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死神の願い  作者: 須景夜々


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出会い



「やぁ」

と、性別どころか人なのかすら怪しい何かが私に挨拶したところまで覚えている。起きたばっかりの私はその声の主の顔を見て人じゃない事に気づき、恐怖で気絶。そして今、意識は戻ったが目を開けずに聞き耳を立てている。さっきのアレがまだいるかもしれないからだ。かなりの時間聞き耳を立ててるけど音は聞こえない。聞き耳を立てているうちにあれがどんな顔だったのかを忘れた。あれは夢かなんかだろう。

ゆっくりと目を開ける。そーっと部屋を見渡してアレがいないことを確認。寝ぼけてただけみたいだ。

「ここは、、」

私は病室にいた。なんで病室にいるのかが思い出せない。最後の記憶は茜ちゃんと帰ってるところで、そこから先を思い出せない。

「君は事故にあったんだよ」

右からから聞こえたその声は夢だと思っていたあの声だった。次の瞬間私は今まで生きてきた中で一番大きな声で叫んだ。

「どうしました?!」

すぐに叫び声を聞いた看護師さんがきたので私は右にいるアレを指差す。

「なっなんですか、これ」

怯える私を見て看護師さんは

「何も居ませんよ。」

と困惑しながら言った。見えてないの?私を見ながらニヤニヤしてるコイツが。人の目とは明らかに違う黒曜石のような真っ黒な目でスーツのような服を纏っている。コレはどうやら看護師さんには見えていないらしい。私が起きたことを確認した看護師さんは私の熱だけ測ってすぐにどこかへ行ってしまった。

「私の姿は君にしか見えないよ」

二人きりになった部屋でコイツはケラケラ笑いながら言った。

「あなたは何?誰なの?」

『死神さ』

「死神、、、、」

驚きのあまり声が出ない。人は本当に驚いた時に声が出ないと言うのは本当らしい。何か言葉を発そうとしても喉が詰まって言葉が出ない。動揺して視線を落とすと死神は足がなかった、腿の中腹から下が透けている。それを見て目の前の死神は本物だと理解した。

「私、これから死ぬの?」

「その予定だったんだよ」

「予定?」

「私は君が死んでるように見えたから魂を回収しにきたんだよ。でもいざ来てみると君が死んでなくて魂が回収できないくて困ってるの。」

ハァ〜と溜め息をしながら死神は答えた。

「じゃあどうするの?」

私がそう聞くと死神はふわふわしながら何やら語り始めた。

「死神ってのはさ、暇なんだ、惰性に人の魂を回収して、回収して、回収する。つまらないんだよ。おまけに君たちとは違って死ぬこともできない。だから私はね、たまに起こるこういう事を利用して暇つぶしをするんだよ。」

「暇つぶし?」

思っていた死神と違って随分フレンドリーな死神だ、もっとこうどんよりとしていてブツブツと喋ると思ってたけどなんだか目の前の死神はハキハキとしている。なんだか解釈違いだ。

「そう、暇つぶし。死神さんが悩める少女を救ってあげようと言うわけ」

「私、悩みなんて無いよ」

嘘だ、悩みなんて星の数ほどある。でも死神に叶えてもらわなくていい。死神と関係なんて作ったら何を求められるかわからない、魂とか取られたら最悪だし一刻も早く帰ってほしい。

「嘘だね。君ごろの年齢の子が悩みがないわけないじゃないか』

「、、、別にあなたに叶えてもらわなくていいです。」

「まあまあ落ち着いて、私は君に何かを要求しないし、本当にただの暇つぶしなんだ。」

「死神の言うことなんか信用できません。」

「君たち人間は死神の事を魂を奪う悪い奴と思ってるみたいだけど違うからね。悠久の時を娯楽もなく生きる可哀想な奴らなんだよ。まぁ別に、君がどう言おうと私は君に付きまとうけどね。」

「これまでのやりとりはなんだったんですか。」

『別に。君がどんなやつかな〜って』

ケタケタと笑う死神に殺意が湧く。すると部屋に誰か入ってきた。

「清華ちゃん、大丈夫?目が覚めたかい」

部屋に入ってきたのは卓郎おじさんだった。スーツを着ていて見るからに仕事帰りだった。トスンと椅子に座ってなぜ私がここにいるのかの説明が始まった。

「清華ちゃんは貧血で下校中に倒れたんだよ。」

「貧血、」

なるほど確かに私は最近貧血気味でクラクラすることも多かった。まさか倒れるとは、驚きと同時に貧血如きで死んだと勘違いする死神の仕事の適当さが垣間見えた。

「なんにせよ無事でよかった。お医者さんきたら正直に話して、異常がなかったら帰りなさい。食料品等々は買い足してるから。」

「わかった。ありがとうおじさん」

「うん。ごめんな一緒にいたいんだけどちょっと仕事があって、じゃあまた」

そう言うと病室を出て行った。死神が直ぐ横にいるのに目もくれなかったので本当に私にしか見えていないようだ。

「今の人は誰だい?」

「私の世話をしてくれてるおじさん。先月一緒に住んでたおばさんが亡くなってそのおばさんが弁護士を雇っててくれたの。」

「お母さんやお父さんは?」

「お父さんは私が生まれる前に死んでお母さんは知らない。おばさんが私の親代わりだったの」

死神は嫌な事を聞いてしまったと思ったのか黙ってしまった。死神にもこういうのは分かるらしい。死神は窓の外を眺め始めた。私も外を眺める。茜色が綺麗な空に白い月が浮かんでいる。

「死神は空を見て感動したりするの?」

「、、別になんにも、フツーだよ」

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