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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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99/142

後ろ髪引かれ……

 ……すっごい閑散としてるな。

 夜の繁華街、ヴェスパポリスとやら。


「もう二時間もすれば、どこも明かりがついて活気づくわよ」

「何も言ってませんが?」


 下船し、クルーズターミナルへ向かう途中。

 街と思われる方向を見るも、特に栄えている雰囲気は無く。

 それを観察していると、後ろからグリムダさんが説明してくれた。

 ……いや、行きませんけどね?


「あそこに門が見えるでしょ?」

「ありますね」

「あそこで年齢確認されるから」

「……なるほど」


 次来た時用にメモメモ……。


「いや、行きませんよ?」

「顔にどうしても行きたいって書いてあるわよ?」


 またまた。

 下船前にしっかり鏡で確認してきましたよ。

 顔には何も書いてません。


「ん? 何じゃ?」


 で、そんなやり取りをグリムダさんとしていたらスイさん登場。

 俺とグリムダさんに気付いたらしく、近寄ってきて……。


「何をしておる。行くぞ」


 俺の腕を引いて、ヴェスパポリスの方へ。

 って、


「ストップ! ストップ!!」

「?」

「俺は明日仕事なんで帰りますから!!」

「何じゃもったいない。折角ここに来たのだから飯でも食って行けばいいものを」

「……行きたいですけど――」


 こう、旅の終わりに家に帰って寝るだけなの、嫌じゃない?

 旅終わりに家に帰って、少しゆっくりしてから寝たいんだ、俺は。

 何だろうね? 旅という非日常と、いつも通りの仕事という日常を切り替えるスイッチ的な。

 ほんの少しの拘りというか……。


「明日も仕事なので……」

「ふむ……」


 そっと手を離された。

 どこか寂しさを感じた気がするけど、多分気のせいかな。


「ホッホーこれはこれは」


 で、そんな事をしていたらノクティアさんまで登場。

 お店はいいの?


「お店はいいんですか?」

「兄と交代するのさ。次のクルーズの終わりまでは休暇だ」

「兄弟が居たんですね……」


 兄弟でやってるバーと喫茶店なのか。

 ……何というか、いいな、そういうの。

 ちょっと憧れる。


「……もしかして、だからクルーズによってコーヒーの味にムラが出るって言われてる?」


 で、グリムダさん、俺と一緒でノクティアさんに兄弟がいるって知らなかった感じだな。

 ……それはそれとして、店としていいのか? それは。


「いや、兄と私は基本的に腕前は変わらん。もしムラが出ると感じられているなら、それは我々の未熟さゆえだな」

「そう」


 なお違う模様。

 いやまぁ、コーヒーの事は分からないけど、ちょっとの焙煎の時間の違いとかで味と関わるんでしょ?

 年がら年中同じ味って訳にもいかないんじゃないの?

 それこそ、コーヒー豆ですら違いがあるんだし。


「でも、パンケーキのトッピングは違うって噂が……」

「馬鹿兄が盛りまくるんだホー」


 口調。

 急に荒くなるじゃん。

 あと、多分だけどお客さん目線はトッピングは盛ってあった方がいいと思うよ?

 だから落ち着こう?


「そうじゃない時はお酒のツマミの盛りが多いって評判で――」

「お酒と合わせる物は多い方がいいに決まっている」


 ……えぇっと。

 五十歩百歩というか、同じ穴の狢というか。

 多分だけど、同じような不満をお兄さんも持ってると思うぞ。

 ノクティアさん。


「夜、貴様はヴェスパポリスに行くのか?」

「無論。あそこの食事が楽しみでなぁ」

「先ほどミクリヤを誘ったが断わられてな。一緒にどうだ?」

「ホッホー。もちろんお供するとも」

「そこのハイドワーフの娘はどうだ? 折角だ、店の一つや二つ紹介しよう」

「え? あ! 行きます! お願いします!!」


 行こうかしら?

 いや、やめとこ。

 下手すりゃ日付変わるまで帰れんとかなりかねん。

 ……その代わり、帰りにビールとか買って家で飲もう。


「ちなみに、ヴェスパポリスの高いお店は一見さんお断りなの。ノクティアさんや翠龍の紹介とか、どんなお店に連れて行って貰えるのかしら!」

 

 二人の後を追う前に、グリムダさんがそっと耳打ちしてきた。

 ふむふむ、なるほどなるほど。


「支払えます?」

「甘く見ないでちょうだい。結構人気なのよ? 私」


 雑誌の記事とか書いてるんだっけ。

 じゃあ大丈夫か。


「じゃあね。また縁があったらどこかで」

「意外とすぐ会ったりして」

「そうなったら面白いわね。どんなお店で何を食べたか教えてあげるわ!」


 全身を使って腕を振り、ノクティアさん達を追いかけるグリムダさん。

 ……さて、と。

 クルーズターミナルへ戻りますか。

 正確に言うと、異世界のクルーズターミナルから、現代のクルーズターミナルへ、ですけど。



「ゴッゴッゴップハーッ。……最高」


 宣言通りにビールを買い、先にシャワーを浴びて残りは寝るだけの状態。

 特に見たい番組は無いけど、適当にテレビを付けつつ、スーパーで安くなっていた総菜をツマミにビール缶を傾ける。

 ふぅ、これがあるから仕事を頑張れるんだよなぁ。

 ――さて、次のミステリーツアーはいつかな。

 もっと言うなら、ミステリーツアーで異世界に行けるのはいつだろうか?

 主催する種族は? 移動手段は? 目的地は? 寄港地は? 移動中のイベントは?

 まだまだ未知なツアーがあるはず。

 いやぁ、楽しみだなぁ。

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