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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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後半戦開始

「海苔の佃煮です」

「あ、これ海苔か!」


 巻き寿司の中の黒いもの。

 何かなーと思ってしばらく観察してたが答えは出ず、大将に教えて貰ってようやく答えに辿り着く。

 海苔の佃煮かぁ……。

 イメージご飯ですよだなぁ。

 いや、ご飯ですよはご飯じゃないんですけども。

 ……というか、海苔の佃煮をご飯に乗せて海苔で巻いたの?

 海苔尽くしじゃん。


「……あ、美味い」


 そして当たり前に美味いっていう。

 海苔の佃煮だけかと思ったら、胡麻とワサビも一緒に巻かれてて、まずゴマの香ばしさが香るのね。

 で、海苔の佃煮の甘じょっぱさと、海苔の風味、旨味がやって来て。

 最後にワサビの爽やかな香りが鼻から抜けて、口の中をリフレッシュ。

 巻き寿司の海苔って、シャリの湿気を吸って中々噛み切れないイメージだったんだけど、巻き立ての海苔は当然の様にそんな事無いのね。

 パリッと歯切れよく切れて、海苔の風味を拡散しますわ。

 ……あと、海苔の佃煮の食感が面白い。

 イクラほどじゃないけど、噛むとプチっとした食感がするんだよな。

 この海苔の巻き寿司、マジで好きかも。

 …………回らないお寿司じゃないと食べられ無さそうだけど。


「では、握りに戻ります」


 そう言って握りの後半戦がスタート。

 最初にお出しされるのは……。


「海老?」


 見た目は海老に見える、プリッとした半透明ピンクのネタ。

 甘海老っぽくて、二本ほどシャリに乗ってるけど……。


「こちら、ボタンガニになります」

「蟹なんだ!?」


 まさかの蟹。

 しかも名前よ。ボタンガニて。

 海老だろ、元は、お前。


「ん、旨味が濃いな」

「今が旬ですので」


 先に食べたスイさんがコメントしてるけど、旨味が強い蟹か。

 どれどれ……。


「――ふぅ」


 本日三度目のため息です。

 うめぇわ。

 まず、蟹の感じは確かにある。

 けど、それよりも噛んだ瞬間に広がる旨味と甘味がとんでもない。

 例えるなら、甘海老を十尾一気に食べたみたいな広がり方をする。

 その上で、旨味と甘味はそれでも足りない。

 これ、一本でも十分にシャリと張り合えるだろうに、二本乗せてる所が凄いわ。

 シャリとのバランスは失って無いのがまた凄いね。

 追加でシャリを欲しいと思わないもん。

 あと、恐らく少しだけ絞られている柑橘系の果汁が最後にいい仕事をするのよ。

 旨味と甘味だけでは一辺倒になる味を、酸味と風味が補強してる。

 いや、マジで美味い。


「アナゴです」


 そしてお次は煮アナゴの握り。

 ただ、俺が知る煮アナゴの色はしてないんだよね。

 なんというか、煮アナゴって煮汁で煮るじゃん?

 あ、回転寿司は別ね? 後がけの甘だれあるから。

 話を戻して、いわゆる煮汁で煮るとどうしても色が茶色になるんだけどさ?

 この煮アナゴの握り、蒸したような色というか、本当にお湯で煮ただけの色というか……。

 身の白さがそのままなのよ。

 そこに柑橘系の皮が乗せてある。

 ……茹でて柚子塩で食べるアナゴもあるし、それかな? と思いながら一口。


「……ちゃんと煮てある……」


 しっかり煮汁を感じました。

 やや甘めの、醤油の風味がしっかりある美味しい煮汁。

 ただ、煮汁単体ではしょっぱいなと思うそれが、アナゴの身に程よく染み込んでおりまして。

 煮アナゴの方は身はフワフワで、歯に当たるとホロホロと崩れるほど。

 よくもまぁそんな柔らかいものを握れるな、とは思うものの、寿司職人さんならやるだろうな、とも思う。

 柑橘系の皮は飲み込む直前まで顔を出さないんだけど、飲み込む瞬間にどこからか現れて、口の中に柑橘系の爽やかな香りを残して去っていく。

 結果、煮アナゴという味が濃いものを食べた後なのに、口の中がサッパリしているという不思議。


「めちゃめちゃ美味いです」


 マジで。

 過去食べた煮あなごの中でも圧倒的に美味しかった。


「無色醤油というのがございましてね」


 そう言って俺の前に小皿が置かれ、その小皿には何か液体が入っている。

 水? と思えるほどに透明なその液体だったが、香ってくる匂いは醤油そのもの。


「舐めても?」

「どうぞ」


 という事で失礼して指にちょっとだけつけてペロリ。

 ……からっ!!


「かなり味が濃いでしょう?」

「ですね」


 ほら、薄口醬油の方が普通の醤油より塩分濃度高いじゃん?

 あの理論で、色が薄くなればなるほど塩分濃度が上がると考えて、じゃあそれが透明な時は? と考えて欲しい。

 とんでもなくしょっぱかったです。


「色も付かず、香りがいいので、今のあなごはこの醤油と水、砂糖だけで煮てあるんですよ」

「マジすか」


 出汁とか入れてないんだ。

 それであの味わいか。

 ……てことは、あのアナゴ自体がとんでもなく美味いな。

 さっきの握りはあのアナゴの持つポテンシャルを引き出しまくった結果という訳か。


「……酒が美味い」

「お次はサーモンを握りましょう」

「ほぅ」


 サーモンとな。

 あまり回らないお寿司屋さんでは聞かないネタだが……まぁ美味いでしょ。

 今までの寿司がそう言ってるよ。

 

「本日はトキシラズが手に入りましたので、そちらを」

「ほぅ」

「ほぅ」


 トキシラズと聞いて俺とスイさんが同じ声を挙げる。

 トキシラズってあれだよね? なんか高い鮭のブランド? みたいなやつ。

 詳しく知らないけど、某動画投稿者が捌いてたの見たことあるわ。

 

「よく手に入ったな」

「本当にたまたまです。こちらを炙っていきます」


 サーモンに炙りは確定演出なのよ。

 絶対に美味い。

 今の内に覚悟の準備をしておこう。


「炙りトキシラズクリームチーズ乗せです」

「いただきます!!」

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