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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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125/142

焼いて貰えるって楽

「焼けました」


 そう言って差し出された串には、握りこぶしくらいのサイズのマルチョウのようなものが三つ。

 表面にうっすら焼き色が付いており、オレンジ色の焦げ目と純白な身との対比が、美しいコントラストを作り出している。


「……ちなみにこれは?」

「水チョウチンアンコウのあん肝です」

「あん肝……」


 とりあえず突っ込ませて?

 わざわざ水チョウチンアンコウって、水が付く必要がある?

 基本水の中にしか――まさか、土チョウチンアンコウとか、火チョウチンアンコウとか居るのか?

 んなバカな、とも言えんのよな。

 異世界だし、何があっても不思議じゃない……。


「んじゃ、かんぱーい!」

「え? あっ! えっ!?」


 で、串持ってそんな事を考えてたら、突然乾杯とか言い出して。

 慌ててグラスを持とうとしたら、ハーピ―三人が俺の持つあん肝串に自分の持ってるあん肝串をクロス。

 ……串でするの?

 乾杯を?

 絵面乾杯というよりも鍔迫り合いなんだけど。


「んー!! っぱ最初の一本はあん肝よね!」

「王道おぶ王道」

「かーっ!! ビールが進むぜぇ!!」


 で、あん肝串をツマミにそれぞれのグラスが空に。

 ……意味的にはしっかり乾杯なのがな……。

 さて、それじゃああん肝串、食べてみますか。


「いただきます」


 ……ふむ。

 まず食感。

 水チョウチンアンコウの肝が元々そうなのか、それとも焼いたからそうなっているのかは分からないけど、カッチリしたチーズみたいな食感。

 なのに、口の中に入るとトロリと溶けて、俺の知るあん肝の濃厚な旨味が口いっぱいに広がる。

 味付けは塩のみのシンプルな物なのに、あん肝の旨味でいつまでも味わえちゃうな。


「――プハッ! うめぇ……」


 あん肝食べた後に飲む生絞りレモンハイうめぇ……。

 わずかなあん肝の生臭さを、レモンのさっぱりとした酸味が吹き飛ばしてくれる。

 そして、口の中で存在感を発揮していた濃厚な旨味も、レモンハイの酸味と炭酸とで洗い流され、口の中をリフレッシュ。

 さて、二つ目のあん肝に……。


「ジー」

「ジー」

「ジー」


 なんかめっちゃ見られてるんだけど。

 何だろ、俺何かやっちゃったかな?

 ……違うな。

 見てるの俺じゃないな。

 俺が持ってるレモンハイのグラスだな。

 ……まさか飲み干せって事か?

 いやいやいやいや、今のご時世で乾杯したらジョッキ空けろは流石にアルハラですわぞ?

 自分のペースで飲ませろ?

 ――郷に入っては郷に従いますか……。


「――――プハッ」

「次何飲む? 私チェリーハイ」

「サングリア」

「白ビール」


 時間停止が解除されたみたいな変わり身の早さよ。

 あと、黒ビールは知ってるけど白ビールは知らん。何それ?


「ホワイトサワーをかっこつけて白ビールって言うな」

「さっきの黒ビールも実際はコーラサワーだしね」

「私にとっては黒ビールと白ビール」


 ……黒ビールを頼む女性が珍しいと言ったな。 あれは嘘だ。

 だって実際には頼んでなかったもんよ。

 あと、サワーはビールにはなりえないだろ。いい加減にしろ。


「次焼いても?」

「え? あ、はい。お願いします」


 で、ヒバリさん、俺のあん肝串がまだ残ってるのを見て、次の串を焼いていいか聞いてきた。

 ごめんね、すぐに食べちゃうから気にしなくていいよ。


「次のは子持ち昆布チップス」


 そう言ってグリルに入れられたのは……。

 お祭りの屋台とかで見る、ハリケーンポテトみたいに串に刺された……昆布。

 子持ち昆布をこんな形状で見るのは初めてだな……。


「生中お願いします」


 なお、俺の二杯目は生ビールのもよう。

 絶対に順番逆だったよな?

 言った誰のせいだ全く……。


「コフカも焼いとく?」

「お任せ~」

「子持ち昆布チップスなんてすぐ消費するし、焼くべ焼くべ」


 コフカとは?

 まぁ、この人らが頼む物なら変な物ではないでしょう。

 多分、きっと、恐らく。


「じゃあ、焼く」


 というわけでグリルに入れられたのは……。

 鮫だね、ちっちゃな。

 こう、渓流とかにある釣り堀で釣れた魚を焼いてくれる、みたいなところあるじゃん?

 あそこで釣れるヤマメとか、ニジマスくらいのサイズ感の鮫。

 小さい鮫でコフカ、小フカってことか。

 なるほどな?


「で、子持ち昆布チップス焼き上がり」


 渡されましたけれども。

 まぁ、食べますけれども。


「……っ!? うま」


 ちょっと驚いたけど、普通に美味いわ。

 ちなみに驚いた理由は食感ね。

 子持ち昆布のプチプチした食感はあるものの、昆布がザクッとマジでポテチみたいな食感するのよ。

 で、温かいでしょ?

 割と脳がバグる。

 ちなみに昆布の旨味が俺の知るものと微妙に違う。

 何だろうな、少し味が尖ってる感じがする。

 個人の感想だけど。


「生お待ちー」

「ありがとうございます」


 で、チップスと言ったらビールでしょ。

 という事でグンビグンビ。


「――あっー! うめぇ」


 優勝。

 何だかんだビールがいっちゃん美味い。


「コフカ焼き上がり」

「ありがとうございます」


 で、焼きたてのコフカにガブリ。

 あっふ。

 熱いけど美味い!

 俺がかぶりついたところはヒレの所だな。

 フカのヒレと言えば高級食材ですわよ。

 プルッとした食感でゼラチン質な歯当たり。

 俺が知るフカヒレは、それ自体には味が無いんじゃなかった?

 しっかり感じるけど? あと、鮫と言えばアンモニア臭がする、みたいに言われるけど、これからは全く感じないな。

 しっかりとした身質で噛むとジュワッと脂が出てくる。

 淡泊ながら脂の旨味もあり、大変美味しゅうございますわよ。


「さっきから何も付けずに食べてるの、教えた方がいい?」

「塩は振ってあるけど……醤油とか、ソースとか気付いてないかも」

「好んで素材の味で食べてたらどうするんだ? 本人が気付くまでいいだろ、言わなくて」


 ――いや、何か付けて食べるのかよ。

 早く教えてよ。

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