

監獄に向かうのも3回目。

ガタゴトと揺られる馬車。お尻が痛い。


「同じ召喚師を三度も監獄に運ぶことがあろうとは‥」


毎度迎えにくる兵士はもはや顔見知りだ。


「そういえば監獄の治安大丈夫なの?

割と責任感じてるんだけど」


僕が監獄長に勝ったせいで、荒れ放題なんてあまり嬉しくない。


「えぇ、協力なスケットが入りまして」


スケット?まぁ何とかなっているならいいことだ。


しばらく馬車に揺られると監獄に着いた。


案内されるままに監獄長の部屋に入る。

部屋には2人の男と1人の女が居た。


男2人には面識がある。1人はもちろん監獄長。そしてもう1人は‥


「火野!?」


「おお、透遅かったな」


「なんで、お前ここにいるんだよ」


「いや、スカウトされちまってな。

ここすごい条件いいんだぜ」


いや知ってるよ‥

というかやはり火野も僕も日本人。

安定な就職先、正社員の言葉はひどく眩しい。


隣に立つ監獄長レムルが口を開く。


「ヒノ君が協力してくれて感謝している。

彼は囚人達のヒーローだからね」


なんかよくわからない内に、うまく回ってるようだった。


「監獄長。それより約束のものを。

火野殿はここに居てもいいのか?」


「あぁ構わんさ。彼は知る資格がある」


僕が星儀戦で勝った意味あるのか?

なんで火野は無条件で情報得られるんだ。


「で、そちらの女性は?」


部屋の奥で静かに座っていた女が足を組み替えた。


燃えるような紅髪が腰まで流れ、紅い瞳がこちらを見据えている。


小柄で、整った顔立ちにはまだ少女のような幼さが残っていた。だが、細められた目と尊大な態度のせいか、可愛らしさより先に近寄り難さを感じる。


「私は監獄の主」


女は椅子にもたれたまま、薄く笑う。


「炎の王族、イリス・ヴァルガードよ」


「ちっ。最悪だ‥」


リーゼが横で舌打ちをする。


「知り合い?」


「名前だけな」


リーゼはルリさんを睨みつける。


「‥火喰い姫。炎の王族から見放されたうつけものだ。行方不明と聞いていたが‥」

 

「はは。その名で呼ばれるのも久しぶりね」


王族‥面倒だし関わりたくない。

こっそりリーゼに耳打ちをする。


「この人何したんだ?」


「あの美貌だろ?他国の王族と大貴族が彼女を巡って殺しあいだ。

で彼女は止めるどころ煽ったせいで、ほぼ勘当状態」


「悪女の類か?」


「傾国の美女ってやつだ。男を惑わす火喰い姫」


確かにえもいえぬ魅力がある。少し幼い印象は受けるが体つきは女性らしい。

さらに王族なんてステータスもある。

隣に立ちたい男は多いかもしれない。


「聞こえてるわよ。私は煽ったりしてない。

他国が絡んだせいで、無理矢理責任を取らされただけ」


僕の視線に気づいたのか、ルリさんはこちらを見て笑う。


「あなたが噂の召喚師?思ったより平凡なのね」


何か噂になってるのか‥

平穏が遠のく。


「まぁいいわ。私はあなたとその従者が欲しい。だから私にかしずきなさい」


「おい、監獄は僕たちに干渉しない約束だろう?」


リーゼが不快そうにベゼル監獄長に抗議する。


「前回賭けたのは、私は君たちに関わらないだ。ルリ様がどう動こうが、ラナ監獄の守備外になる」


「確かに‥

これは仕方ないか」


「監獄の秘密。ルリ様の存在は明かした。これをどう使うかは君たちしだい。まぁ聞いてタダで帰れる話ではないがね」


監獄長はまぁいい。それより僕は火喰い姫と呼ばれる女性が何を目的にしているかが気になった。


「僕たちを手に入れて何がしたいんです?」


火喰い姫は唇を吊り上げる。


「別にあなた達にとっても悪い話じゃないのよ」


「というと?」


「私は何もしていないのにこんな境遇に追いやった、水の王族が憎い。

だから復讐したいの」


水の王族って今一番偉い王族だったよな?

私怨で喧嘩売るリスク高くない。


さっさと逃げよう。


「えと、辞退させていただきたく‥」


「リーゼも同じ気持ちよね?」


火喰い姫が笑う。


「あぁ、許せない相手だ」


リーゼの感情の乗らない声が響く。


「舞台は整った。

火喰い姫に異世界の召喚師トオル、青薔薇のリーゼ。それに凶戦士火野。

この4人がいれば世界を飲み込めるかもしれない」


妖艶な笑み。引き込まれそうになる。


「さあ、反逆を始めましょう」


え、嫌なんですけど‥

あと火野は凶戦士なんて呼ばれてるのかよ‥


「それも悪くないな」


リーゼの声が冷たく響いた。

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